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おすすめの本~米国緩和ケア専門医が教える あなたのACPはなぜうまくいかないのか?~

はじめに

みなさん、「Advance Care Planning:ACP」についてじっくり勉強したことはありますか?

ACPが大事!とよく言われるものの、その「プロセス」を具体的にどう進めたら良いのか、系統的に学ぶ機会は少ないですよね。
実際の現場では、上級医の説明の良いところ・悪いところを参考にして、「自分の説明はこれでよいのか?これがACPなのか?」と自問自答しながら説明していることも多いのではないかと思います。私もそうでした。

本日紹介する本は、そんなACPに悩む全ての医療従事者にお勧めしたい本です。

米国緩和ケア専門医が教える あなたのACPはなぜうまくいかないのか?

ACPは、「今後の治療・療養について患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス」と定義され、日本語で「人生会議」と訳されたりします。(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html)

日本において、Advance care planningの理解が十分に進んでいるとはいいがたい現状です。今でも「DNARとするか否か」「挿管するか否か」「経腸栄養をするか否か」がACPだと誤解されており、それを確認するのが目的となってしまい、結果として患者さんの価値観や人生観に見合ってない治療が行われていることも稀ではありません。

本書は、米国の大学病院で緩和ケア医としてコンサルテーションを受けている著者によって、圧倒的な経験(本当に圧倒的です)をもとにACPと患者家族とのコミュニケーションについて書かれています。

本書の流れ

前半は主にACPの流れと概念についてまとめられており、本書で一貫して軸となっているのは

1stステージ     病状の説明
2ndステージ   治療ゴールの設定
3rdステージ 治療オプションの相談

本書13ページより

という3ステージプロトコルです。

本書で繰り返し強調されているのは、2ndステージの治療ゴール設定の重要性です。自分も振り返ると、病状説明の後にもやもやしているケースというのは、2ndステージのゴール設定が曖昧で、治療オプションの相談に入ってしまっているケースが多いなあと感じます。

後半は実際の話し方やコミュニケーションスキルについてまとめられており、特に後半部分は、具体的な話し方や「これを聞かれたら答え方に困るんだよなあ。。。」というケースや、感情への対応であるのNURSEの具体的な使い方も書いてあり、本書を読んだらすぐに明日から生かせること間違いありません。

まとめ

私個人としては日常診療でがんやCOPD・間質性肺炎などで下降期慢性疾患の方を診ることも多く、ACPのタイミングや方法について悩むことは多かったのですが、本書を通じて、普段の外来でもやるべきだし、時間がなくてもできるものなのだと、良い意味ですごく気が楽になりました。患者さんにとって大事なことって、本当にふとした雑談の時にこそわかったりするんですよね。

また、「コミュニケーションはスキル」という本書中の言葉通り、これからもコミュニケーションに真剣に向き合って他の手技や処置と同様に予習復習を行い、スキルをどんどん向上させていきたいです。個人的には、こういう実践的なスキルアップにはロールプレイが一番だと思うので、是非かんわとーくhttps://kanwatalk.jp/も受講してみたいです。

最後にですが、ACPは医師のみでは難しく、チーム全員が理解している必要があります。自分の施設でも、この本をベースにしてディスカッションしたりと、ACPの正しい認識や文化を多職種で深めていく機会を作っていけたらなと感じました。

本日はそんな、ACPの教科書となるような本の紹介でした。

※本チームでは、3ステージアプローチに関する論文や、ACPについての他のおすすめ本についても過去に紹介しています。興味のある方は是非こちらもお読みください!

(文責:髙田悠司 市立伊丹病院呼吸器内科)
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