
内蔵ATUでもATUエレメントを利用できる。そう、Elecraftならね。
一般に内蔵ATUではATUエレメントやロングワイヤーアンテナは使えないとされていますが、ElecraftのトランシーバーKX2/KX3やリニアアンプKXPA100の内蔵ATUなら、これらを使うことができます。
表題画像はElecraftのKX2製品ページからお借りしました。ロングワイヤーアンテナをリグに直結していることを確認できます。
内蔵ATU
今月のCQ誌の特集は「アンテナチューナー活用ガイド」です。この記事にもありますが、一般にリグに内蔵されるATUはトランシーバーの送信段を保護するためのもので、整合が取れるSWRは3ぐらいまで、とあります。
国内3社の最上位機種の仕様を確認しました。八重洲とケンウッドは16.7~150Ωとありますので、単純計算でSWR 3までが整合範囲となるようです。記事の通りですね。
八重洲 FTDX101シリーズ
アンテナインピーダンス
50Ω不平衡(アンテナチューナー“OFF”時)
HF:16.7Ω ~ 150Ω:不平衡(アンテナチューナー“ON”時)
50MHz:25Ω ~ 100Ω:不平衡(アンテナチューナー“ON”時)
ケンウッド TS-990シリーズ
アンテナチューナー整合範囲
16.7〜150Ω
アイコム IC-7851
https://www.icom.co.jp/lineup/products/IC-7851/
(記載なし)
外付けATU・屋外ATU
一般的にATUと呼ぶ場合はこちらを指すようです。内蔵ATUと比較して、より広い範囲のSWRで整合できます。ATUエレメントやロングワイヤーアンテナと整合して電波を送受信できるのは、こちらのATUです。記事ではおよそ10ぐらいとありますが、製品によってはSWR 30ぐらいまで対応しているものもあるようです。
屋外ATUは同軸ケーブルの先、アンテナ給電部直下に接続しますので、アンテナそのものを整合の対象とします。アンテナの一部として動作するイメージです。これと比較して、外付けATUはアンテナに給電する同軸ケーブルも含めて整合しますので、役割としては内蔵ATUに近いとも言えます。
コメット CAT-300
コメットのマニュアル式外付けATUです。SWRは12ぐらいまで整合できるようです。
インピーダンス
入力インピーダンス:50Ω
出力インピーダンス:10Ω~600Ω
八重洲 FC-50
八重洲のFT-897シリーズ等に対応する外付けATUです。意外と整合できる範囲が狭く、SWR 3ぐらいまでの対応となっています。
整合範囲インピーダンス
1.8MHz ~ 29.7MHz:16 Ω~ 150 Ω
50MHz ~ 54MHz:25 Ω~ 100 Ω
Elecraft KX2/KX3/KXPA100
さて、本題のElecraft KX2/KX3/KXPA100です。これらの内蔵ATUの仕様によると、SWR 10まで対応していることが確認できます。これは一般的な外付けATUと同等程度の整合範囲です。
Maximum SWR: Up to 10:1
Matching range: Up to 10:1 SWR
SWR as high as 10:1 at 100 watts
SWR as high as 20:1 at 10 watts.
使い方 その1: エレメント直結
表題画像にもある通り、KX2/KX3はBNCコネクタにロングワイヤーアンテナを直結して運用することが想定されています。つまり、リグ内蔵のATUでありながら、屋外ATUと同じように給電点にアンテナ/エレメントを接続できます。この使い方でSWR 10、目安としてインピーダンスが500Ωまで対応できる訳です。
ちなみに一般的にロングワイヤーアンテナのインピーダンスは500~1kΩ程度らしいです。つまりSWRが10~20程度になり、整合範囲外となる可能性があります。このような場合は1:9のun-unを挿入ことで、アンテナのインピーダンスを1/9つまり100Ω程度まで下げることができ、ATUで充分に整合できるようになります。
私は実際にナテックのATUエレメントNAR100をKX3/KX2に直結あるいはun-unを介して接続し、POTAアクティベーション運用などに活用しています。
なお、コモンモードノイズが心配なので、リグとun-unの間にコモンモードフィルタを入れることが多いです。
使い方 その2: 同軸ケーブル給電
もちろん、一般的な内蔵/外付けATUのように、同軸ケーブルを介して調整済みのアンテナとの整合を取ることも可能です。この場合もSWR 10ぐらいまで整合できる訳ですが、普通はアンテナ側でSWRが~2程度に調整済みのはずです。これを1.0近くまで下げることができます。
私の場合、BuddiHEXアンテナを利用するケースがこちらが該当します。バンドによってはSWRが1.5を越えますが、ATUのお蔭でリグを壊さずに安心して運用できます。
あるいは、fcを7.041MHzに設定したHF40CLモービルホイップを手抜きして調整せずにそのまま7.074MHzで利用したいような場合にも、この内蔵ATUが利用できます。
エレメント直結時の注意点
上記の通り、屋外型ATUと同様にアンテナに直結する場合、リグはアンテナ直下に起くことになります。移動運用時は問題ありませんが、自宅などでロングワイヤーアンテナやATUエレメントを利用する場合に注意が必要です。
例えば、ATUエレメントをベランダに出している場合、同軸ケーブルを室内に引き込むことができない訳ですから、リグもベランダに出すことになります。
一般的な注意点
ATUでインピーダンス整合を取れても、イコール電波の飛びがよくなる、という訳ではありません。
その他の注意点
リレー式なので、チューニング時にカチカチカチカチとリレーの動作音が鳴ります。深夜などの静かな環境では気になるかも知れません。
アイコムのIC-705や八重洲のFT-891のように、移動運用に向いたリグは国内メーカーからも販売されていますが、いずれもチューナーは純正オプションの外付けATUとして提供されています。
https://www.icom.co.jp/lineup/options/AH-705/
しかし、これらのATUを利用するには、リグと接続する同軸ケーブル・コントロールケーブル・電源ケーブルなどが必要になります。移動運用時は一つでも荷物を減らしたいですよね。また、八重洲のFC-50は前述の通り整合できる範囲が狭めです (おそらくun-unが必須) 。
これらの問題を解決しているのが、Elecraftの内蔵ATUなのです。
いいなと思ったら応援しよう!
