ランニングH(ラフ)

【1話_再開・最愛 前日】
12月4日土曜日 前日 誠
今年も、寒い冬に熱い「沖縄」にフルマラソンに参加するために訪れる季節になった。
30歳になったのをきっかけに始めたランニングで沖縄に来るのも今年で6回目だ。
ちょっとした運動として始めたランニングがこんなに続くと思わなかったし、フルマラソンへの参加が続くなんて夢にも思わなかったなぁ・・・
走ることを始める以前は、年末年始の駅伝を見ることもなかったのに、自分の変化には驚かされる。
まぁ、そうはいっても半分は沖縄旅行の気分だから、本気でマラソンに挑戦してる人とは次元が違うと思う。
その証拠に、自分の日々のトレーニングは10キロ程度で、このまま続けた先に何があるのか自分でもわからないんだよなぁ(笑)
でも、辞めると大好きな沖縄に行くルーティンが無くなってしまうので辞められない…全くもって不純な理由だと思う。
ちなみに、記録はギリギリサブ4ランナーだ。

そんな沖縄は、自分が住んでいる神戸市から飛行機で2時間半ほどで到着する。

沖縄に着いて飛行機から出ると、気温の高さに驚き、「暑っ!」と当たり前のことを毎年言ってしまうのが不思議だ。 たぶん、自分の中で沖縄に来たことを実感するための通過儀礼みたいなものなんだろうけど…我ながらアホらしい一言だ(笑)

1人での沖縄旅行…いや、那覇マラソンも6回目となると慣れたもので、沖縄に着いたというテンションは必要以上に高まらず、ササっと空港からライナーに向かうようになった。
なんだかんだで、10回以上は沖縄に来ているから第二の故郷とも言える。

ライナーに乗り、宿の最寄り駅の美栄橋駅までの景色を見ていると、内地とは違う風対策が施された住宅に懐かしさを感じられる。

美栄橋駅に着くと、初めて沖縄に1人旅した時から利用し続けている「青空ハウス」に向かう。
久しぶりの沖縄観光を楽しむためには、まずは荷物を預ける事だ!

今回も宿泊する「青空ハウス」は、俗に言うゲストハウスで格安で泊まれる宿だ。
基本はドミトリーという、複数人で一つの部屋を利用するパターンだと思うけど、自分は少し高めの1人部屋を利用する様にしている。
理由は…自分は匂いに敏感だからだ…。

そんなゲストハウスでの1人部屋…贅沢な利用方法に感じるけれど、宿泊料金はビジネスホテルより安い。
ちなみに、自分がゲストハウスで最も助かっているのは独特の騒がしさだ。
騒がしいのが何が良いのかと思うかもしれないけど、朝が苦手な自分は、何度も大会に遅刻する夢を見てるので、大会の朝に騒がしさで起きられる事で非常に助かっている。笑

荷物をゲストハウスに預け、急いで向かう場所は…毎年通っている「ソーキそば」のお店だ!
一杯が350円と安いのに、しっかりと煮込まれたソーキがトッピングされているので、アッサリとしたソーキそばだけど食べ応えがあるし、何より美味しい!!
まずは、そのまま食べて、途中から紅生姜と「コーレーグースー」を入れて味変をして食べるのがお勧めだ!

「はぁ…沖縄に来たなぁ…」
ソーキそばを食べ終えると、次に向かうのは、24時間スーパーの「ユニオン」だ!
店内は個性的なオリジナル曲が流れていて、ソーキそばで高まっていた沖縄愛がさらに高まり、沖縄への没入感が増していく。
さて…ユニオンに来たら、決まって購入するのものがある、それは安くてボリューム一杯のお弁当だ!
と、意気込んで惣菜コーナーに向かっていると後ろから自分の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「…誠?」
こんな場所で自分が呼ばれる事はないだろうから、同じ名前の人が呼ばれているのかな? と思いつつ振り向いて見ると、そこには昔付き合っていた『石川里美』の姿があった。

「里見…?」
「やっぱり誠だ! こんな場所で会うなんて奇遇やね!」
久しぶりに見る里見は、10年前に付き合ってた頃と殆ど変わらずで、相変わらず綺麗だった。
「いや、奇遇やけど…なんで沖縄に? 1人なん?」
「うん、明日の那覇マラソンに参加するから1人で来てるんよ」
落ち着いて里見の足元を見てみると、なるほどランニングシューズを履いていて、服装も観光には似つかわしくないスポーツウェアだった。
「そーなんや…へぇ、里見がマラソンかぁ、運動とか苦手やったのに…意外やなぁ」
「そうね、運動は今でも苦手やけど、何にもしないと体型維持とか出来ないからさ…で、気がついたらマラソンに参加するようになってたって感じかな?」
「沖縄にしたのは…一緒に走ってる人達が、那覇マラソンは別物の楽しさがあるってきいたから、初めてのフルマラソンには良いかなと思ってね!」

それなりにトレーニングをしてきたのだろう、身体にフィットする練習着らしき服を着ている里見の身体は、細いけれど引き締まった印象が感じられる。
「初めてのフルマラソンか、結構走り込んできたん?」
「もちろん! 私も、やる時はやるんですよ!」
腰に手を当てて胸を張る里見の姿は、インドア派だった里見とは違いお尻が大きく上に上がっていて引き締まっている様に見える。
ついでに言うと、全体的に引き締まっている事で、ちょっと大きい程度だった胸が「巨乳」レベルに引き上げられている!
「ちょっと…いくら私が魅力的だからって、舐め回すように私の身体を見過ぎじゃない?」
「…あ、ごめん…つい…」
「ついって?」「久しぶりに私に会って欲情しちゃったとか?」
「な、んなわけないだろ!」
つい、勢いで否定してしまったけど、まさにそのとおりで…久しぶりに出会った元カノの身体を見て回想モードに入ってしまったのは言うまでもない。。。
「ところで、里見は何を買いにきたん?」
自分の頭の中を勘ぐられないように、なんでもない会話を差し込んだ。

「ん? 明日の補給食を買おうかなと思ってね。それと、今日の夜の祝杯って感じ?」
里見が手にしている買い物カゴの中には、運動ゼリーやサプリメントらしきものが沢山入っている。
「そうか…祝杯するなら前夜祭ってのありやない?」

「前夜祭?」
「うーん、そうね! 前夜祭といこうか!」
話の流れの中で、里見を呑みに誘ってみただけなので、まさかオッケーが出るとは思わなかったから驚いた。

そして、僕と里見は久しぶりにお酒を飲みに行く事になった。
この、テンションが上がっている沖縄の地で。。。

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