三菱商事・三井物産・伊藤忠商事の特徴!
日本を代表する総合商社のビジネスは各社で似ているところもあれば異なるところもあります。
一括りに総合商社と言っても違いがわからないという方もいるのではないでしょうか。
そこで5大商社の中でも頭一つ抜けている3社である三菱商事、三井物産、伊藤忠商事の特徴を見ていきたいと思います。
ちなみに5大商社の簡単なまとめについては以下の記事で書いていますので読んでいただけると嬉しいです。
三菱商事
三菱商事は三菱グループの中で「御三家」に属するトップオブトップ企業です。
そんな三菱商事の1Q決算は以下の通りです。
特に大きな増収要因となっているのは「金属資源」ですね。
これは豪州の原料炭事業における2炭鉱の売却が大きな要因です。
かつての総合商社のビジネスはトレーディングが中心でしたが、今は権益で稼ぐビジネスに変わりつつあります。
今回の炭鉱の売却も新たな資産に入れ替える投資に使用されるでしょう。
現代の総合商社のキーワードは「資源・非資源割合」だと思います。
ちなみに資源は「金属」や「エネルギー」を指します。
三菱商事の割合は以下のようになっています。(2023年度)
三菱商事は資源と非資源の割合がバランスが良いと思います。
それゆえ「総合力の三菱」と呼ばれているのではないでしょうか。
実は三菱商事は2015年度に最終赤字となっていました。
特に金属資源や過去の投資の減損が理由でしたが、それ以来事業ポートフォリオの見直しを行い、非資源分野を増やすことで今の割合になっていったのです。
三菱商事は中期経営計画で今後は再生可能エネルギーなどのEX関連事業の割合を高めるとしています。
今回原料炭の炭鉱を売却したのもEX関連投資へのキャッシュづくりと言えると思いますので中期経営計画を着々と進めていると考えていいと思います。
世界的にも脱炭素と言われていますので、三菱商事は未来を見据えていると考えています。
ちなみに1Q時点での進捗率は37%となっており、順調な事業を行っていますね。
まとめると、三菱商事は資源・非資源のバランスがよく、資源の中でも脱炭素を掲げて再生可能エネルギーへ成長投資を行うことで未来への種まきをしている企業といえると思います。
三井物産
三井物産は三井グループの中で「御三家」に属し、三菱商事と同様に日本を代表する企業です。
そんな三井物産の1Q決算は以下の通りです。
業績をけん引しているのは「金属資源」「エネルギー」ということがわかるかと思います。
実は三井物産は総合商社の中でも資源割合が高いことが特徴です。
「資源・非資源割合」は以下のようになっています。(2023年度)
資源が66%を占めており、資源価格の下落という事態になれば業績も下がりますが、逆に資源価格の高騰となれば大きく利益を伸ばすことができるのが三井物産です。
三井物産も資源価格が下がった2015年度は赤字決算となりました。
三菱商事は事業ポートフォリオの入れ替えを行いましたが、三井物産は無駄な事業を手放すことで贅肉をそぎ落とすという選択をしました。
その結果、コロナ禍の2021年度の決算では資源価格の高騰により、前年比172%増と大きな利益を上げることができています。
良くも悪くも「資源一本足打法の三井」と言えるのではないでしょうか。
ただ、三井物産も資源からの脱却を掲げており、「食・健康」事業に注力するとしています。
現在の日本は人口が減少していますが、世界を見ると人口爆発と呼べるほど増加が続いています。
人が増えると食糧問題が起こるので「食」分野に投資を行うのは間違っていないと思います。
また、先進国を中心に健康意識の高まりが続いており、食と健康を意識して事業投資を行うのは個人的に良いのではないかと考えています。
三井物産は事業を横展開し、組み合わせで領域を拡大していくという経営方針を持っています。
強みである資源分野の近接領域に少しずつ事業を広げていき、非資源分野の割合を高めていくという狙いだと思います。
まとめると、現在は資源からの利益が大きいが、今後は資源から少しずつ「食・健康」など非資源にも投資を拡大していく企業と言えるでしょう。
伊藤忠商事
伊藤忠商事はここ10年で非常に成長した企業です。
「三方よし」を企業理念に掲げ、川下でのビジネスで利益を上げている商社になります。
そんな伊藤忠商事の1Q決算は以下の通りです。
金属分野が一番大きな利益を上げているように思えますが、「資源・非資源割合」は以下のようになっています。(2023年度)
このグラフを見てもわかるように伊藤忠商事は非資源分野で成長した会社です。
高配当投資の書籍で、商社に投資するなら「三菱商事」「三井物産」だけでなく「伊藤忠商事」も入れるように書かれているのは非資源で稼げるビジネスをしているからなんですね。
三菱商事、三井物産が赤字決算となった2015年度に伊藤忠商事は赤字ではありませんでした。
資源はどうしても景気に左右される部分がありますが、非資源は大きく変動しません。
そのため、商社の中でも比較的収益が安定している企業と言えるでしょう。
中期経営計画でも「川下を起点にビジネスを創造する」としており、非資源を中心に投資を行っていくとしています。
特に三菱商事、三井物産と違い伊藤忠商事は「コンサル」や「小売」などにも注力するようです。
また、資源分野では再生可能エネルギーに投資を行うとしています。
伊藤忠商事は中国でのビジネスで特に成長した企業ですので現在の中国市況を見るとリスクはあります。
ただ、中国に依存しているわけではなく、非資源分野を中心に各国に分散してビジネスを展開しているので今後も安定した収益を計上してくれるでしょう。
まとめると、伊藤忠商事は非資源分野で安定的に稼ぎ、今後も川下分野で成長していく企業と言えるでしょう。
まとめ
5大商社の中でもトップ3に位置する三菱商事、三井物産、伊藤忠商事を見てきましたが、各社ごとに特徴があり将来像も違うことがわかると思います。
ただ、この3社で共通していることが配当方針です。
三菱商事、三井物産は累進配当を明言しています。
伊藤忠商事は累進配当を明言していませんが、配当の下限を設定しており、実質累進配当と言えます。
この3社は稼げるビジネスを展開し、稼いだ利益は成長投資と株主還元にきっちりと使う企業ですのでこれからも長期保有できると思います。
3社の違いを理解したうえで応援していきたいですね。