2月5日HACHForum03【まちとアートをつなげるハブ】
基町中央集会所にて『Planning&Intervention』関連トークイベントHACH Forum『まちとアートをつなげるハブ』が行われました。
このトークイベントは11月から行われたワークショップ『Planning&Intervention』の概要、および成果と、これからの展望を話し合うものです。
登壇者として本ワークショップでお呼びした講師3名と、本ワークショップのディレクターの板井さん、そして基町プロジェクトのディレクターである中村圭先生が参加しました。
約36名の方にお越しいただき、やや緊張感の漂う空気の中トークイベントは行われました。
県外から来られた方や基町に馴染みのない方も多数いらっしゃったので、改めて基町(基町アパート)という場所についても語られました。
(ずっとワークショップを行なっていたユニテが元薬局ということを実は初めて知りました。。)
はじめに板井さんからHACHの説明があり、その後は中村圭先生から基町プロジェクトの説明がありました。
中村先生のトークでは歴史的価値のある建造物『基町アパート』がいかに特殊な場所であるかを再認識でき、その中で腰を据えていた基町プロジェクトがいかに上手く切り盛りしていたか、改めてその凄さを感じました。
さらにその手腕によって基町プロジェクトが10年という長寿事業になったことは、わたしたちが掲げるメディエーター育成という点においても目指すべき姿の一例であると感じます。
(ここまで粛々としたプレゼンテーションの雰囲気でしたが、ここから板井さんのフリースタイルになり、和やかな笑いで包まれました。)
その後は”やさしい介入”をテーマとしたPlanning&Interventionがどのような経緯で生まれたか説明が行われ、講師たちによってそれぞれの活動を主軸としたプレゼンテーションが行われました。
中原さんからは都市介入のコツとして”IからWeへ”を掲げてアプローチすること、視点の切り替えを往復することの大切さを教えていただきました。”IからWeへ”というのは企画をプレゼンする際に一人称がIかWeによって世間への通り具合が変わること、つくるものの意義や価値をズーム&アウトして都度見直すことが含まれています。中原さんが施工会社という建築畑で生きながらも、街中でアートイベント(壁画プロジェクト)を行ったことは広島のアートシーンにとっても価値のある実績になったのではないでしょうか。そして、そんな中原さんが最終的にアートプロジェクトの要点を自らの経験と力で導き出したことがとても興味深いです。
そして天野さんはプレゼンの開幕でバランス芸を披露され、参加者の方の心をガッチリつかみました。そして過去にインストーラーとして現場に入った際の実体験やサーカス業が総合芸術であることなどが語られました。バランス芸のスペシャリストである天野さん曰く、バランスとは、探すこと(探し続けて動くこと)。これは天野さんのインストーラーとしてのスタンスや、考え方や生き方そのものの指標になっているといいます。このバランスのお話を焼肉屋さんで初めて聞いた時は雷に打たれたような心地でしたが、今回パフォーマンスも併せて目の当たりにすると、さらに説得力を感じました。
スタジオモブの斎藤さんは『寛容な心』を改めて身につけたといいます。ワークショップ当日ギリギリまで決まらない予定、”無理だ”と挫折しかけたこともあったそうです。(こちらの準備不足で心労をお掛けして本当に申し訳なかったです・・) 最終的にはアート系のワークショップはこういうゆとりがあるのかと、納得してご自身でこの状況を打破する突破力を習得されたそうです。斎藤さんが大事にしていることは“語ることのできる場所”をつくること。斎藤さんが対象地域のストーリーを丁寧に掬ったり、人との縁を大事にしてビジョンを共有しようとする姿勢は、何をするにおいても大事なことであると痛感します。
最後はHACHが問題視している広島でインストーラーやメディエーターが育ちにくいという課題や、将来の展望が語られました。天野さんは"スーパーボランティア"がいないことを指摘します。専門性に特化することを重視するがあまり、他分野との関わりを遮断しているのではないかと考察しました。それは教育現場での複合的な体験が改善するのではないかということも語られました。中村先生は、まずは今後どこかで天野さんに講義を大学で行ってもらうことを決めたそうです。広島市立大学の芸術学部はアーティストの育成に(比較的)比重をおいていますが、メディエーターのような仲介役の方向性がむしろ合っているのではないかという学生もいるそうです。その受け皿が大学にはまだないことを中村先生は嘆きました。大学にも(天野さんのバランスの話を引用して)バランスをとるところ、やわらかいところをとる努力が必要だと語りました。斎藤さんは天野さんのバランスの話から、常に動き続けている五重塔を連想したそうです。専門に特化した集団のチーム作業である建築においても、領域を超えて関わる重要性を改めて感じたそうです。中原さんはミューラルイベントをやった時のことを挙げて、そのカルチャーにどっぷりはまっている人がメディエーターに成り得るのではないかと考察しました。いわゆる"オタク心"というのが興味の幅を拡げていく・・ということでしょうか。板井さんは、心身、及び金銭面で余裕がないとマッチング業務(メディエーター)ができないと語ります。また、こういったアートプロジェクトの活動が助成金頼りの一過性のものではなく、ビジネス化されて循環することの重要性を呼びかけました。
その後行われた質問・意見コーナーでは、とある質問者の方が講師の方それぞれの活動を評価しつつ、板井さんの人選スキルを賞賛しました。その方曰く、板井さんのような役割を育てることがメディエーターの育成に繋がるのではないかということです。また他の方から、基町プロジェクト(中村先生)に対して「10年続かせるために行政に対してどのように成果を発表しているのか」というリアルな質問が寄せられました。時間の余裕もなかったため多くは語られませんでしたが、たとえば成果をPDF化して全て公開することなど、行政向きに工夫をいくつも凝らしているようでした。そのほかにも少し赤裸々な運営事情を垣間見ることができ、新鮮な気持ちで聞かせて頂きました。
トークイベントが終わってからも、会場では名刺交換などが行われ講師陣と参加者のゆるやかな交流の場ができていました。ここで異業種の人たち同士がマッチングしたことによって、今後広島での新たな活動の連鎖に繋がれば『Planning&Intervention』が非常に意義のあるもだったとさらに実感できることでしょう。
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