身にあまるもの。
妻の仕事の常連のお客様から、僕の元にとある高価な天然石ネックレスが2連届いた。
いつでも良いので、大石橋がリ・デザイン(再構成)して、2連のネックレスにしてほしいとの事らしい。
2連のうち、片方は先方にお返しし、もう片方は妻の物に・・という、完全なるご好意だ。
片方は、不均一な小さい天然石ビーズを上手い具合に組み合わせ、一つの装飾品に仕立てた物。
もう片方は大きめな同天然石ビーズを金具をはさみながら均等に編んだ物。
この天然石自体、偽物が多いタイプの石だが、それらは出どころもハッキリしっかりしており、ALL本物だった。
ただ、リ・デザインするには問題が数点あった。
天然石の中間に挟んである装飾金具が、片方真鍮、もう片方はおそらくは銀ビーズ。2連作るには手元にある素材では全く足りない事。
双方ともに、元々しっかりと「そのデザインのネックレス」を作るために選ばれた個性的な形の天然石のため、組み合わせると不格好&ゴロゴロと首にあたるような不快な物になってしまう事。
不格好なデザインになるのを緩和するために、新たに入れる本物のその天然石のビーズが、日本で購入するにはあまりにも高価で、ビーズ自体のデザインの種類も少ない。
日本より安価で、デザインもサイズも豊富な海外の店舗経由だと、ご時世的にいつ届くか不明という事。(それでも高価ではある)そしてこれが重要。僕は責任重大な割に、妻の笑顔が見返りという極めてシネマティックな美談が得られるのみ。僕は美談を飯の種にできるような影響力のあるハリウッドセレブじゃないし、普段から妻に良くしている自負はある。
そんなこんなで、半年ほど手をつけられず、漠然と新規デザインのみを頭の中で組んだりしていたが、先日、「例のネックレスの件、どうなってる?」とのご連絡があった。
実は現在の所有者(ご依頼者)に、そのネックレスを譲った「元所有者」の存在があり、その方が若干大石橋に対して不信感を持ってしまっている可能性があるそうだ。
それを危惧した現在の所有者が、大石橋が大泥棒()にならないために進捗を聞いてきたとの事。
僕は大急ぎで、海外経由の天然石ビーズをお小遣いから購入。
ビーズの形もサイズも大体の目安で数種類注文した。
もしかしたら通常に発送されるかもしれない・・という一縷の望みを胸に。
しかし、実際にはそんな奇跡は起こらず、天然石はいまだ発送されていない状態だ。
こればかりは仕方がない。
この石の原産国・販売店は、現在戦時下にある。
結果として、お客様にそのままご返却しようという事になった。
とはいえ、なにもしないというのも不義理なので、石の汚れを落とし、妻に石の浄化?をお願いし、まっさらな状態でのご返却を考えている。
追加で海外より購入した天然石に関しては、いつ届くか定かではないけれども、いつの日か届いたら、これで妻の装飾品を作りプレゼントした上で、余ったビーズで負債を補填しようと思っている。
リ・デザインというのは、簡単そうに思えるかもしれないが、非常に難しいものだ。
ただ組めば良いという性質のものではなく、現状でピシッと形が決まっている物を一旦解体し、同等かそれ以上の物に仕立てないといけない。
分かりやすく言うとすれば・・・
頭文字Dで有名なAE86(ハチロク)・AE91レビン・トレノ2台のパーツを使って、AE100/101型を作るようなものかも。86よりも劣るAE85を2台作っちゃ駄目なわけだ。
うん、逆に分かりづらいし、車知識が無いのに例えちゃ駄目だ。
今の大石橋のレベルでは、この高価なネックレスの素材は、身に余る代物なのかもしれない。