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【2025/02】にじさんじ ファンレター誤破棄事件の記録と、ファンとしての思い


事件内容

https://twitter.com/nijisanji_app/status/1889555103549686127

要約すると、

  • にじさんじ所属ライバー鈴谷アキ宛てのファンレター、2024年2月~9月までの8ヵ月分が誤って破棄された

  • 鈴谷アキは2024年8月末に引退済み
    (つまり、卒業前後のファンレターを多く含む)

  • 2025年1月ごろ、本人からの問い合わせにより紛失が発覚

  • 2025年2月12日、事件公表

事件の重大性について

まず、この記事を書いているのは他ならぬ鈴谷アキのファンであり、当該期間にファンレターを出した当事者である。
(ネガティブな話題で何度も推しの名前を挙げるのは自分の心に障るので、以降は基本的に名前を出すことは避ける)

情緒的な意味での重大さは、公式からの声明でも触れられている通りだが、既に引退済みのライバーの、引退前後に送られた、ファンレターの中でも特に強い思いの込められたものであるという面が大きい。
いくら再募集を受け付けますと言われたところで、悲しい中でもなんとか送り出そうという気持ちで綴ったものを再び書くのは不可能だ。
今から出来る最大限の事後対応をしているのかもしれないが、どうしたって取り返しの付くことではない。
引退済みであることから、この件に関する本人からの声明も一切聞けないし、こちらから直接何かを伝えることもできず、やり切れない思いを共有さえできないというのもまた酷い。

もう少し四角四面な話をすると、ファンレターは送り主の個人情報を含むものであり、対象ライバーに引き渡すまでANYCOLOR社が預かっているに過ぎないものである。
「誤って破棄していたことが確認」されたとあるが、本来絶対に破棄すべきでないものを破棄したのだからその記録が残っているはずもなく、「紛失」と捉える方がむしろ自然に思われる。個人情報を含む手紙類をだ。

にじさんじライバーへのファンレターに関しては上記のような送付規定がある。
要するに運営による検閲が入り、問題のある内容があれば破棄されるということだ。(そのチェックはライバーを守るために必要な手順であることは言うまでもないが)
問題になるのは誹謗中傷のような内容や不審物だけでなく、送り主の個人情報やSNSアカウントを記載することも禁止されている。
個人情報が関わることを分かっていながらそれを紛失するのは、非常に重大なインシデントだ。

金券等の送付も禁止されているが、そもそも便箋や封筒、色紙、印刷代、郵便代金等を含めると1通のファンレターを送るにもそう安いとは言えない金額がかかっている。ただの通信物ではない、ファンレターなのだから。それぞれ工夫を凝らしたものを用意しているのだ。
郵便や宅配業者が荷物を紛失したのと同様と考えると、訴訟に発展するレベルのインシデントである。

また、同様の他事案の発生は確認されていないと述べられているが、破棄・紛失したことの確認を後から取るのは不可能だ。
飽くまで「確認されていない」だけで、他にも起きていた可能性は十分にあり得ると推測せざるを得ない。
「年末のオフィス整理の際に誤って破棄」とあるが、それならばどうして彼の分だけ、というのも極めて疑問だ。
他ライバー分のファンレターがまったく無事なのはむしろ不可解だし、直近の引退という特殊な事情を鑑みても、同時期に引退したライバーが他にもいる。
事実確認はできていないが、海外部門であるENやIDのライバーとファンの間では、送られたはずのファンレターが全く届かないという同様の事案は過去何度も問題になっているようである。

検閲が入るという性質上、何か問題があれば破棄され、全てのファンレターが本人に届かない可能性があるのはファン側も承知している。
しかしそれは裏を返すと、適切な運用に則ってチェックが行われ、きちんとルールを守った内容であるなら必ず本人に届けてくれるはず、という運営への信用の下に成り立っている、ということだ。
このようなインシデントの発生は、その信用を根幹から揺るがすに足るものである。


運営を擁護・対応を評価する向きへの反論

公式発表への反応を見ると、ANYCOLOR社の対応を評価したり擁護する向きの意見が一定ある。
無闇にバッシングするようなことは決して肯定しないし、全員が批判を向けろと言うつもりもない。
特に、ファンレターを送った被害当事者、あるいは送っていないとしても応援してきたファンが、自分の気持ちを整理し、飲み込み、割り切るための発言を否定するつもりは一切ない。
ただ、外野視点で被害者(ライバー本人・ファン)の気持ちを軽んじるようなものに対してはいくつかの反論を示しておく。

「公表しなければバレないものを公表したのは誠実な態度だ」

この件は元ライバー本人が運営に問い合わせをして発覚した事案であり、公表される前から本人は事実を知っている。
いくら既に引退していると言えども世間に訴え出る方法はある。
そのような形で「バレた」暁には、より問題が深刻化するのは明らかであり、隠蔽を試みるのはリスクが大きすぎる。
自主的に公表したのではなく、公表せざるを得ない状況になったと捉えるべきだ。

「人はミスをするものだ、そんなに責めるべきではない」

確かに過失であるならば、担当者個人を過剰に責めることは避けるべきだと思う。
しかし、組織として、企業としての責任は問われるべきだ。
前述の通り、取り返しの付かない重大なインシデントである。担当者個人の責に委ねるのではなく、ヒューマンエラーが重大事故に繋がらない仕組みを作り、それを守らせることで問題を防ぐのが組織の役割だ。
それを怠った企業としての責任は重く、到底看過することはできない。

「事後対応はよかった」

推測を含むが、再度ファンレター募集期間を求めるという措置に至ったのは、元ライバー本人が交渉を重ねた結果だろう。
今から出来ることはもうこれぐらいしかなく、それを果たす形ではある。
とは言え、取り返しが付かないことには変わりがない。
数字にできないマイナスをほんの少しでも埋める措置であり、決してプラスの評価を与えるものではない。
言い回しの問題でもあるのだが、外野からこれを褒めるような表現をされるのは極めて心外である。

「本人への送付までに時間がかかるのは仕方ない」

これに関しては半分その通りであり、数日数週レベルですぐに送れという強い意見に関してはむしろ諫めたい気持ちもある。
取りまとめとチェックにはかなりの手間を要するだろうし、本人に届くまでにある程度のタイムラグがあるのは仕方がないだろう。
ただ、程度の問題でもある。半年以上となるのは流石に長すぎる。
最終的に届くとしても、記念日を祝うものやイベントの感想など、早く伝えたい、早く読みたい内容も多いはずだ。
一般的な事実として保管期間が長くなるほど紛失のリスクは上がるものであり、可能な限り早く送付するのもリスクマネジメントである。
現に公式の声明は年末のオフィス整理の際に…と言っているので、保管期間が長期化しなければ防げた事態と言える。


ファンとしての思い

約半年前に推しの引退という最大の悲しいイベントを経験し、やっと心の整理も付いて乗り越えられようかという頃合いである。
まさか今更になってこんな目に遭わされるとは思ってもみなかった。
ファンとしても思っていなかったし、ライバー本人もだろう。
VTuberとその事務所に関する問題事案はANYCOLOR社のみの話ではなく、大規模な個人情報流出事件、報酬の未払い、関係者による性加害などパッと思い出せるだけでも様々ある。
だが、100%事務所側に責任があり、ファンも巻き込む事案で、リークや噂レベルではなく公式に発表された情報、という中で考えると、今回のファンレター破棄事件は最大にして最悪と言えるレベルだ。
怒りもあるし、にじさんじという事務所に対する失望もある。何を言っても取り返しは付かないので虚しさの方が大きいが。

ついでのように扱ってよい事柄ではないのだが、運営への信用を損ねる事件は彼の引退直前にもあった。
引退間近の8月後半、各音楽配信サイトで配信されていた彼のユニットオリジナル曲が、予告なく突然配信停止されたのだ。
契約の問題もあるだろうから、引退後に配信される可能性があるのは理解できる。
しかし、引退前に、予告なく、というのは一体どういうことだろうか。
彼は音楽・歌を大事にしていたライバーであり、また大事な友人とのユニットの、大事なオリジナル曲である。
ライバーとファンを尊重しているとは到底思えない。

改めて今回の件、当該ライバーのファンとしては過去類を見ないほどの最悪な事件だが、多くのにじさんじファンにとってはどんな印象だっただろうか。
実際のところ、彼はにじさんじの中で数字を持っている側のライバーではなく、大型イベント等への出演機会も少なかったし、コラボも少ない活動スタイルだった。あまり印象に残っていないという人も多いかもしれない。
しかし、彼は他ならぬにじさんじの1期生、初期メンバーである。

2018年当時は収益化さえままならない不遇の時代だ。YouTubeチャンネル収益化の基準も曖昧で、彼の初期チャンネルは半年以上経っても収益化が叶わなかったことから、新チャンネルを作って再スタートしている。
新興のVTuber界隈は急激な盛り上がりを見せる一方、荒れた時期でもあった。今とはちょっと性質の違う荒らしやバッシングも多くあった。
そんな激動の界隈で、彼の配信の穏やかな空気はある意味異質でさえあった。
破天荒で目立つメンバーの陰に隠れがちではあったが、にじさんじというカオスなグループの一角に欠かせない空間を作っていた。
そのような多様性は今に至るにじさんじの興隆に重要な要素だったし、その功績は決して数字では測れないものだ。

彼は特にファンを大事にしてくれていたライバーでもある。
ファンレターに関しても、本当に喜んでくれていたし読んでくれていた。
ファンが配信チャットで「送ったよ」と言えば、その名前を見ただけで「届いてるよ!読んだよ!」と反応してくれるような人だ。そんな場面は幾度となくあった。
これに応じて、初期から長く応援しているファンも多いし、熱心なファンの割合も高かった。
初めてファンレターを書くよという人もいた。毎月欠かさずファンレターを出し続けている人もいた。様々な節目で企画を立て、寄せ書きなどを取りまとめて送ってくれる人もいた。クリエイティブなファンも多く、イラストを描いて送る人も多くいた。これまで出せなかったが、引退に際して最初で最後のファンレターを出したという人もいた。
数の大小は問題の本質でないが、破棄されたとされる8ヵ月分のファンレターの数は外野から想像されるよりずっとずっと多いはずだし、掛け替えのない思いの込められたものだった。

彼の引退に至るまでも、旧いちから現ANYCOLOR社、にじさんじ運営には大小様々な問題が見受けられた。
とは言え、にじさんじという事務所がなければ彼は存在しなかったし、彼にとって大事な居場所でもあったはずだ。
だから、適宜批判はしながらも、事務所を悪し様にに言うのは避けてきた。あまり強い言葉で叩くような発言は見たくなかった。
引退が決まってからも、できればこの姿この名前で活動を続けて欲しかったし、そのような未来はなかったのかと思わずにはいられなかった。我々ファンに出来ることはなかったのかと悔やみもした。

しかし、その結果がこれだ。
初期メンバーとしてにじさんじを作り上げ、ファンを大事に、6年半の間活動を続けたライバーに対してこの仕打ちだ。
この事務所で永劫活動を続けていくことは彼本人のためにもならなかった、引退という区切りを付けるのは必要なことだった、と納得できたことだけがこの事件から得られた唯一の収穫だった。

終わりに

本当であれば公式のフォームから意見を伝えるべきところだと思うが、今となってはにじさんじ運営に何かを期待する意味もなくなったので、それはしていない。
再発防止も今や自分の期待するところではない。それは現役のファンがすべきことだ。
今から期待するのは唯一、これから新たに書くファンレター(書き直すのではない。それは不可能だから)を確実に本人の元へ届けること、ただその一点のみだ。

代わりに、事件を風化させないためにこの記事を残すこととした。
やり切れない感情は全てここにまとめて、だらだらと引きずらないためでもある。

願わくば、彼の今後がこれまでよりもずっと豊かで素晴らしいものになりますように。


追記 2/17

再発防止は自分にとって意味がなく、これ以上のアクションを求める理由がないことから公式への直接問い合わせはしないつもりだったが、思い直した。

現状、この問題に関する告知はXのポストでのみ行われている。
・XはSNSであり、容易に投稿が流れて確認しづらくなること
・Xは外部サービスであり、情報掲載の範囲や様式を十分にコントロールできないこと
以上2点の理由から、Xにのみ投稿するのでは不十分である。
企業としての責任を明らかにするため、また、ファンレター再募集の情報を必要とするファンに可能な限り漏らさず届けるためにも、コーポレートサイトへの情報掲載を求める。
掲載できない理由があるなら、その理由を説明することを求める。

上記の内容を公式の問い合わせフォームより送信した。
返答があれば追記する予定。
もしも返答さえないのであれば、事後対応の誠実さすらも欠く企業であると判断せざるを得ない。そのような結末にならないことを祈る。


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