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小太刀の女


たかさきかずのしん
御老公様が来るのを気付かれたのかも知れません

父の命令で御老公様をお連れしようと

5日前榊原たてわき様のお屋敷に目付け横山が押し入り 藩の御用金で私腹を肥やした疑いで拉致された
父が そんな事をするはずがない 
これは 誰かの罠だ

罠はふせげません

御老公がこちらに向かっていると
鉄砲を仕掛けたのだろう
榊原の自供所があれば御老公がきても怖くない

水戸の御老公を敵に回すだけが能ではない
やっとそれに気付きましたな

板子1枚下は地獄という我々の信頼を
御用金をお城に納めてから貧乏になりまさして身分を忘れて 殿様側室のそなたに会いに高千代が世継ぎとなれば久留米藩は兄千坂のもの筑後屋五右衛門のものに

高千代

高千代どのが世継ぎに

なぜ鶴丸ではないのだ 鶴丸様は病弱でございます 高千代どのは半年年上でございます これが1番の理由でございますが我が藩の財政赤字は3万両近くに達していましたが無利子で融資をしてくれた筑後屋に融資を断わられたならば藩の財政は膨大な赤字でお国がえは必定でございます

榊原はどこだ
病気でございます
榊原の意見を聞くまでは決定せん

書く気になったか?

覚えのない自供書など書けぬ
自供書を書けば家名だけは残してやる


娘の弥生が可愛くはないのか?
おのれ 必ず書かせてやる!!

自供書を書けば嫌と言うほど食わしてやるぞ

父上はどこだ!!
知らん
帰って津坂様に言うがいい 
我らには先の中納言水戸光圀様が付いている

たとえ少人数だろうと津坂の不正に立ち向かうのです

久留米藩の内情ちと面倒なようじゃな

弥七か どうだった?



弥生さんの親父さんのほうがかんばしくないようで
それだけ津坂が悪賢いと言うわけだな
ここはあぶのうございます 丁度いいところを見つけたんでそちらのほうにおおつりを

どうだ 書く気になったか?

書かねば娘はどうなるかわからんぞ
使途不明の金があったそれは自責家老であり勘定奉行である榊原たてあきの責任 遣いこをんだのはたてあき自身 

娘を助けなければならぬのだ

娘を助けなければ 
娘を助けなければ

どうだ!!
書け!!


身に覚えのない事は書くわけにまいらぬ

あれれれ!?
お役人さん!?

かってに押印を!?

悪い奴だ!!

本人はもはや字を書く事もままなりません 
血判にて謝罪をしております

殿がご信用なります 榊原たてあきとはこのような男でございます
その男1人がおしている鶴丸ぎみをこれでも世継ぎとしてお届けなされますか?

高千代どのも鶴丸どのもまぎれもなく殿の子 
丸く収まる事が最良かと

では明日の届け書には高千代どのを世継ぎになされますな

わかった

では榊原の処分でございますが

いや まて 世継ぎが決まったら
ゆっくり聞きたい事がある

決まったのですね 兄上
喜ぶのはまだ早い
筑後屋茂右衛門の事 よろしく頼む

はい 

転んでもただおきぬやつ
表向きは無利息となっているが
元金の倍近くに増えておる

ふふふふ
知っておりませんよ
兄上だったその中から ねこばばを 
他の重役達を勧誘するには金がいる 
そんな事はどうでもいいんです
高千代さえ藩主になってくれれば

慌てるでない

御老公が来るならばていちょうにお出迎えするのみ

すべてが遅すぎた
はははは
かえってはくがつくというものだ

なるほど 相当な悪だな!!


そのうちぎゅッと言わせてやる!!

誰も来ませんね

かつぎだしてうってでると宣言しているのに静かすぎる
まさか
そんな事はない
千坂の言う事に黙って従う人ではない

御老公様が小屋にいない
本当に御老公様は我々の味方なのか?

頼りないなぁ
やはりしっかりしているようで女だ

高千代どのに決まった
父上が自供したそうだ
決まった以上
我々下級武士にはなんの関係もない

俺は抜ける


残ったのは4人か
かずのしんどうする

いままでお前の指示に従って来た 
4人になってどうしろと言うのだ
ある 榊原殿を救い出す手が

曲者だ!

なかざわさんの話は聞こえてました
父上の自供書は嘘でしょう

藩論が決まったのなら 前とは違います
あなたのお考え通りになさって下さい
私に手を引けと言うのか
はい
命をくれと言われればいつでも捨てる
いけません
かずのしん様には生きていてほしいのです

ご隠居 これは城の物ではありませんよ
ご隠居を狙ったと言う証拠にはならねえ
それに藩論が決まっちまいました

高千代ぎみでさぁ

自分の判断で決める事にします
榊原殿にはかかわりない事です

奴は弥生さんが好きなんです
男は好きな女のためにだけ働く時もある
あなたはあいつが嫌いですか? 

好きです
だったらなんでそう言ってるあげなかったのです
あいつは戻ってこないかも知れませんよ


すると すべては筑後屋のさしがねと言う訳か
いっかいの町人がいっかいのすべてを動かす力と言うのは恐ろしいものじゃなぁ

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