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知っておくべき!中小企業の設備投資を強力サポートする「先端設備等導入計画」とは
はじめに
近年、中小企業を取り巻く経営環境は厳しさを増しており、生産性の向上が喫緊の課題となっています。そのような状況下で、中小企業の設備投資を強力に後押しする制度として注目されているのが「先端設備等導入計画」です。このコラムでは、制度の概要から活用メリット、申請の流れまでを詳しく解説し、中小企業の成長戦略に役立つ情報を提供します。
「先端設備等導入計画」とは?
「先端設備等導入計画」は、中小企業が設備投資を通じて労働生産性の向上を目指すための計画です。この計画が、市区町村が定める「導入促進基本計画」に合致する場合に、認定を受けることができます。認定を受けることで、税制支援や金融支援などの支援措置を活用することが可能になります。
制度の目的: 中小企業の労働生産性向上を促進し、経営強化を支援する。
対象者: 市区町村が定める「導入促進基本計画」に合致する先端設備等の導入を行う中小企業者等。
中小企業者等の範囲は、業種や資本金、従業員数によって異なります。
例えば、製造業やその他の業種では、資本金3億円以下または従業員数300人以下が対象となります。
計画期間: 3年、4年、または5年。市区町村が定める導入促進基本計画で定められた期間となります。
「先端設備等導入計画」の認定を受けるメリット
「先端設備等導入計画」の認定を受けることで、主に以下の3つのメリットを享受できます。
1 税制支援
最大のメリットは、税制面での優遇措置です。具体的には、以下の2つの軽減措置があります。
固定資産税の軽減:
新規取得設備に係る固定資産税の課税標準が、3年間、1/2に軽減されます。
さらに、賃上げ方針を表明した場合は、課税標準が1/3に軽減されます。
この軽減措置は、設備を5年以内に取得した場合が対象ですが、令和6年3月までに取得した場合は4年間、令和7年3月までに取得した場合は5年間の軽減となります。
対象となる設備は、労働生産性の向上に直接寄与する機械装置、測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウェアなどです。
ただし、市区町村が定める導入促進基本計画によって対象となる業種等が異なる場合がありますので、事前に確認が必要です。
注意点:
税制上の優遇措置を受けるためには、取得価額や中古資産でない等の税務上の要件を満たす必要があります。
設備取得は、先端設備等導入計画の認定後に取得する必要があります。
2 金融支援
民間金融機関からの融資を受ける際に、信用保証に関する支援を受けることができます。
信用保証の特例: 信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等通常枠とは別枠での追加保証が受けられます。
保証限度額は、普通保険で2億円(組合4億円)、無担保保険で8,000万円、特別小口保険で2,000万円です。
適用手続き: 金融支援の活用を検討している場合は、「先端設備等導入計画」を提出する前に、関係機関に相談する必要があります。
3 経営力強化
先端設備等導入計画は、単なる税制優遇策ではなく、事業者の経営力強化にもつながります。
生産性向上の目標設定: 計画期間内に年平均3%以上の労働生産性の向上を目指す必要があり、具体的な数値目標の設定を通じて、経営改善の意識を高める効果があります。
労働生産性は、**(営業利益 + 人件費 + 減価償却費)÷ 労働投入量(労働者数 × 1人当たり年間就業時間)**で算出されます。
計画進捗のモニタリング: 事業者は、計画の進捗状況や成果を定期的に市区町村に報告する必要があり、計画の実行状況を把握し、改善点を見つける機会になります。
4. 「先端設備等導入計画」の申請の流れ
「先端設備等導入計画」の申請は、以下のステップで進められます。
事前確認:
**認定経営革新等支援機関(商工会議所、商工会、士業、地域金融機関など)**に、先端設備等導入計画の内容について確認を依頼します。
投資計画に関する確認書の発行を受けます。
必要な書類: 投資計画に関する確認依頼書、基準への適合状況、設備の売買契約書や見積書、売上高・営業利益が変化する場合の根拠資料、工場や店舗のレイアウト図など。
計画策定:
先端設備等導入計画を作成します。
計画書には、事業の内容や実施時期、労働生産性向上の目標、導入する設備の概要などを記載します。
申請:
市区町村に先端設備等導入計画の認定申請を行います。
必要な書類: 申請書、認定経営革新等支援機関による事前確認書、その他市区町村長が必要と認める書類。
認定:
市区町村から認定を受けると、税制支援や金融支援などの支援措置を受けられるようになります。
5. 注意点
「先端設備等導入計画」を活用するにあたっては、以下の点に注意が必要です。
計画の変更:
計画変更を行う場合は、再度市区町村の認定を受ける必要があります。
賃上げ方針:
賃上げ方針を計画に位置付けることができるのは新規申請時のみです。
賃上げ方針を表明した場合、固定資産税の課税標準が1/3に軽減される。
賃上げ方針の表明: 従業員に対する給与等の総額(国内雇用者に対する給与等支給額)を、前事業年度と比較して1.5%以上増加させる方針を従業員に表明する必要があります。
リース契約:
リース契約を利用する場合、固定資産税の軽減措置を受けるためには、リース会社が固定資産税を納税する必要があります。
設備取得の時期:
設備取得は、先端設備等導入計画の認定後に取得する必要があります。
投資利益率の要件:
税制上の優遇措置を受けるためには、年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれる必要があります。
投資利益率は、(営業利益+減価償却費)/設備投資額で算出されます。
6. まとめ
「先端設備等導入計画」は、中小企業の生産性向上を強力にサポートする制度であり、税制優遇や金融支援を活用することで、設備投資の負担を軽減し、経営力の強化につなげることができます。制度の活用を検討する際には、まず市区町村の担当窓口や認定経営革新等支援機関に相談し、自社の状況に合った計画を策定することが重要です。
7. おわりに
本コラムが、中小企業の皆様の成長戦略の一助となれば幸いです。ぜひ「先端設備等導入計画」を有効活用し、持続可能な成長を実現してください。
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