「平凡な」東大卒が就職して、幸福になれる職種の条件を考えてみた

今回は、東大卒と就職先に関して考えてみたい。
一括りに東大卒と言っても、色んなタイプがいる。

1.勉強もしっかりして、社会人になってからもフルスロットルでビジネスに邁進していくタイプ
2.何となくで東大に来て、ビジネスには興味がないものの、ある程度の金銭は稼ぎたいタイプ
3.学者タイプで研究に没頭したいタイプ
4.周囲の価値観に流されず、自分のやりたい職種に就くタイプ
等色んなタイプに分類出来る。

自分自身はどれに当てはまるだろうかと考えた際に、2と3に当てはまる気がする。
結構こういう東大卒は多いんじゃないかと思う。高校時代は大志を抱いていたが、どこかで挫折したり、燃え尽きたりで2に落ち着くタイプが多いと思う。

そこで考えたいのが、2のタイプに当てはまる東大卒はどのような企業に入れば幸福になれるだろうか?ということだ。
周りの幸福そうな東大卒を見ていると、その方たちの就職先にはある程度そこには共通点があるように感じる。

1.東大卒が少なくとも10人前後は入社してくる(ただし全体に占める割合が20%以下)
2.激務系の職種でない、どちらかと言うとWLB良好
3.ミドルやコ―ポレ―トでまったり事務職 
4.職種限定型の採用、地方支店へ配属されない
5.資本集約型産業

1つずつ考えてみたい。

1.東大卒が少なくとも10人前後は入社してくる(ただし全体に占める割合が20%以下)
東大卒が少なくとも10人前後と言うのが肝である。
東大卒が過半を占めてくるような業界・職種はそもそも少ないし、そのような業種は競争心の激しい東大卒が入社してくるため、かなり競争的な職場になりがちだ。

その一方で、東大卒が少なすぎるのもネックになりやすい。これは従前から述べていることだが、東大卒が少なすぎる企業はそもそも東大卒の扱いに慣れていなかったり、東大卒が浮きこぼれてしまうリスクがある。
これが勉強と仕事の異なるところで、東大卒が少ない企業に希少性を狙って東大卒が入ったとしてもうまくワークしない可能性の方が高い。
その点、東大卒が毎年10人前後入社してくるような企業はちょうど良い。
そもそもの採用人数にもよるが、このような会社では東大卒の扱いにも慣れているし、若干配属でも優遇されやすい。更にこれだけ数がいれば浮きこぼれるリスクもない。またこれらの企業に入社してくる東大卒は競争心が強くない2のタイプが多いので、社内競争で疲れてしまうといったことも起きにくい。
また付け加えると本店は東京にある企業のほうが良い。地方の優良企業は例えそれがお堅い業種(インフラ、銀行等)であっても東大卒はメインストリームにはなりにくい。
これらの企業には地元の国立大学が多数入社してくるので、ここがメインストリームになることが多い。
ただ例外もある。それは地元の名門公立高校を卒業して東大に入った場合である。福岡の修猷館、愛知の岡崎高校、宮城の仙台第二等の名門公立高校出身者は地元で物凄く尊敬されている。扱いとしては東大と変わらない。このような高校を出て、一旦東大に来たものの東京に疲れてもしくは東京の生活のクオリティーの低さに気づいて、地元の優良企業に就職するのは賢明な判断かもしれない。

2.激務系の職種でない、どちらかと言うとWLB良好
外銀(投資銀行部門)、外コン(戦略系)、日系IBD、官僚、4大弁護士事務所等東大卒が花形と考えている職種は漏れなく激務である。就職偏差値ランキングを見ていても上位に来ているのは、軒並みこういった職種である。
(就職偏差値に関しては以下を参照)


間違っても大学時代にインカレの運動系サ―クルに属して、いわゆる大学生活を謳歌していたタイプは激務系の職種、業界には入ってはいけない。これらの業種は激務なだけでなく、雰囲気も体育会系なので、ゆるふわマインドセットの持ち主だと間違いなく、長くは続かない。
あくまで筆者の周りだけかもしれないが、これらの業界に入っていくのは大学時代から国際系のサークルや勉強系のサークルに入っていた所謂「意識高い系」の人種や体育会であり、運動系サークル出身の東大卒が入っても御門違いだったりする。
官僚と4大弁護士事務所は明確に模試や入試本番で成績が良かったタイプが入社していると思われるが、外銀はそこまででもない。外コンは中間だと思う。外銀の場合は、どちらかと言うと容姿が整っていたり、コミュニケーション能力が高く、英語が「話せる」タイプが多くを占めている印象である。(要は華があるタイプである)

激務耐性に関しては人によると思うが、東大卒だからと言って激務耐性がある訳ではない。むしろ受験生の頃は割と確りと睡眠時間を取っていたり、そもそも徹夜明けで作業を行うといった非効率的なことを嫌うタイプが多いので、激務耐性はあまりないかもしれない。
そのため、「普通の」東大卒は過度に激務な職種にはあまり向いていないのではないかと考える。
ちなみに筆者も、このタイプで就活時にも激務でないことと出張が多くないことだけは譲れなかったし、もう社会人になってかなりの年数が経過しているが月間で法定外残業が45時間を超過したのは、合計で3回くらいだと思う。
遅くとも19時くらいまでには帰宅したいと考えている。

ただこの発想だとやはり就職偏差値ランキングに掲載されている企業の中で偏差値73を超えてくるような企業は選択してはいけない。73以上の企業は殆どがIBDつまり投資銀行部門や戦略系のコンサルが過半を占めておりかなり過激な働き方をしないといけなくなるからだ。この中で、激務な働き方を回避できるとしたら、外資AM(アセットマネジメント)か証券会社のGM(グローバルマーケッツ、要するに市場部門)辺りしか選択肢がないが、外資AMは超難関であるし、証券会社のGMはかなり理系優遇(正確には院卒)が強いので、東大の文系であってもここに引っ掛かるのはかなり厳しいと考えて問題ない。
偏差値70~72の企業に関しては東大卒であっても狙って入社出来るようなところではない。表を見れば分かるが財閥系の総合商社やデベロッパー、政府系金融機関、金融専門職、コンサルが占めており、ここから内定を取れれば東大卒でも入社出来れば「就活、頑張ったね」と認めてもらえるようなところだ。
そのため狙っていくとしたら、偏差値60~70の中で一定程度のWLBを確保できるような企業、職種になると考えられる。

3.ミドルやコ―ポレ―トでまったり事務職
まず周囲の東大卒で成果報酬型の営業等に就いているものはあまり見たことがない。多くの東大卒はどうしてもこの辺りの職種とは相性が悪いみたいだ。受験の時はあれだけランキングや順位に拘っていた筆者でも社会に出てからはこのような営業職は回避したいと考えていた。考えてみれば不思議である。
幸福そうな東大卒の友人を見ていると大体がコーポレート系の事務職でまったり仕事をしている者が多い。
筆者もフロント職とコーポ系の職種を両方経験したことがあるが、後者が天国過ぎて定年までこれで良いと思ったくらいだ。
確かにこういった職種は花形ではなく、あまり周囲の東大卒からも凄いと言われることはないが、実利的で生活自体も落ち着いたものになるので受験勉強で燃え尽きた東大卒にはオススメだ。更に言うとこういったミドルやコーポレート系の事務職は勉強ができる=新しい知識や難しい知識を吸収していける能力に比重が置かれている。
そのため、勉強にアレルギーの無い東大卒はこういった職種で重宝されやすい。
経理や法務、コンプライアンス、リスク管理等は分かりやすい例だ。
コーポと言っても経営企画部や人事部はなぜか忙しいことが多い。

4.職種限定型の採用、地方支店へ配属されない
これはかなり重要なポイントだ。変に地方支店に配属されるリスクや入社後に全く関連のない職種を転々とするリスクを回避できる。
専門性がないことは転職時に致命的になり得る。
地方支店への配属が回避出来るのも大きい。
これは以前の記事でも記載したが、東大卒が地方支店でドサ回りの営業をするのは難しい。筆者はたまたま回避できたが、今でもメガバンクを筆頭にこの文化は残っているようである。更にいうと東大卒の中でも花形と考えられている政府系の金融機関は結構な割合で地方支店に最初は行っていたりする。
人種としても地方支店にいる方はかなり本社のそれとは乖離している。普通の東大卒は馴染めず、苦しい思いをする可能性が高いし、ましては発達障害系はうつ病になるリスクさえあるだろう。

5.資本集約型産業
まず資本集約型産業と言うのを定義してみたい。これは要するに過去に構築したアセットを用いて稼ぐようなで業態のことだ。別名ストック型ビジネスだ。
資本集約型産業と比較されるのは、労働集約型の産業だ。これは労働力をフルに活用して収益を稼ぐような業態だ。こちらの方がイメージがつきやすく、代表例としては投資銀行やコンサル、M&A仲介などの営業職が挙げられる。いずれも手数料が収益の源泉となっており人手がどうしても必要である。これらのビジネスは一般的にフロー型のビジネスと言われ、ビジネスの種を常に獲得し続ける必要がある。

最初に述べた資本集約型産業の話に戻ろう。こちらはイメージとしては、金融機関であればアセットマネジメントや銀行、保険会社などが考えられる。
商社やデベロッパーなどもこちら側に分類できると考えて良いかもしれない。例えば銀行であれば、過去の融資が利息収入を生み出してくれるし、保険会社であれば過去に獲得した保険契約が保険料収入をもたらしてくれる。
他にも商社であればマーケットの環境が良くなれば、保有している資源が値上がりすることで含み益を享受することが出来る。
少し会計的な話をすると、資本集約型産業はBSをフルに活用して収益を稼ぐ一方で、労働集約型産業はBS頼りではなく、もっぱらPLのみが動くといったイメージだ。労働集約型産業の代表例であるコンサルには特段設備は必要なく、人とオフィスとPCさえあれば十分であろう。
ちなみに資本集約型に分類した産業であっても、労働集約型の業務を行っていることもあるので、厳密に分類することは難しい。ただざっくりとした分類は上記のようになるかと考えられる。

では平凡な東大卒におススメ出来るのはどちらの業態であろうか?
色んな意見はあると思うが、筆者は資本集約型産業をおススメする。理由としては、以下の2点が挙げられる。
資本集約型産業の方が労働時間が短くホワイトな傾向にある。
→あくまで一般的な話だ。それでも概ね当てはまるだろう。資本集約型産業は言ってみれば農耕だ。種をまきゆっくりとそれを時間をかけて開花させていき、数年後に果実が享受できるのを待つようなビジネススタイルだ。この場合は、時間にゆとりが出来るので、比較的労働時間は短くなりやすい。
従前は、このような業態であっても周囲に「やる気」を見せるために長時間労働が横行していたが、現在はそちらに規制がかかったので、このような無駄な残業は相対的に減ったと考えて良い。コロナ期間を経て商社やメガバンク等では在宅勤務が増加し、残業時間も減ったにも関わらず、「過去最高!」の業績が出ているのはこのためだ(結局のところ、これらの業種では業績はマーケットの環境に大きく左右される)。無駄な業務を「ただ人に自分が頑張っている姿を見せるためだけ」に行っていたに過ぎない。
前述した通りで、ホワイトな環境の方が普通の東大卒は普通の幸福を手にできるので、まずこの点から資本集約型産業をおススメしたい。

②資本集約型産業で必要なのは、あくまで社内調整能力・錯覚資産だから
労働集約型産業では、あくまで人が資産なので、仕事が出来ないと話にならない。コンサルも投資銀行も営業職もどれをとってもポンコツだと全く仕事にならない。
コンサルや投資銀行では、仕事の成果を数字で見るのは難しいが、大体どの人が仕事が出来るかはすぐに分かる。
営業職であれば結果は数字で出てくるのでとても分かりやすい。
ここでは学歴の価値は基本無意味だ。勿論学歴の高さ=頭の良さ=仕事が出来るという方程式が成立するのであれば、学歴も有用であろうが、いくら高学歴でも仕事が出来なければ意味がない。
またこれらの業種では、仕事で必要なスキルも即効性のあるものが良い。会計やプログラミング、英語などだ。大学受験では幅広く勉強することを要求され、大学2年間は教養課程に所属して幅広い勉強をしていた東大生には不利だ。
こういう点ではやはりビジネス感覚に優れる慶応生の方が強い。平凡な東大生よりは、優秀な慶応生の方が遥かにビジネス感覚に優れている。

その一方で、資本集約型の産業では、仕事が出来ることはそこまで重要ではない。先人が築いてくれたストックが勝手に収益を生み出してくれるので、「仕事が出来ること」が労働集約型産業と比較して重視されないからだ。
これらの業種では、それよりも学歴や資格などの錯覚資産が重要になりやすい。
良い例がメガバンクと証券会社であろう。
前者を資本集約型産業、後者を労働集約型産業と考えたい。
前者は学歴主義が強い一方で、後者は実力主義だ。
証券会社では、Marchや関関同立出身者が社長になることは普通にあるが、前者ではそれは起きえない。東大、京大、慶応が太宗を占める。(もっと言えば、殆どは東大京大)
後者では、いくら東大を出ていても仕事が出来なければ、すぐに干されてしまうが、前者ではそうではなさそうだ。筆者の知り合いでもメガバンクに行ったものは、軒並みかなり優遇された配属先に収まっている。(ちなみにメガバンクへの就職を勧めているわけではない)
これは別に金融業界に限らないと思う。
要するに資本集約型産業では、実力よりも肩書がものを言うのだ。
そう考えると、大学受験で燃え尽きてしまったタイプの東大卒は、資本集約型産業に何とか就活で頑張って行きたいものだ。


こうして考えていくと、東大卒に一番おススメ出来るのは、(勿論士業を除いて)、生保のアクチュアリーや運用部門更には一部の政府系金融機関なのではないかと考えられる。
現に筆者の知り合いでもこれらの企業に進んだものは軒並み幸福そうだ。
まあいずれもも平凡な東大卒では内定が難しいかもしれないが。。。。
時間が出来た際には、東大卒におススメの企業を紹介してみたいと思う。