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己が赤ちゃんであることを認めろ!~ガチで「継続」するためのセルフコントロール術~

 前回、本気で絵を練習したらたった数ヶ月でこんなにうまくなりましたよ~みたいな記事を書いたところ、嬉しいことに多くの方に読んでいただけました。感謝。

 その中で「毎日何かを続けるのがすごい」「そこが一番難しい」みたいなお言葉をいただき、たしかにそれは難しいことの一つだよなあ……と頷くことしきり。

 実際のところ、僕もそこは今までの人生で苦心したことの一つでもあり、コツを掴んだのもつい最近の話です。

 ADHD気質で継続が苦手な僕が、どうやって数カ月に渡ってセルフコントロールをしたかという話をしたいと思います。意識高めの話や厳しい話もするので身構えておいてください。

「考える」ことをはじめる

 「イシューからはじめよ」という本がありますが、その中でこんな記述があります。有名な本なので聞いたことのある方もいるかも知れません。

 僕の考えるこの2つの違いは、次のようなものだ。
 「悩む」=「答えが出ない」という前提のもとに、「考えるフリ」をすること
 「考える」=「答えが出る」という前提のもとに、建設的に考えを組み立てること
この2つ、似た顔をしているが実はまったく違うものだ

 皆さんにも経験ありませんか。「悩んでいる」経験です。

 とにかく、この「悩む」をやめなくてはいけません。「継続できない」こと、それは「悩み」です。まず「どうすれば継続できるのか」と「考える」方向にに思考をシフトさせる必要があります。

 これはセルフコントロールに限らず、世の中のありとあらゆる問題の解決に直結する思考です。

 この本を今さら1から読むのが苦痛な方も多いと思いますので、これをわかりやすく解説してくださっている記事を紹介しておきます。

 さて、前置きはここまで。「ガチで継続するための方法」について考えていきましょう。

人間は赤ちゃんである

 一言で言うなら、「人間の性質を知る」。これにつきます。別に専門的なことを覚える必要はありません。ただ、セルフコントロールができていないとき、「じぶん」という存在についての意識が間違っていたり、或いは考えていなかったり、というのはよくある話です。

 まず前提として、「セルフコントロール」と聞いて、操縦桿を握って自分の行動を制御するようなイメージを頂いた方は、それを捨ててください。

 結論から言えば、セルフコントロールなどというのは幻想です。あなたの意識があなたを自由自在にコントロールする日は未来永劫やってきません。

 赤ちゃんを育てたり、あるいは触れ合ったりした経験はありますか。

 赤ちゃんというのは気まぐれな生き物です。腹が減れば泣き、糞尿が出れば泣き、よくわからないけど不快だから泣き、嬉しくても泣き、特に理由がなくても暇だから泣いたりします。

 人類は皆、最初は赤ちゃんでした。でも考えてみてください。本当に今のあなたは赤ちゃんでは無いと断言できますか。

 晩ごはんはカレーにしようと思っていたのに、いつの間にかポトフが出来ていたり。特に必要ないはずのモノなのに衝動買いしてしまったり。怒っても意味のない場面で衝動的に怒鳴り散らしたり。ここで泣いたらカッコ悪い、という場面で涙が溢れたり。明日は朝早いから寝よう、と思っていたのに全然眠れなかったり。

 そうです。あなたは成長し、意識(あるいは理性)を手に入れました。その意識を使うことで、「じぶん」という赤ん坊をどうにか操って生活している状態なのです。赤ん坊を無理やり行動させたりしますか? しませんね? 赤ん坊に泣き止んでほしいとき、我々は全力でご機嫌取りをします。

 もしも「じぶん」に行動してほしいなら、気合で無理やり行動させるなんてのは愚の骨頂です。我々がすべきは、「じぶん」のご機嫌取りです。

「今」を優先する遺伝子

 「意識」が「じぶん」をコントロールするとき、私はこういう、釣り竿と人参のイメージを持っています。赤ちゃんじゃなくてウマなのはイメージしやすいからです。ウマなら鞭打てるからね。ウマに鞭を打ってもいいですが、「じぶん」というウマを調教するのはとても難しいことです。

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 だいたい、殆どの人間は鞭を打たれるのなんか嫌いです。できれば人参だけ食べていたいものです。

 ここで、人参を「快」、鞭を「不快」に置き換えてみましょう。

 絵の練習は、「不快」です。絵が上手くなることは「快」です。さて、論理的に考えれば「絵が上手くなるという快」のために、「練習という不快」を耐えるのは当たり前に感じます。

 ですが、その論理は通じません。なにせ赤ちゃんは気まぐれ。ウマも気まぐれだからです。得てして、生き物は将来のハッピーよりも現在のハッピーを優先します。今100万円渡せば10年後に110万になって帰ってくるけどどうする? と聞かれたら迷うはずです。どう考えても払った方がお得なのに!

 これも当たり前の話で、生きているかもわからない将来のエサより、今すぐ手に入るエサを優先したほうが生き残りやすいからですね。将来より今を優先する遺伝子のほうが残りやすいわけです。

 だから、今の100万円を優先するのは人間として当然です。それに今練習したからと言ってすぐに絵が上手くなるわけでもありません。そりゃ、練習する気も起きないというものです。嫌なことを継続できる人間はいません

 僕らがしなければならないのは「今の100万円」より「将来の110万円」がお得に感じられる状況を作ることです。

まず環境を変える

 継続とは習慣です。習慣は何から生まれますか? そう。環境です。「明日から頑張ろう」と決意した人にとっての「明日」が決して訪れないように、世の中に決意ほど無意味なものはありません。

 さんざんっぱら説明したように、決意とか、意思とか、やる気といったものでは赤ん坊をコントロールできません。赤ん坊が泣いているなら、ミルクを与え、おむつを換え、あやし、語りかけ、あるいはそれでも駄目なら放置するでしょう。

 赤ん坊と絵の練習の一番の違いは、赤ん坊なら放置しても泣き止むことがあるけれど、絵は練習しなければ永遠に上手くならないという点です。つまり、絵がうまくなりたいなら放置という手段は無いことが分かります。

 これだけ絵がうまくなりたいのに、ではどうして人は練習しないのでしょうか。そう、それはあなたの意思の問題ではありません。できないから、していないのです。

 いやいや、何を言うか。ここにクロッキー帳とペンがあり、そして絵の指導書もある。机の前に座れず、クロッキー帳も開けず、そしてペンも持てないのは僕の怠慢でしか無いでしょう。と、思ったあなた。

 それはとんだ思い上がりです。

 何度も言いますがあなたは赤ちゃんです。赤ちゃんは自分の意志でお湯を沸かし、粉ミルクを溶かし、哺乳瓶につめ、冷まし、そして吸いますか? しませんね? しないんです。それは親であるあなた=理性の役目です。

 そもそもどんな練習をすれば良いのかわからない、なら練習法を調べましょう。そもそも机に座るのがだるいなら、良い机を買いましょう。そもそも教本がないなら買いましょう。ついついTwitterを見ちゃうならブックマークからTwitterを消して、デスクトップをCLIP STUDIOだけにしましょう。

 こうして、今払う100万円を、どんどん少なくしていきましょう。そうすると、少しずつ不快が軽減されていくはずです。「今10万円払うと10年後に110万円もらえる」とかなら、だいぶ心が軽くなってきませんか?

 これはもちろん、将来にもらえる110万を増やすということも同じです。

 僕の場合はさいとうなおき先生のようなイラストレーターさんの動画を見て、練習すれば、こんな絵がかけるようになるぞ……と自己暗示をかけていました。いま10万払って10年後に1000万、とかになれば相当払いたくなってきますね? 

 そうです。環境を変えれば行動が変わる、というのはこういうことです。

 環境を変えても行動が変わらないが? 俺みたいなクズはそっからダメってことか? という人もいるかも知れません。ですが、それこそとんだ思い上がりです。

 それはあやし方を間違えているせいであって、あなたのやる気とか決意とかが足りないわけではありません。おむつを換えてほしい赤ん坊にミルクを与えても泣き止みませんよね? アプローチが違うからうまく行かないのです。何度も言いますがあなたは赤ちゃんです。逆に言えば、親であるあなたの意識=理性が、しっかりと面倒を見なきゃいけません。一回こっきり環境を変えてうまく行かなかっただけで諦めるなんてネグレクトですよ。

習慣になる

 「習慣にする」ではなく、「習慣になる」なのです。習慣化出来ないときは、まだ100万円を90万に下げたくらいにしか環境を変えられていないだけです。とにかく環境を変えましょう。口酸っぱくていい加減ウザいでしょうが、「決意」ほど無駄なものはありません。

 そして、一度習慣になったものは多少中断しても出来てしまうものです。飲み会終わり、深夜にベロンベロンになって帰ってきて、風呂にも入らず歯も磨かず布団に潜り込んだとしても、翌日起きたらいつの間にか不快な口を歯磨きしていたりします。

 そう。習慣になると、100万円を払う部分がどんどん安くなっていくんです。歯ブラシを手に取り、歯磨き粉をつけ、口腔内を一定時間専有する、このクソ面倒な歯磨きという行為のデメリットを、「不快な口がすっきりする」という将来のメリットが上回っているから、一度忘れたくらいでは習慣が崩れたりしないんです。

 ここまで読んだあなたは、もう自分自身が赤ちゃんであることを認めることが出来たと思います。こうなれば、自分自身が赤ちゃんであることに気づけていない多くの人よりも、より上手にセルフコントロールができるはずです。

 さあ、今すぐ環境を変えましょう。話はそれからです。


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