株は心理戦(6月10日号)
米国経済が底堅く、利下げ遠退く
円安基調は当面続くか?
九州は梅雨入りだそうだ。関東の梅雨入りは来週以降の予想で、例年より遅れる模様。一方、東京株式市場は梅雨空のような曇天の重苦しい雲に阻まれ、一向に晴れ間が見えない。今週もFOMCや日銀金融政策決定会合を控えており、様子見気分が続く一週間になると見られる。
米国株式市場は、7日に発表された5月の雇用統計が予想以上に力強い内容となり、改めて米国経済の底堅さが示された結果だった。当然、9月の利下げ観測が遠退き米国債の利回りは上昇し、ドル/円は1円以上の円安となった。米国経済の健全性を評価しつつ、9月の利下げ後退を織り込み始めた金融市場など、週初めのFOMCが注目される。
前号で、7014名村造船所と7003三井E&Sの株価で明暗を分けた理由について述べたが、名村造船所は梅雨空を吹き飛ばすように6月3日には年初来高値の2,361円を一気に抜き去り、4日にはこれまでの上場来高値2,510円も更新して2,525円の最高値を付けた。あっぱれな展開に拍手喝采の歓声が聞こえてくるようだ。
名村造船所が海運、造船株を牽引
筆者は、海運株、造船株が2月、3月に高値を付けた後、調整を経て出直ってきたことに注目したい。海運株は9101日本郵船(5,050円)が年初来高値まであと186円、9107川崎汽船(2,467.0円)はあと43円、9104商船三井(5,209円)はあと302円まで肉薄している。
更に造船株は、7011三菱重工(1,386.5円)は73.5円、7014名村造船所(2,084円)は既に更新して調整中、7018内海造船(4,890円)はあと1,050円と上値余地を残す。このように2月、3月に高値を付けた海運株、造船株が出直ってきた背景には、円安効果は無視できない。米国利下げが年末まで後退するならば、海運株、造船株の上値余地は更に拡大すると見る。
そして問題の7003三井E&S(1,443円)は未だ底値圏で低迷している。これまで造船株全体の牽引役を担ってきたこの銘柄が、未だに底値圏にいること自体摩訶不思議な現象だ。増配予想や大型受注を無視して現在の位置に放置されていることは極めて不自然だ。いずれ是正高は必至と見るが、気になるのが先週6日に1,393円まで下落したが、1,360円前後まで下げていれば「逆三尊」が形成され、底値が確認できるような状態だった。出来高も「陰の極」だったが、この点が今週どう出るのかが注目される。同時にこれまでの牽引役が忘れ去られてしまうのか、それとも今再び上場来高値に挑戦する大相場で造船株の主役に躍り出るのか、注目の週になると思われる。
久しぶりに日本橋の書店を覗いてみた。半導体関連銘柄を特集するものや、未だにNISAの文字が躍る書物もあり、投資熱は冷えてはいない。その中で、日経BPマーケティング発行の上阪欣史著「日本製鉄の転生」が目についた。筆者が昨年10月18日別冊として、当時の日経ビジネスを読んでダイジェスト版として取り上げた。この別冊は、当欄の執筆開始直後でもあっただけに予想以上の読者に一読頂いたことに感謝。宣伝するわけではないのが、ダイジェストで良ければご一読を。
6702富士通(2,432円)が出来高を伴い出直ってきた。野村證券が17日付でレーティング「Buy」を継続し、目標株価を2,750円から2,850円に引き上げた。成長事業として注力するサービスソリューションの収益改善と新規ビジネスモデルの事業ブランド「Uvance」の拡大が注目される。
※投資行動は自己責任でお願いします
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