留学生が自転車で転んでケガしたが、病院が全く決まらなかった話

昼食を買って学校に戻ると、「S君がケガをしたので助けてほしい」と職員室にC君がやってきた

買ってきた弁当に手をつける暇もなく、車に乗り込んで現場へ向かう。といっても、どこが現場かをC君はナビできない。通学路から大体この辺だろうと推測しながら発進。

そこへ、ケガをしたS君と一緒にいたP君が学校に到着したと連絡があり、車を学校に戻す。

現場は逆方向だった。私の車の後ろにC君と、理事長を乗せて再発進。P君が自転車先導して走り出したら、角を二つ曲がったくらいで到着した。

レンタル倉庫がある道の脇で、S君がうずくまっている。顔を見ると、ダラダラと血が流れている。これは大事だと思う。

病院を手配しようと検索して電話するも、受付が向こうの医師との伝言ゲームでこちらの状況が伝わらない。腕や、顔に傷があり、目の下から血を流していると伝えたが、「目のケガなら眼科がいいと思います」という的外れな対応。外科のクリニックにも電話をしたが、時間外だから無理との回答。S君は頭も体も痛いと言っている。ウエットティッシュで血を拭いながら、この時点で119番を決意。

救急車到着まで12分

なかなか救急車がら来ないと、道路でソワソワしながら待つ。サイレンが聞こえので、手を上げて誘導して学校の前に停めてもらう。名前や誕生日等の確認に備え、学生台帳のプリントを握りしめている。

救急車到着後、妙に冷たい救急隊員の質問に怯まず答える。病院にかけたがことごとく断られたと申告したら、「それはどこですか?全部教えてください」という隊員。こちらは何もウソを言っていない。くだんの病院の名前を全部チクる。後で叱ってくれるかどうかはわからない。

その後なんとか搬送先が決まり、大きな病院に向けて救急車発進。とりあえず職員一度ほっとして緊張がとける。事務局長は弁当をかきこんで、車での迎えに備えながら、慌ただしく仕事をしていた。

二時間ほどで二人が学校に戻る

二時間ほど過ぎて、救急車にのったS君と付き添い通訳のC君が帰ってきた。C君「先生、病院で何もしてくれなかった」私、え?まじか?何もしていない?

詳しく聞くと、消毒などの処置はしてくれたが、打撲等の症状は診てもらえなかったそうだ。これ以上は自分で他の病院に行けとのこと。

医療現場が大変なのはわかるが、重大なケガをしているかも知れない中、病院が決まらない状況では救急車を呼ぶしかなかった。しかし、結果としては、救急車を呼んでも呼ばなくても、大差はなかったことになる。この判断は、医師でもない素人には極めて難しものだ。

結局、学校の近くの病院に直接駆け込む

幸運にも優先で処置してもらうことができ、ガーゼを取り替え止血することができた。119番通報前に電話が繋がらなかった病院である。

ケガをした本人のS君、付き添ったC君、事故を目撃したP君の皆が、どこか悲しい顔をした。ケガは命に関わるようなものではなかったが、通学して日本語を学ぶにはあまりに大きなケガである。

彼らには日本という国、大阪という街がどのように映ったのだろうか。コロナ禍で医療現場が逼迫したというが、いつのまにか病院は事前に電話相談が必須になり、その電話で患者を取捨選択するのが当然なものになっており、患者としてはそれも仕方ないと覚悟しているところがある。

119番通報は妥当だったか

必要のない119番通報は論外だが、全身を打ち、頭、顔から血を流す学生を見て、私は救急車しかないと決断した。決して大袈裟な判断ではなかった思っている。

コロナで変わってしまった社会は、決して昔のようには戻らないだろう。いざという時に、然るべき病院を素早く絞り込めるような情報の整備をする必要があると感じた。

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