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四元康祐
2017年5月28日 05:55
――三宅さんの短歌や俳句を読んでいると、その場の光景がまざまざと眼に浮かんでくることがしばしばです。女僅かに背中開ければ刺青は下方の昏きまで続くなり諦念の一本のごとく寝そべりて炎昼の底やり過ごす犬鎌を上げそのまま路に死す蟷螂の征服せざるものは秋なりバス停で女が女の肩を抱き抱きたる方はますぐな目をせり塾講師咳込みチョーク折れるかなモスクワの地下鉄車内雪降れり雪の来歴問ひてはならぬ角砂
2017年5月28日 05:28
2008年の『える―三宅勇介歌集』、2009年の『歌集 棟梁』に続いて、2017年2月に上梓された『亀霊』は、短歌、長歌、旋頭歌、俳句、行わけの詩のみならず、日仏両国語や神代文字での表記、タイポグラフィー、はては人工知能の書く短歌のシミュレーションまで、ありとある詩的表現の可能性を360ページの大著にぎっしりと詰めこんださらにその上に、なんと11本もの本格歌論を別冊仕立てで添えた前代未聞破格の「詩