受け身を取りながらの手裏剣打ち 解説

こんな練習をすることがある。
先に言っておくがこれはどこの流派の稽古でもない。私が自分自身の感覚のもとで練習をするためのものである。

私が言う「受け身」というのはこの前転(でんぐり返し)のような動きである。受け身と聞くと柔道のような畳をバーンと叩くものを想像する方もいると思うが、この前転のような動きも受け身の一つである。
どちらかというと合気道の受け身に近いのかもしれない。
柔道の受け身も合気道の受け身もそれぞれが立派な「受け身」という名の技であると私は考えている。
少々話しを脱線させるが、受け身は立派な技であり「最高の護身術」であると私は考えている。護身術に興味を持った人がまず目を向けるのが、腕をつかまれた時の対処法だったり、後ろから抱き着かれた時の撃退法だったりする。しかし、考えてみてほしい。あなたが今までの人生でこのようなトラブルにあいケガをした数と、躓いて転びケガをした数、どちらが多いだろうか。そして、これから年齢を重ねたときにどちらの危険がより身近になるのだろうか。未然の危険ばかりを天秤に掛けることはナンセンスかもしれない。しかし、咄嗟に転ぶ危機は誰であろうと常にある。だからこそ、もし私が護身術を習いたいと相談されたらまずは受け身をしっかり学ぶことを勧めている。
この受け身だが、やり方や練習方法はいくつもある。畳を叩くのは接地面積を大きくして衝撃を和らげるためであり、このように転がるのは衝撃を逃がすためである。一見すると方法は違えどその目的は同じく「ケガをしないこと」である。

この練習は受け身をメインにした練習であり手裏剣はオマケ程度に考えている。おそらくこの映像だけを見れば「相手の攻撃を避けながらかっこよく手裏剣を打つ練習」がしたいのではないかというように見えるかもしれない。手裏剣が刺さるのはただの偶然であり、それを目的とはしていない。
受け身を取るためにいかに身体を操作するべきかを主題としている練習だ。

具体的に言うと、最初の前転を含めてすべての動きに対して足で地面を蹴らないように意識を持つ。マット運動の飛び込み前転を繰り返したらこの狭いカメラのフレームからあっという間にはみ出してしまう。
足で地面を蹴らずに回るから結果的に小さく回ることが出来る。小さく回れば、転がった先に人や物があることも少ないからより安全であるという考え方が根底にある。そのためにはまず、身体の前に球体がありそれを抱え込むイメージを持つ。慣れてきたら球体をどんどん小さくする。身体はその小さい球体の周りを回るだけだ。
身体をわずかに浮かせれば地面との間に空間が出来る。その空間の中に自分の身体を滑り込ませるように回ると小さく回ることが出来る。順番としては右手の指先から地面に接地して手首、肘、右肩、が入り込んでく。そして背中が斜めに接地して左腰のラインまでが地面に接して転がり足に戻る。

この空間に一番最初に入り込むのが指先なのだ。
もちろん、受け身は手を振るのが目的ではないから手をつかなくとも受け身が出来るようにするための練習は必要だ。その前段階の練習として予備動作に鋭く手を振れば回転はしやすくなる。鋭く手が振れている指針を持つためにたまたま手裏剣を持っていてそれが飛んでいるだけなのだ。
後ろに回るときも同様で、今度は後方に玉をイメージしてその周りを回る。身体は玉の外側を回るので地面の上を接して小さく回ることが出来る。
回るべきところを感じる練習として右手を左下から右上に向けたこれから回りたい空間のラインをなぞる。その時に手にした手裏剣がたまたま飛んでいるだけなのである。

手裏剣が同じようなところに揃って刺さっているのは指針として同じ方向を見ていたからである。一か所を見ていれば目も回りにくいし自分がどこにいてどんな状態にあるかを把握しやすくもなる。
この受け身は攻撃を想定したものではないが、相手は想定している。
的方向に相手がいて、そこからはなるべく目を離さないようにしている。
想定はしていないが、もしも攻撃があったら避るという意識は常に持っている。
だからこその玉のイメージなのだ。常に転がり続ける。動き続ける。転がれば不安定な状態だが、不安定を連続させることで前後左右に自由に動くことが出来る。つまり動き続けることで安定しているように見える状態を求めての練習でもある。
私はこのように、直接的に関係なくとも「目的とする身体の動きが出来ているか」を確認することに手裏剣を使うこともある。これは誰に言われたことでもないが、手裏剣を稽古に取り入れている人の中には同様に手裏剣を身体の動きの確認に使っているであろう方も多いのではないかと感じる。身体操作の延長がなければ手裏剣は上手く飛ばないということは逆説的にこのような使い方も出来る。もっと言えばただたんに私自身が本題ではなくともそうそう手放したくないくらいに手裏剣が好きなだけであるが。

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