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失敗や問題行動の原因を探しても意味はない

介護士として働いていると、日々さまざまな出来事に出会います。入居者様と接する中で、思いもよらない行動や、予期せぬトラブルが起きることもあります。それは、認知症によるものだったり、身体的な不調からくるものだったり、または感情の起伏によるものかもしれません。
 
そんなとき、私たち介護士はよく「なぜこの行動が起きたのか?」「どこで失敗したのか?」と考えます。でも、経験を積む中で私は気づいたのです。原因を探すことに囚われるよりも、どうすれば次に繋げられるかを考える方が、はるかに有意義だということに。
 
今回は、私が日々のケアを通じて感じた「失敗や問題行動の原因を探すこと」の限界と、それをどう乗り越えるべきかについてお話ししたいと思います。
 

原因探しが意味を失うとき


たとえば、ある日こんな出来事がありました。
 
いつも穏やかで優しいAさんが、突然怒りを爆発させてスタッフに厳しい言葉を投げつけたのです。その日は特に変わったこともなく、いつも通りの一日でした。スタッフ全員が「どうして急に?」と驚き、原因を探そうとしました。体調の変化?言葉のかけ方?それとも過去の記憶が呼び覚まされたのか?
 
しかし、どれだけ話し合っても、はっきりとした答えは見つかりませんでした。そして気づいたのです。原因を探し出すことが、必ずしも解決には繋がらないということに。
 

行動の背景を理解するための視点


もちろん、行動の背景を知ることは大切です。しかし、それ以上に大事なのは「その人がどんな気持ちだったのか」「今後どうサポートすれば良いのか」を考えることです。
 
介護の現場で大切なのは、過去を掘り下げることではなく、今この瞬間に目を向けることだと私は思います。Aさんの怒りも、原因を探しすぎるよりも、その怒りが示していた感情やニーズを汲み取ることが優先されるべきでした。
 
不安だったのかもしれない
自分の意見を聞いてほしかったのかもしれない
身体の不調を訴えていたのかもしれない


これらの「かもしれない」に寄り添うことが、介護の本質ではないでしょうか。
 

「解決」ではなく「共感」を


失敗や問題行動が起きたとき、私たちはつい「解決」しようと躍起になります。しかし、ときには解決そのものが難しい場合もあります。そういうときこそ、私たちがすべきなのは「共感」だと感じます。
 
介護の現場では、入居者の方々の感情が大きな波のように変化することがあります。それを抑え込むのではなく、一緒にその波に揺られる覚悟を持つことが重要です。原因を探すよりも、その瞬間にできる最善の対応を考えることで、問題行動が「次の安心」に繋がることもあるのです。
 

職員間の協力が鍵


また、現場では職員同士の連携も非常に重要です。問題が起きたときに一人で抱え込むと、「自分のせいでこうなったのでは?」と責任を感じてしまうことがあります。しかし、それは決して一人で解決すべき問題ではありません。
 
むしろ、チーム全員で対応を話し合い、それぞれの視点を共有することで、新たな気づきや解決策が生まれることが多いです。原因探しに固執するのではなく、どうすればチームとして前に進めるかを考えることが、入居者の方々の安心にも繋がるのだと思います。
 

「失敗」ではなく「学び」として捉える


失敗や問題行動を避けることはできません。でも、それをただの「失敗」として終わらせるのではなく、「学び」として捉えることが重要です。
 
たとえば、先ほどのAさんの件で私たちが学んだのは、「いつも穏やかな方でも、不安を感じる瞬間がある」ということでした。そして、それを踏まえて、普段から声掛けをもう少し丁寧にしたり、気になるサインを早めにキャッチする工夫を取り入れるようになりました。
 
失敗は、決して終わりではありません。それは次のケアをより良いものにするためのきっかけなのです。
 

介護における「意味」のある考え方

最後に、私が大切だと思うのは、「原因探し」に囚われることなく、常に前を向いて考える姿勢です。問題が起きたときに「どうしてこうなったのか」と過去にフォーカスするのではなく、「次にどうすれば良いか」を考える。これが、入居者の方々に安心を提供するための鍵だと思います。
 
介護の現場では、予測できないことが毎日のように起こります。その中で、完璧を求めるのではなく、不完全な中で最善を尽くす。その積み重ねが、私たちの仕事の本質だと思います。
 
このブログが、同じように介護の現場で働く方や、家族介護をされている方にとって少しでも参考になれば幸いです。失敗や問題行動は避けられません。でも、それをどう捉え、次にどう活かすか。それこそが、私たちが本当に向き合うべき課題なのだと思います。
 
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
 

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