25期連続増配企業!三菱HCキャピタルの銘柄分析
概要と事業領域
三菱HCキャピタルは、三菱UFJフィナンシャルグループの傘下にある総合リース企業です。
2021年に三菱UFJリースと日立キャピタルが経営統合して誕生しました。
三菱UFJリースの強みであった大手企業向けの顧客基盤と、日立キャピタルの強みであった中小企業の基盤や海外事業が合わさったことで、事業領域が広がりました。
現在は7つの事業を行っており、国内外でバランスの良いビジネスを展開しています。
「カスタマーソリューション」は主に国内向けの事業で、法人・官公庁向けの「カスタマービジネス」やメーカーや代理店の販売を支援する「ベンダービジネス」を展開しています。
「海外地域」は言葉の通り、海外地域での事業のことで20か国以上の国と地域に顧客向けのリースやファイナンスソリューションを提供しています。
「環境エネルギー」は国内外において再生可能エネルギーに関する事業を行っています。
「航空」は言葉の通り、航空機に関する事業です。
航空機・エンジンリースを行っています。
「ロジスティクス」はグローバル物流を支えるコンテナや鉄道貨車のリース提供を行っている事業です。
「不動産」はホテルや商業施設など様々な資産に対応するファイナンスサービスを提供する事業です。
「モビリティ」は営業車や今後普及するEVに関する事業を行っています。
三菱HCキャピタルは一つの領域に偏っているわけではなく、事業を分散していますし、海外と国内の売上比率もほぼ半々なので地域的にも分散が効いているのが特徴です。(海外売上比率には海外地域だけでなく、航空、ロジスティクスを含む)
リースとは?
そもそもリースとはユーザーに代わってリース会社が販売会社(ベンダー)から機械・設備を購入し、これをユーザーにリース期間を通じて提供しリース料を得るものです。
上の図はJA三井リースのホームページから抜粋しましたが、三菱HCキャピタルも同じモデルでビジネスを展開しています。
リースの特徴として個々のユーザーの希望に沿った商品をリース会社が調達して提供する(オーダーメイド)ことが可能ということが挙げられます。
ただ、オーダーメイドするということはその商品が必要なくなったからといって、そこでリース料の支払いを打ち切ることはできないという特徴も持っています。
商品を使用する企業としてはリース会社を利用することで、以下のメリットがあります。
機械・設備の調達の資金的な負担がリース期間を通じて均等に分散する
銀行の借入枠を使わずに機械・設備を入手できる
固定資産税の申告・納付、保険料の支払い、物件の廃棄処分などの事務が不要になる
最近では「無駄な資産は持たない」という考え方が企業の主流になっていますのでリース業の需要は今後さらに高まると予想されています。
リース会社のビジネスモデル
営業資産残高の推移が重要
リース会社は金融業界に属するので景気に左右される業界です。
しかし、三菱HCキャピタルのEPSを見るとコロナ禍でもダメージが少ないことがわかります。
実はリース会社はストックビジネスを展開しているので、景気が悪くなっても大きくダメージを受けることが少ないのが特徴です。
リース会社の収入源はリース料です。
リース料は毎月定額で入ってくるので、ここで安定的に収益を得ることができるというわけです。
顧客が毎月リース料を支払うだけで、商品を利用できるのはメリットですが、リース会社としても毎月リース料収入を得ることができるのでメリットがあるのです。
ただ、リース会社は先に商品を顧客に渡して、その後でリース料を回収するので、商品・物件の取得資金はリース会社が別途に調達する必要があります。
そのため、リース会社の有利子負債は大きくなる傾向があるのです。
ただ、有利子負債が増えているということはリースする商品や物件の調達に使ったということなので、リースした商品や物件が増えたということになります。
このリースした商品・物件のことを「営業資産」、営業資産の積み増しを「営業資産残高」と言います。
リース会社の売上高は積み上がった営業資産残高(リース料収入を生み出すもの)が時間をかけて徐々に売上に振り替わるものなので、営業資産残高の増加を見ることが重要です。
営業資産というストックから収益が上がっていくので、典型的なストックビジネスであるといえます。
そのため、リース会社の業績を判断するためには営業資産残高を確認することが重要です。
仮に新規契約がストップしたとしても、営業資産があるかぎり売上高や利益はすぐにゼロにはなりません。
そのため、コロナ禍でも比較的安定したビジネスを行うことができたというわけです。
つまり、営業資産残高の増加が続いている間は、将来的に増収増益が見込める可能性が高いので営業資産残高の動向こそ、リース会社の最重要指標だといっていいと思います。
営業CFの赤字は健全な証拠
もう一つリース会社の業績を確認するのに重要なのはキャッシュフローの見方が普通の会社とは異なるということです。
通常の事業会社であれば、営業CFの赤字は資金繰りの悪化につながる要注意事項ですし、もし何期も連続して営業CFの赤字が続く会社があれば、倒産の懸念も考えられますよね。
ところが、リース会社は営業CFの赤字が頻繁に発生しています。
三菱HCキャピタルも営業CFは赤字は多く、その年の財務CFは黒字という状況が多いこともわかります。
もちろん三菱HCキャピタルが赤字続きでやばい会社だというわけではありません。
これには理由があります。
リース取引では物件の購入が先で後からリース料が入ってくるので、資金繰り的にはどうしてもお金が先に出ていくようになっています。
商品・物件の取得資金は借入で調達するので、財務CFはプラスになります。
また、営業資産残高の増加は営業CFのマイナス要因になるので営業CFの赤字と財務CFの黒字が常態化するというからくりになります。
難しい話になってしまいますが、営業資産残高が増え続けているかぎり、営業CFはマイナスとなりやすいということです。
しかし、営業CFの赤字は営業資産残高が増えていることの証拠です。
また、営業資産残高が増えているということは将来の収益源が増えていることを意味するので、むしろリース業として成長を続けていることの証といえるでしょう。
三菱HCキャピタルの営業資産残高は順調に増え続けているので、まだまだ増収増益が期待できる企業だと思います。
三菱HCキャピタルの直近決算と中期経営計画
24年3月期決算
ではここから三菱HCキャピタルの直近決算について見ていきたいと思います。
24年3月期は増収増益となり、過去最高益を更新する結果となっています。
セグメント別の売上を見てみると海外地域の貸倒関連費用の増加などマイナス要因はあるものの、航空機リースの伸長などの要因により増加しています。
海外地域のマイナス要因はコロナ化で好調だった海運セクターが今期は悪化し、貸倒費用が増加したということです。
コロナ禍で海運業界は運賃の歴史的な高騰で好業績を上げていたのですが、物流が安定した現在はその恩恵が剝落したということになり、三菱HCキャピタルにも波及したと言えそうです。
一方で航空事業はコロナ禍からの市場回復により、航空機リース案件の増加やリース料収入の増加により大きく伸長しました。
三菱HCキャピタルの保有航空機(営業資産)も着々と増えているので今後も安定したリース料収入が期待できそうです。
来年度は海外地域の貸倒費用は減少しますし、航空機リースも順調に成長すると見込まれていますので、さらに最高益を目指せる環境にあるのではないでしょうか。
中期経営計画
三菱HCキャピタルの中期経営計画を見てみると、今後営業資産を増やすセグメントとして「航空」「環境エネルギー」「不動産」「モビリティ」を挙げています。
特に資産を増やし、純利益も各段に高めるとしている「航空」には注目していきたいです。
「海外地域」と「ロジスティクス」を見ると資産は横ばいですが、純利益は格段に高めるとあるのでこのセグメントで安定した収益基盤を構築し、航空機や環境エネルギーなどでさらなる飛躍を目指すということになると思います。
この中期経営計画は25年度を最終年度としていますが、実際に航空機リースは上述したように増えています。
しかし、環境エネルギーやモビリティはあまり貢献できていないという懸念点はあるのでここは注意が必要でしょう。
ただ国内事業である「カスタマーソリューション」はきちんと営業基盤を構築してますし、主に海外事業である「航空機」は成長著しいので国内外できちんと稼いでいる企業と言えるのではないでしょうか。
特に国内は大企業から中小企業まで幅広い顧客基盤を持っていますので、今後、環境配慮型の製造機械や建設機械の置き換えがあった場合、その波に乗ることが期待できます。
ひとつ懸念点を上げると、金利の上昇には注意が必要です。
上述した通り、リース会社は借り入れをして物件・商品を購入しそれを顧客にリースするというビジネスモデルです。
そのため、金利が上がると借入金の負担が増すことになります。
リース会社全般に言えますが、今後は金利上昇のコストを吸収する対応が必要になるでしょう。
個人的には三菱HCキャピタルは事業セグメントが分散されていますし、リース料の調整などにより金利上昇分のダメージを抑えることができると思っています。
また、三菱HCキャピタルは営業資産残高が増えていますし、今後も増配が期待できるのでこの点を安心材料としてさらなる成長を期待しています。