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【NTT】今年度減益の理由と投資家の思惑 今後の展望
NTTの株価は年初からの上昇から一転し、決算発表から急落していました。
現在は日経平均の最高値更新とともにNTTの株価も復調していますが、なぜここまで大きく株価が下落したのでしょうか。
主な要因は24年度の通期業績予想が大幅減益となったからです。
営業収益は増加するものの、営業利益は前年比△1,129億円、当期利益は△1,795億円となっています。
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今期の減益の主な要因は前期の資産売却益計上の剥落です。
ただ、24年度のNTTの業績の足を引っ張ると予想されているのが固定電話を手掛けるNTT東西です。
地域通信事業の営業利益は2,900億円となり23年度と比較すると約3割減となっています。
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減益の理由は固定電話の構造的な縮小が進み、IP電話も含む契約数が減少すると予想されているからです。
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固定電話を契約していない人も多いと思います。
このようなスマートフォンに通信サービスを一本化する動きにより、26年3月期においても減少すると個人的には予想しています。
また、株価が下落したもう一つの要因は海外投資家です。
海外投資家としては日本にインフレが定着し、多くの会社で業績が伸びる期待がありました。
しかし、日本の通信セクターはインフラでもあるので値上げがしづらい構造となっています。
「通信代が上がっているのに、通信会社が大儲けしているのは何事だ!」という意見は少なからず存在しているので積極的に値上げしづらい状況です。
また、格安スマホの台頭により、「携帯料金は安くて当然」という雰囲気も出てきていますよね。
そのため通信会社はなかなか値上げができず、業績も大きく上がらないというわけです。
特にNTTドコモは値下げの影響から抜け出せず、1ユーザー当たりの収入(ARPU)の減少が今後も見込まれています。
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海外投資家からするとインフレの影響を価格転嫁できない体制に嫌気がさし、今回の株価の下落につながったと言われています。
ただ、個人的に悲観論だけではないと思います。
短期的には地域通信事業の下げはありますが、いずれ下げ止まりが来ると思います。
また、法人サービス事業では伸びが見込まれており、ポジティブな面もあります。
中期的にはデータセンターや「IOWN」での成長が期待できます。
生成AIの成長に伴って世界的にデータセンターの需要が伸びており、NTTデータを中心にその需要を現在獲得しようとしています。
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「IOWN」はNTTを中心に進めている次世代通信基盤のことで、かつてのiモードのようにならないように世界の大企業とタッグを組んで進めているため、期待ができるプロジェクトです。
また、通信以外でも収益の柱を作ろうとしています。
3代通信キャリアの中でNTTドコモだけが持っていなかった銀行業に2024年度にも参入し、金融サービスを中心とする経済圏の獲得を目指しています。
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さらに非通信分野ではアリーナやスタジアムの運営事業にも力を注ぐとしています。
25年4月から運営に参画する国立競技場にネーミングライツを導入する方針です。
NTTは時代に合わせて稼げる領域に注力してきた企業です。
固定通信から移動通信、そしてデータセンター。
今後は非通信分野に注力するとともに新たな通信基盤という新市場を開拓しようとしています。
中長期で見れば必ず稼げるビジネスをしているのがNTTですから短期的な株価の下落を気にする必要はないと思います。
長期で配当目的として投資するのであれば、短期で結果を求める海外投資家とは違うゲームをしていると認識することが大事なのではないでしょうか。
個人的にNTTにはこれからも日本の通信ガリバーとして頑張ってほしいので応援したいと思います。
NTTについてはマガジンもぜひご覧ください。