【トワイライトウォリアーズ】これは香港映画オタクがインフルエンザの時に見た夢なんじゃないか【決戦!九龍城塞】
2025年最高の映画がすでに来てしまったんじゃないか。そのくらいの熱量の映画が巷を賑わせている。それが「トワイライトウォリアーズ」だ。
往年の香港映画のファンは今なお多い。ブルース・リーやジャッキー・チェンに憧れたのはその世代のおじさんたちだけではなく、現代のアクション映画好きも、それらを見て詠春功夫(ジュンファングンフー)に憧れたりするのである。そうでなきゃイップマンはあんなに流行らんし、これはフィリピン映画だけど、ザ・レイド2のキッチンでのバトルシーンに熱狂したりはしない。
さて、そんな「ド派手なアクション」と「コミカルな演出」という香港映画の風に乗って解き放たれた怪作、それが「トワイライトウォリアーズ 決戦!九龍城塞」なのだ。
この映画、マジで全部がある。
九龍城塞を知らないオタクはいまさら存在しないと思うので説明は割愛する。その九龍城塞を舞台にありとあらゆるイケおじ・イケメン・色男・ナイスガイたちが切った張ったの大暴れ。終いには「旧友との決別」「恩人の意思を継ぐ」「ライバルの息子」「仇敵の息子」「世界観違いすぎるラスボス」など、オタクが好きな出汁全部とってラーメンにしたみたいなとんでもねえシロモノとなっている。
香港映画とか功夫映画と聞くと、おっさんや一部のアクション映画付きのシネフィルたちだけが騒いでいるものと思われがちだが、驚くべきことに女性ファンがすごいいる。このイケおじ、タフガイ、イケメンたちの人間模様が一部界隈のお姉様方に大変ウケたらしく、Twitterではそういったお姉様たちの声にならない叫びを観察することが可能だ。
まあこういうことを言うと古式ゆかしき功夫映画おじさんたちは逆に遠のいてしまうかもしれないんだが、そうではないと声を大にして言いたい。つまり、功夫映画なんか知らん人間が見ても、「おもしろい!」と思えるくらいストーリーの出来がいいと言うことなのだ。当然功夫映画おじさんが見てもおもろい。
この映画で個人的に好きなところは、主人公の洛軍(ロックワン)の成長だ。最初は「市民権」を求めて香港に来た洛軍だが、最終的に香港出身であることがわかり、びっくりするほど簡単にその市民権を手に入れることができる。けれど、その時の洛軍はすでに、自分が本当に欲しかったものは「市民権」などではないと気づいているのだ。彼が本当に欲しかったのは「安心して眠れる場所」「信頼できる仲間たち」であると知ることができたからだ。
他に見所がある中で敢えてここを選んだのは、「キャラクター同士の関係」を中心に見ればお姉様方のような熱狂を得ることもできる反面、昔ながらの功夫映画を愛している人であっても、そういう「監督のこだわり」みたいな部分がしっかりと伝わってきて、香港映画として楽しめるということを伝えたかったからなのだ。
ちょっとしたゴア表現などもあり、ファミリーで楽しむ映画という感じではないのでそこだけご注意いただきたいが、万人に向けたアクション大作であることは間違いない。ぜひあなたも映画館に行って「硬直!」してほしい。まじなんなんだよ硬直って。気功って言えばなんでも許されるわけじゃねえんだぞ。でもそういう感じが逆に往年の香港映画っぽいんだよな……。