必要なのに「おかしい」と主張できない私
私は老人ホームで介護士として働いています。日々の業務の中で、入居者の方々と直接関わる仕事はとてもやりがいがありますが、一方で、介護の現場にはときに「これで本当に良いのだろうか」と感じる場面も少なくありません。
私たちの仕事は一人ひとりの入居者様の心身の状態に応じて、最適なケアを提供することを目指しています。
けれども、介護の現場では「時間」「人手」「予算」といった現実的な制約があり、必ずしもすべてを理想通りに進められるわけではありません。
そんな中、日々の仕事を通じて「これは本当は違う」と感じることがあっても、それを素直に「おかしい」と主張するのは難しい――そう感じる場面が多いのです。
「おかしい」と感じるのは、愛情から生まれる思い
私が働く施設では、入居者様のケアが円滑に進むよう、さまざまなルールや手順が定められています。
例えば、食事の時間や入浴のタイミング、リハビリの時間など、日々の生活リズムが細かく管理されていることが多いです。
こうした管理は、施設運営やスタッフの働きやすさを考えた上でのものであり、必要不可欠だと理解しています。
しかし、時にはそのルールが入居者様一人ひとりの個別のニーズや心地よさを無視しているように感じることがあります。
ある日のことです。私の担当する入居者様が、いつも楽しみにしているお散歩の時間が、他の予定と重なって短縮されることが決まってしまいました。
その方にとってお散歩は心身ともにリフレッシュできる大切な時間で、心待ちにしているのが日々の様子からも伝わってきます。
けれども、他の業務との兼ね合いで、その時間が削られることを「仕方がない」と片づけてしまうのは、どこか違うのではないかと感じました。
ですが、日々の業務の流れに沿って進めるべきだというルールがある以上、私一人で「おかしい」と声を上げるのはためらわれました。
言いたいけれど言えない…現場の葛藤
このような場面は、実は介護現場では少なくないのです。
例えば、認知症の症状が進行している方が、不安を抱えて過ごす時間が増えているにもかかわらず、十分な時間を取ってあげられないこともあります。
時間の制約や人手不足など、現実的な理由があることは理解していますが、「この人にとって、今一番必要なケアは何だろうか」と考えるとき、その答えは決して「スケジュール通りに進めること」ではないと感じることもあります。
しかし、現実的には、「おかしい」と感じたことを現場で声に出すのは容易ではありません。
私たち介護士は、現場の限られた資源の中で効率的にケアを提供することを求められています。
そのため、チーム全体で円滑に動くためには、決められたルールや手順に従うことが重要だと教えられます。
少しでも現状を変えるために意見を出したいと思っても、職場の雰囲気やチームの均衡を保つために、自分の考えを飲み込む場面が多いのです。
入居者様の「その人らしさ」を大切にするために
介護の現場では、入居者様の「その人らしさ」を大切にすることが理想とされています。実際、私もその理想に共感し、介護という職業に就きました。
ですが、現実には「その人らしさ」を尊重することが難しい場面も多くあります。
忙しさや決められた流れを優先するあまり、入居者様一人ひとりが本当に心から快適に過ごせているのかどうか、考える余裕がなくなってしまうこともあるのです。
そんな時に、心の中で「これで本当に良いのだろうか?」という疑問が生まれるのですが、それを「おかしい」と主張することはなかなかできません。
何か問題があっても、一歩踏み出して変えるのは容易ではなく、現場の負担やコストが増える可能性があるため、どうしても言い出しにくいのです。
「おかしい」を「改善」に変えるために
私たちが現場で感じる「おかしい」という思いは、ただの不満ではありません。
むしろ、それは入居者様への愛情から生まれる気持ちであり、「もっと良い環境を提供したい」という願いです。
それを前向きに変えていくためには、個人の力だけではなく、職場全体での取り組みが必要だと感じています。
そのためにまず、私たち現場の介護士同士で率直に意見交換できる場が必要です。
自分が抱えている悩みや感じている「おかしい」を共有することで、お互いの考えを理解し、解決策を見つけ出す手助けになることがあります。
忙しい現場の中でも、少しでも意見を出し合える機会を作り、現場での課題を共有していくことで、少しずつでも改善が見えてくるかもしれません。
読者の皆さんへ
私たち介護職に限らず、皆さんも日々の生活や仕事の中で、「おかしい」と感じることがあるかもしれません。
でも、それを声に出すのは簡単ではありませんよね。
特に、周りの期待や自分の立場を考えると、つい遠慮してしまい、結局そのままになってしまうことが多いと思います。
しかし、「おかしい」と感じたことには、必ず何か理由があります。
その思いを無視せず、自分の中で大切に育てていくことで、いつか現状を変えるための力になるかもしれません。
小さな「おかしい」の声が集まることで、少しずつ改善が進み、より良い環境が作られていくはずです。
おわりに
介護の現場で働く私にとって、「おかしい」と感じる場面は避けて通れないものです。
でも、その「おかしい」をいつか「改善」に変えられるよう、日々の仕事に向き合い、心の中で声を大切にしていきたいと思っています。
「必要なのに『おかしい』と主張できない私」…それはきっと、現場で奮闘する私たちの多くが感じる共通の思いではないでしょうか。
お互いに支え合い、少しずつでも、より良い環境を目指して進んでいければと思います。
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