0061.黒後家蜘蛛の会
好きな作家の中に、アイザック アシモフがいる。アシモフは SF作家であり、ミステリ小説も書いている。博士号を持ち科学解説書も執筆している。ミステリ小説の中に「黒後家蜘蛛の会」という ”安楽椅子探偵もの” の連作短編シリーズが、1巻から5巻まである。
そして、たぶん、俺がアイザック アシモフを知ったのは、同作を原作としたラジオドラマ「黒後家蜘蛛の会」でだと思う。いま、ネットで調べると、1981年の NHKラジオで放送されたということになっている。俺は TBSラジオだと思っていたがどうやら違うらしい。第2話から最終話までカセットテープで録音した。いまでもロフトの段ボール箱の中にある。中島みゆきのオールナイトニッポンのカセットテープ 1年半ぶんもある。聴けるかどうかはわからないけれど。
第1話を録音していなくて、第2話の頭から全部録音している。毎日同時刻放送だったか、毎週放送だったか覚えていないが、毎日同時刻だったような気がする。なんでラジオドラマ「黒後家蜘蛛の会」のことを知ったのだろうと思う。放送を知ったうえに録音までしているというのは、このときすでにアシモフという作家を知っていたからなんだと思う。
黒後家蜘蛛の会1、 1982年02月19日 12版.
鋼鉄都市、 1985年11月30日 10刷.
ファウンデーション、1986年01月15日 3刷.
購入したアシモフの文庫本の奥付を見てみるとこのようになっている。ミステリの「黒後家蜘蛛の会1」のほうが、ロボットものの「鋼鉄都市」や、「ファウンデーション」シリーズよりも先だった。むろん、発行年と、俺が購入した年が同じとは限らないが、たぶん購入した順番はこうだと思う。
ラジオドラマ「黒後家蜘蛛の会」の放送が 1981年らしいので、辻妻が合う。やはり、ラジオドラマを聴いて、「黒後家蜘蛛の会1」を買い、その後、SF を買ったのだ。だから、俺の最初の “アシモフ” は、ラジオドラマ「黒後家蜘蛛の会」なのだ。
黒後家蜘蛛=Black Widowers の面々 (声優).
ジェフリー アバロン、 特許弁護士. (納谷悟朗).
トーマス トランブル、 暗号専門家. (中村正).
イマニュエル ルービン、作家. (小林修).
ジェイムズ ドレイク、 有機化学者. (大塚周夫).
マリオ ゴンザロ、 画家. (野沢那智).
ロジャー ホルステッド、数学者. (金内吉夫).
ヘンリー ジャクスン、 給士. (久米明).
ニューヨークのミラノレストランで、黒後家蜘蛛の会が月に一度開催される。メンバーのうちひとりがホストとなり、ゲストを呼ぶことができる。酒と食事と他愛のない会話を楽しむだけの会なのだが、ゲストが経験した自身の腑に落ちない話をすると、メンバーがそれぞれに論理的な解釈を付けようとして、喧々囂々となる。しかし、実地検分するわけでもないので、結論は出ない。謎は謎のままで終わりそうになる。
ところが、黙って脇に控えていたミラノレストランの給士ヘンリーがおもむろに言う。「ひと言、よろしゅうございますか、皆さま」と。そして、ヘンリーは、その謎を鮮やかに解いてしまう。
ラジオドラマ「黒後家蜘蛛の会」では、登場人物の会話と、食器の触れ合う音、BGM、それだけしか流れない。ト書きは無いのだ。声優の演技、効果音、音楽だけの世界。声と音だけで、極上のひと時を味わうことができた。
柳 秀三