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Vol.4 ザンビアの農業政策

こんにちは!

ザンビアでJICA野菜栽培隊員として活動する細谷和喜です。

日本には多くの農業政策や補助金制度がありますが、ザンビアでも様々な農業政策がとられています。

今回はその中でも代表的なものをいくつか紹介していきます!







ザンビアの農業機関




Ministry of Agriculture(農業省)

ザンビアには日本で言うJA(農協)のような組織はありません。ほとんどの農業機関がこの農業省の下で組織されています。

ザンビアには10個の州がありますが、その10個の州全てに農業事務所があり、そこからさらに郡の農業事務所へと分かれます。


ザンビアの10個の州




首都ルサカ州には8つの群があり、それぞれにまた農業事務所が存在します。
郡の農業事務所には事務所長であるDACO(District agriculture Coordinator)を筆頭に、農業普及員、農業経営、会計、林業、人事など様々なオフィスに分かれます。

私は「チランガ郡」という郡の農業普及員として活動しており、チランガ郡のさらに「チランガキャンプ」というエリアで農業技術の普及活動をしています。

また、これからご紹介する農業政策の登録、モニタリング等をするのもこの農業事務所の事務員の仕事になっています。

ザンビアでは年に一度「アグリカルチャーショー」という農業技術の展示会が行われますが、その展示を各農業事務所から出し合い、地区予選、州予選、全国大会と勝ち上がって優勝した事務所には賞状が贈られます。

このアグリカルチャーショーは、ザンビアでは大統領が来るほどの大イベントで、毎年多くの人たちが訪れます。

最近の日本では農業に興味を持つ人々が少なくなってきたので、農業の重要性を国民に意識付ける上で、このイベントは見習いたいなと感じます。


アグリカルチャーショーに集う人々


FRA(Food Reserve Agency)

ザンビアの主食「シマ」の原料であるメイズの粉「ミリミール」を管理する機関です。


シマの原料ミリミール



このFRAという機関は、メイズが豊作の時に農家からミリミールを買い取って貯蔵しておき、不作時に市場に出したり、ミリミールが買えない貧しい人々に無償で提供するといった仕事をしています。
また、ミリミールが余っているときには他国に販売もしています。


FRAの保管庫



ザンビアの農業政策



FISP(Farmer Input Support Program)

FISP(フィシップ)はザンビアで一番登録者数の多い農業政策です。

農家は400クワチャ(約2400円)をプログラムに支払うことで、1エーカー(4047m²)分のメイズを栽培するのに必要な肥料や種を一式受け取ることが出来ます。

※FISPで受け取ることのできる農業資材
・メイズの種子     10kg      K350(2100)円 相当
・D-compound(基肥)   1袋(50kg)×3  K900(5400円)相当
・Urea(追肥)       1袋(50kg)×3  K750(2250円) 相当

・作物の種子:大豆(25㎏), 落花生(20kg), 米(12.5kg), ひまわりの種(5kg), ささげ豆(10kg), ソルガム(10kg)のいずれか一つ。
               
 ※それぞれ約K350(2100円)相当

上記を見ていただいたら分かる通り、これらの肥料や種子をまともに買おうとすると、値段が何倍にもなってしまいます。

そのためザンビア人の農家のほとんどはFISPに登録し、得た作物を水が安定する雨季に植えます。

その代わり、農家の収穫量が30袋(1袋50㎏)を超えた場合、過剰分はFRAに販売しなければならないという決まりがあります。


FISPで手に入る肥料


~FISPのメリット~

・高価な肥料や種を破格で取得できる。
・1エーカーの畑に植えたメイズがすべてうまく育てば、少なくとも1年分は自家消費用として持たせることが出来る。
・1エーカー分の農地があれば誰でも申請できる。(農家以外も可)

~FISP~のデメリット~

・高価な肥料の転売が起こる(最近は肥料のパッケージに、FISPのスタンプが押されます)

・収穫量を誤魔化して、闇商人に販売する農家が出てくる。

※この闇商人は誤魔化した分のミリミールを大量に集め、コンゴやナミビアといった国に販売します。

因みに、コンゴで販売すると1袋約250クワチャ(1500円)のミリミールの値段が約3倍800クワチャ(4800円)になるそうです。
輸送費がどれくらいかかるのかはわかりませんが、儲かるようです。

・農家がFRAに売りたがらない
※FRAに販売すると、一袋K280(1680円)と高く買い取ってくれますが、売り上げは売った3か月後くらいに農家へ一括で支払われます。

今の生活が厳しい農家にとっては、近くのマーッケトで販売したほうが早くお金を手に入れられるので数をごまかしてFRAに販売しない人も多いみたいです。

また、FRAに運ぶための交通費が高いという理由で売りたがらない農家も多いみたいです。




SAFF(Sustainable Agriculture Financing Facility)

「SAFF」は簡単に言うと、農家に対する貸し付け投資政策です。
こちらは農業省と銀行が提携して行っており、農家はK10000~K50000の間で借り入れ金額を決めます。(K10000単位)
そして、農家はお金ではなく、借り入れた金額分の肥料や種を受け取ります。(これも普通に買うよりは格安で購入することが出来ます。

※K10000(60000円)で約1ha(10000m²分)

そして収穫物から得た売り上げから借り入れた金額プラス12%の利子を上載せして銀行に返済します。(K10000借り入れた場合の返済額はK11200)

メイズが1haあたり何事もなければ75~170袋分収穫できるといわれており、75袋だった場合でも1袋の平均価格K250を掛けるとK18750。

この数字を見ると余裕で返せそうに思えますが、ザンビアのメイズ栽培は殆どが雨頼りなので、近年の様に雨が少ないと逆に借金になってしまう可能性があります。

また、SAFFは金額が大きいこともあり、申請にかかる審査、書類が多いのも特徴です。
農家はSAFFの申請をするために書類審査と農業事務員との面接、銀行員との面接をクリアしなければなりません。

銀行員に提出する書類には、もし返済が出来なかった場合の担保を記入する欄があり、多くの農家は牛や羊などの家畜を記入しますが、人によっては自分の家を担保にする人もいます。
そのため、FISPに比べるとリスクが大きくなっています。


SAFFのメリット
・肥料、種を格安で購入できる。
・FISPよりも規模が大きい。
・うまくいけば大金を得られる

SAFFのデメリット
・金額が大きく、リスクが大きい。
・1ha以上の広い土地を持った農家に限られてしまう。
・面接や書類審査など、手間が多い。
・肥料の転売が起こる。



ZEFPF(Emergent Farmer Credit Facility)

ZEFPEは、農家が農業省にK2500(30000円)支払うことで、K5000相当の資材を受け取ることが出来るというものです。
(残りのK2500は政府が補助)

※ZEFPFで受け取ることのできる農業資材
・メイズの種子     10kg×2     K700(4200)円 相当
・D-compound(基肥)   1袋(50kg)×8   K2400(円)相当
・Urea(追肥)       1袋(50kg)×8   K2000(12000円) 相当

ただし、この資材を投入して得たミリミールは、すべてFRAに売らなければならないという規定になっています。

ZEFPFのメリット
・FISPよりも規模が大きい
・FRAが確定で高く買い取ってくれる

ZEFPFのデメリット
・FISPに比べて補助率が少ない
・収穫物は全てFRAに売らなければならない
   (輸送コストがかかる)



おわりに


いかがでしたか?

ザンビアに住んでいない人にとってはあまり関係の無い内容かもしれませんが、
それぞれの国には、その国の食文化や気候など、様々な要因にあわせた農業政策が取られていることがおわかりいただけたかと思います。 

次回はザンビアの市場(マーケット)について書きたいと思います。

お楽しみに!





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