「頑張ったね」の言葉が相手の心を傷つけている
みなさん今日は、私が介護の現場で感じた「頑張ったね」という言葉について考えてみたいと思います。この一言、私たちがつい何気なく口にしてしまいがちですが、実は時に相手の心を傷つけてしまうことがあるのです。
「頑張ったね」は褒め言葉のはずなのに
私たち介護士は、入居者様がリハビリや日々の生活で努力されている姿を目にします。その姿に感動し、自然と「頑張ったね」と声をかけることがあるでしょう。
励ましや感謝の気持ちを込めて伝えるつもりのこの言葉。しかし、受け取る側が必ずしもそう感じるとは限りません。
例えば、ある入居者様が足のリハビリを終えた後、私は「今日も頑張りましたね」と声をかけました。
その方は微笑んでいましたが、その後「もう十分に頑張ったのに、まだ頑張らなきゃいけないのかと思うと苦しい」と話されました。その瞬間、私は言葉の力と、言葉の持つ重さに気づかされたのです。
頑張り続けることの辛さ
「頑張ったね」という言葉は、相手が今まで努力してきたことを認め、称賛するものです。しかし、その言葉が重くのしかかることがあります。
特に高齢者や病気で苦しんでいる方にとっては、すでに十分に頑張っているという気持ちが強いからです。
老人ホームに住んでいる方々は、さまざまな人生の経験を経て、今の場所にたどり着いています。
年齢や体力の限界に向き合いながら、日々の生活を送っている彼らにとって、頑張り続けることは時に辛いものです。
それにもかかわらず「頑張ったね」と言われると、「まだ頑張らなければならないのか」というプレッシャーを感じることがあるのです。
認知症の入居者様にとっての「頑張る」という言葉
特に認知症の入居者様にとって、「頑張ったね」という言葉は、時に混乱を招くことがあります。
彼らは日々の生活や、日常的な行動にすら努力が必要で、簡単なことすらうまくできないことに対して、自分自身を責めることが少なくありません。
そのような状況で「頑張ったね」と言われると、「何を頑張ればよかったのだろう?」と感じ、さらに自己評価を下げてしまう場合があるのです。
以前、ある認知症の女性が食事を終えた時、私は「今日も頑張って食べましたね」と言いました。
すると、その方は困惑した表情で「私は何を頑張ったの?」と尋ねてきました。その瞬間、私は自分の言葉がその方を混乱させてしまったことに気付きました。
認知症の方々にとっては、日々の些細な行動一つ一つが大変な努力を要するものであり、「頑張ったね」という言葉が逆にプレッシャーを与えることがあるのです。
相手の心に寄り添う言葉選び
それでは、どのような言葉が相手の心に寄り添えるのでしょうか?「頑張ったね」ではなく、もっと優しい、相手を受け入れる言葉を選ぶことが大切です。
例えば、「あなたのおかげで助かりました」とか「今日もありがとう」という言葉は、相手を励ましながらも、無理に頑張らせるニュアンスがありません。
これらの言葉は、相手がすでに十分に努力していることを認め、感謝や安心感を与えることができます。
また、「ゆっくりでいいですよ」や「自分のペースで進んでいきましょう」というように、相手のペースを尊重し、無理をさせないことも大切です。
高齢者の方々は、体力的にも精神的にも限界を感じやすくなっています。そんな彼らに対しては、励ますよりも、支え、共感することが大切なのです。
介護士としての学び
私たち介護士は、日々入居者様と接する中で、言葉の使い方に敏感であるべきです。良かれと思ってかけた言葉が、時には逆効果を生むことがあることを学びました。
言葉は相手を励ますこともできれば、傷つけてしまうこともある。だからこそ、相手の立場に立って、相手の気持ちを考えながら言葉を選ぶことが重要です。
特に、高齢者の方々は人生の中で多くの経験を積み重ね、たくさんの「頑張り」をすでに成し遂げてきました。
彼らにとって、今はゆっくりとした時間を過ごすべき時期です。ですから、「頑張ったね」と言うよりも、「今まで本当にたくさん頑張ってきましたね」と過去の努力を称える言葉をかける方が、相手の心に優しく響くのかもしれません。
さいごに
「頑張ったね」という言葉は、一見するとポジティブで、相手を励ますように思えるかもしれません。
しかし、時にはその言葉が相手の心に負担をかけることがあります。特に、老人ホームで生活する高齢者や認知症の方々に対しては、無理に頑張らせるのではなく、彼らの努力を尊重し、寄り添うことが大切です。
介護士として、私はこれからも言葉の力を慎重に使いながら、入居者様の心に寄り添っていきたいと思います。
言葉は人を元気づけるだけでなく、時に傷つけることもあります。だからこそ、相手の状況や気持ちを理解しながら、心からの言葉を届けたいと思います。
皆さんも、日常生活の中で「頑張ったね」と声をかける際に、少しだけ立ち止まって考えてみてください。
その言葉が本当に相手の心を軽くするものなのか。それとも、プレッシャーや負担をかけるものなのか。
言葉の力を正しく理解し、相手に寄り添う言葉を選ぶことで、お互いの心がさらに豊かになるのではないでしょうか。
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