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当たり前なことは何一つない
私は介護士として、毎日たくさんの高齢者の方々と向き合っています。
この仕事をしていると、「当たり前」だと思っていたことが、実は何一つ当たり前ではないのだと痛感する場面に何度も出会います。
朝、目が覚めること。
自分の力で布団から起き上がること。
食事を口に運び、噛んで飲み込むこと。
トイレに行きたいと感じ、それを自分で伝えること。
家族と会話を交わし、笑い合うこと。
私たちにとって何気ない日常のひとコマが、ある人にとってはもう叶わないことだったり、今日もなんとかできるかもしれないと一生懸命に努力することだったりします。
だからこそ、私は日々の仕事の中で、入居者様お一人おひとりの「今、この瞬間」を大切にしたいと思っています。
「できていたこと」ができなくなる悲しみ
介護の現場では、「できていたことができなくなる」瞬間に立ち会うことが多くあります。
長年、料理をしていた方が包丁を握れなくなったとき。
毎日欠かさず日記を書いていた方が、字を書けなくなったとき。
家族の顔と名前が分からなくなったとき。
そんなとき、ご本人はもちろん、ご家族の方も大きなショックを受けます。
「どうして?」
「ついこの間までできていたのに…」
「もっと何かできたのではないか?」
そう思うのは、ごく自然なことです。
私たち介護士も、そうした場面に直面するたびに胸が締めつけられます。
でも、たとえ「できなくなったこと」が増えても、「その人らしさ」まで失われたわけではありません。
だからこそ、「今できること」に目を向け、一緒に喜びを分かち合いたいのです。
たとえば、料理ができなくなった方には、食材を触っていただくだけでもいい。
字が書けなくなった方には、一緒に新聞を読んだり、思い出を語っていただくだけでもいい。
名前が出てこなくても、表情や雰囲気で気持ちを感じ取ることができる。
大切なのは、「できないこと」にばかり目を向けるのではなく、「できること」を一緒に見つけていくこと。
それが、私たち介護士の大きな役割のひとつだと感じています。
「ありがとう」の重み
この仕事をしていて、一番心に響くのは、入居者様やご家族の方からの「ありがとう」という言葉です。
「お世話になります」ではなく、「ありがとう」。
この違いはとても大きいと感じます。
介護の仕事は決して楽ではありません。
体力的にも精神的にも負担が大きく、忙しい毎日の中で、ふと「私のしていることは意味があるのだろうか?」と考えることもあります。
でも、入居者様が手を握りながら「ありがとうね」と微笑んでくださると、その一言だけで疲れが吹き飛びます。
ご家族の方が「母を大切にしてくれてありがとう」と涙ながらに伝えてくださると、「この仕事を続けていてよかった」と心から思えます。
「ありがとう」という言葉は、私たちにとって何よりの励みです。
そして同時に、私自身もこの仕事を通じて、たくさんの「ありがとう」を伝えたいと感じています。
「普通の生活」を支えるということ
介護の仕事は、「特別なこと」をするわけではありません。
むしろ、「普通の生活」を支える仕事です。
おいしくご飯を食べること。
気持ちよくお風呂に入ること。
トイレに行くこと。
楽しくおしゃべりすること。
こうした何気ない日常が、入居者様にとってはかけがえのないものです。
そして、それを支えることが、私たち介護士の役目です。
「特別なことをしなくてもいい」
「今できることを、その人らしく続けてもらう」
そんな気持ちで日々の介護に向き合っています。
「当たり前」なんて、何ひとつない
介護の現場では、「当たり前」だと思っていたことが、どれほど貴重なものかを実感します。
自分の足で歩くこと。
家族と会話をすること。
おいしく食事をとること。
夜、ぐっすり眠ること。
私たちが何気なく過ごしている日常も、いつかは「当たり前ではなくなる日」が来るかもしれません。
だからこそ、一つひとつの瞬間を大切にしたい。
そして、入居者様にとっての「大切な時間」を、少しでも穏やかで幸せなものにできるよう寄り添いたい。
介護の仕事は大変だけれど、それ以上にやりがいのある仕事です。
入居者様が「今日もいい日だった」と思えるように。
ご家族の方が「安心して任せられる」と感じられるように。
そして、私自身も「今日も誰かの役に立てた」と思えるように。
これからも、「当たり前ではない日常」を、一つひとつ大切にしながら、介護の仕事に向き合っていきたいと思います。
さいごに
介護の仕事をしていると、時には辛く、時には迷うこともあります。
でも、ふとした瞬間に、入居者様の笑顔や「ありがとう」に救われることが何度もあります。
もし、今介護の仕事に悩んでいる方がいたら、伝えたいです。
「あなたのしていることは、決して無駄ではない」と。
そして、ご家族の介護をしている方にも伝えたいです。
「一人で抱え込まないで、頼れる人を頼ってください」と。
介護は一人でするものではなく、みんなで支え合っていくものです。
だからこそ、一緒に考え、一緒に乗り越えていきましょう。
今日もまた、入居者様の「当たり前ではない日常」を支えながら、私たちは歩んでいきます。
最後までお読みいただきありがとうございます。