摩耶型護衛艦に軌砲(レールガン)は搭載可能か
画像出典は海上自衛隊ホームページより。
①防衛省が開発中の軌砲について
防衛装備庁技術シンポジウム2020によると、現在開発中の軌砲は、充電エネルギーが5MJ、電源規模が20ftコンテナ3台とされている
②摩耶型の電源について
摩耶型は、ガスタービン主機、ガスタービン発電機、推進電動機をそれぞれ2基ずつ搭載しているとされている。(海上自衛隊HPより)
このうち、ガスタービン主機は機械動力としての運用のみを想定されているものであり、発電能力はないものと思われている。
しかし、低速の経済航行時に用いるとされている発電機に、十分すぎるだけの電力的余力があると思われる。
この発電機には、川崎重工業製の「M7A」シリーズの艦艇用の特別製の「M7A-5」採用されているとされる。
この発電機は、終端発電出力が6MWとされてているが、摩耶型はこれを二機搭載しているのだから、全体的な発電能力は12MWである。
平時と戦闘時の双方で、摩耶はこの12MWのリソースのうち、6MW程度をSPY1レーダーに、残りの6MWを航行用の出力として用いていると考えられる。
では、戦闘時、ある程度の速力低下を受忍した上で、航行用出力とされる6MWを「別の事」に割いたらどうなるのか、これを次の項にて考えてみたい。
実際、搭載できるのか、搭載する計画はあるのか
(1)発電量が十分であるか
まず、①で挙げた試作軌砲の性能に着目したい。
この試作軌砲において、射撃に要するエネルギーは「5MJ」である。
ちなみに、ジュール(J)とは、電力(W)×時間(s)で求められる。
ここで、②で挙げた摩耶型の発電余力は、「6MW」である。
つまり、摩耶型は、一秒に「6MJ」のエネルギーを発生させられる。
であれば、摩耶型は、軌砲を一秒に一発撃つことが可能なだけの電力を産み出すことが可能であると考えられるのではないだろうか。
(2)軌砲を積載するだけの空間的余白があるか
軌砲には、コンデンサバンクと呼ばれる他の火砲にはない特異なパーツが必要となる。①で挙げた試験のものによれば、コンデンサバンクは20ftコンテナが3つ必要であるらしい。
摩耶型は、後部甲板に回転翼機の着艦場と格納庫を持つが、常時回転翼機を搭載するわけではないので、格納庫は恐らく、空間的余白となっている。
この回転翼機の格納庫というのは、搭載する回転翼機SH-60Kのサイズからおおよそ予測することが可能だ。
SH-60Kは、ローター折り畳み時の全幅がおよそ3,5m、全長がおよそ20m、高さがおよそ5,5mである。
従って、格納庫の大きさもおよそこれに準じた大きさとなるだろう。
ここで、20ftコンテナの寸法を見てみると、おおよそ、2,5m×2,5m×6mとされている。
この時点でお判りかもしれないが、これらの事実から、摩耶型の回転翼機格納庫には、この20ftコンテナが3つ、余裕をもって入ることが分かる。
(3)実際の海自にそのような計画はあるのか
(1)、(2)で挙げたことは、摩耶型に軌砲を搭載可能であるかを論じることは出来ているが、実際に海自にそのような計画があるか論じることが出来ていない。しかし、私個人の意見として、「海自は軌砲を摩耶型に搭載するつもりなのだろうか」と思える根拠はあると思っている。それが、これだ。
これは、総務省の令和三年度政策評価書に添付された画像だ。軌砲開発の有用性を説いたものの図表ではあるが、この図の船、摩耶型に酷似しているように見える。
勿論、図案化する際に参考となる船がたまたま摩耶型であっただけで、それを私が早とちりしているだけかもしれないが、それでも少なくとも、将来的には防空艦が軌砲を搭載する事を暗示するし、或いは防衛省からの「将来的には軌砲搭載の為の小規模改修を行い摩耶型を軌砲搭載艦とするよ」という暗示かもしれない。というか私はそうであってほしい。てか、そうであれ。
【Twitter】@JP_CN_UK_DE_