全身麻酔導入のルーティン
ローテーションを始めたばかりの初期研修医、医学生向けの内容です。
まずは典型的な一通りの流れをこなせるようになりましょう!
自分も仲間たちと一緒にエア麻酔したのはいい思い出です。体が覚えるまで何度もやりましょう。各施設ごとに細かく違う点があるのでそこは適宜変更してください。
導入の流れ
1. 入室。時間記録。
2. 名前確認、ネームバンドも確認。術式や左右も確認しておきたい
3. V-lineなければ確保、既にあれば必要なら延長や逆流防止弁をつける。
4. 計測機器3点セット(血圧計、パルスオキシメータ、心電図モニタ)取り付け
5. 入室時のバイタルサイン確認、ついでにモニターがきちんと表示されているか最終確認
6. 前酸素化開始、マスクO2 6 L/min以上で患者に投与。マスクを当てた時間(=麻酔回路に接続された時間)が麻酔開始時間。
7. 鎮痛・鎮静薬投与(フェンタニルorアルチバ、プロポフォール)
8. 投与の際にフェンタニルだったら咳が出やすくなるとか、プロポフォールだったら点滴の刺入部から近位あたりが痛くなる旨を患者に伝えてあげる
9. 十分な鎮静度合か確認(声かけや肩たたき→睫毛反射消失確認)
10. 換気開始、換気可能であったら筋弛緩薬投与と吸入麻酔薬追加
11. 換気して筋弛緩薬が効くのを待つ(ロクロニウムは0.6 mg/kgで2分半、0.8 mg/kgで2分、1.0 mg/kgで1分半待機、喉頭展開に備えて鎮痛・鎮静も十分か確認)
12. 気管挿管開始。Sniffing positionとして(枕やブランケットを頭の下に適宜置く)*1、喉頭展開する(歯を確認し、右手でクロスフィンガーまたは項部後屈、左手で喉頭鏡を持つ)
13. 喉頭蓋が見えたら、喉頭鏡のハンドル長軸方向に力をかけ声帯を露出
14. 右手で気管チューブを受け取り、先端が入るのを直視する
15. スタイレットがあったら抜いてもらう
16. そのまま気管チューブの1つ目の黒いラインが通過するまで進める
17. 気管チューブの深さを微調節して呼吸器の回路を接続、APLバルブを20 cmH2O程度にしてバッグをホールド、カフに空気を入れてもらう
18. 胸郭の上がりと気管チューブ内のfoggingを見つつ、エアリークの音を聞く
19. リークの音が消えたくらいでカフの空気注入をやめてもらう
20. カプノグラフィで適切に気管挿管されたかの最終確認(これがgold standard)
21. 気管が深く入りすぎてないか聴診か胸骨切痕のカフ触圧で確認、大概成人なら口角21-23cmの深さです。*2
22. 適切な位置であることを確認したら、テープで口角に気管チューブを固定する。麻酔回路を外すか、回路を保持してもらって固定中チューブの位置がずれないようにする
23. 機械換気を開始する、換気条件を適正に調節、セボの濃度を最適に、高濃度アルチバを使用していたらここで投与速度をぐんと下げる
24. 瞳孔所見を確認の後、目の保護(目パッチとか)※目の保護は導入薬投与直後に貼る派もいます
25. 挿管枕やブランケットを円座(ドーナツ)や他の手術用の台座に代える
26. 抗生剤(あればアレルギー)を主科に確認し投与開始
27. 体温センサーとりつけ。加温装置も準備します
28. 必要ならV-lineや、A-line、CVカテ、OG/NG tube挿入などを加えます
29. 執刀開始に備える。アルチバの濃度を上げておく(ボーラス/loading dose無しなら10-15分前くらい目的濃度に到達するまでかかる、消毒始めたあたりが開始のいいタイミングかも)、挿管から時間が空きすぎたら筋弛緩薬追加を考慮
いかがだったでしょうか。これは一般的じゃないとか、これは是非加えておいた方がいいというものがあったらコメント欄にどうぞ。
注
*1: 喉頭展開は喉頭鏡を入れる前から8割以上positioningで勝負が決まります
*2: 聴診や胸骨切痕のカフ触知は気管内挿管されているかどうかというより、深く入りすぎていないかを主に見ています。胸骨切痕のカフ触知は距骨切痕部少し上を押して、気管チューブのパイロットバルーンが反応するかを見ます。気管内かどうかはカプノグラフィで確認しましょう。30 mmHgの山が3つくらい出てるといい感じです。