競走馬の疾病 ~重度の蟻洞(ぎどう)~
こんばんは。橋浜保子です。
今回は、重度の蟻洞(ぎどう)の治癒過程をご紹介します。
蟻洞を専門用語で説明すると、角質分解細菌や真菌(しんきん:カビ)によって白線(はくせん)部が腐敗し、
蹄壁(ていへき)の外層(がいそう)と葉状層(ようじょうそう:内層の角小葉と肉小葉)の結合が分離して空洞が生じる蹄病(ていびょう)です。
蟻洞(ぎどう)の治療過程
右前
白線を超えた重度の蟻洞。放牧先の育成牧場で、これから治療を開始する競走馬の蹄です。
蹄壁の水分が少なく、蹄釘(ていちょう)の穴が下へくぼみ、痛みも伴っています。
左前
治療開始から4カ月半後
右前
左前
治療を施しやすいように、蹄尖(ていせん)部の蹄壁を削っています。しかし、消毒薬パコマを使用した効果で、蹄壁や蹄底の熱感、肢動脈(しどうみゃく)の拍動は感じられませんでした。
蹄壁の水分が徐々に回復し、症状の進行もストップしています。調教をしながら、蹄が伸びて患部の位置が下がるのを待っている段階です。
治療開始から10カ月半後
右前
左前
引き続き、治療をするために蹄尖部の蹄を削っていますが、症状は確実に良化しています。
しかし、レースに復帰するにはまだ時間が必要です。
治療開始から1年後
右前
左前
治療用に蹄尖部を少し削っていますが、患部の蹄が伸び、健康的な蹄が戻ってきました。あと1回の削蹄でレースに復帰できる状態まで回復できます。
中央競馬でこれだけ長期間、治療に時間=経費を掛けることができるケースは稀(まれ)です。
Shun先生による「蹄の検査」の開設動画が、とてもわかりやすくて勉強になります。
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