研究
先日、クスモトさんが訪ねてきました。
お隣に住んでいるクスモトさんは、研究所で働いています。
クスモトさんは現在、研究の一環で、10ml程度の小瓶に入った水と一緒に生活しています。
実験のひとつとして、毎日、小瓶の中の水におはなしの読み聞かせをしているのだそうです。
私を訪ねてきたクスモトさんは、風邪を引いていました。
クスモトさんに頼まれ、私は小瓶の水に、お話を聞かせることになりました。
風邪が治るまで、代役です。
読み聞かせの時間帯は、特に決まりはないとのことだったので、仕事が休みだった私は、昼食後に行うことにしました。
今日のおはなしは、「赤ずきん」です。
……むかしむかし、あるところに、赤ずきんと呼ばれる女の子がいました…
……赤ずきんは、森の中で、おおかみと出会います…
…お嬢さん、どこへいくのですか
…おばあさんのところに、お菓子とワインを届けに行くの…
…………………………
……おばあさん、どうしてそんなに口がおおきいの……
それはね…………
けして長いおはなしではないので、朗読の時間はすぐに終わりましたが、読み聞かせをするのは初めてなので、とても緊張しました。
三日後、再びクスモトさんが訪ねてきました。
手に、もうひとつ小瓶を持っていたので聞いてみると、音楽家の友人に預けていたもので、毎日、ピアノの音を聞いた水なのだそうです。
朗読のお礼にと、クスモトさんからカステラをいただきました。
無事に代役が果たせて、よかったです。