お仕事①
「係はつくらない」
まったく、先生は次から次へとびっくりさせてくる。
4月は何かと忙しい。
いろんな新しいことが始まる。
新しいクラス、新しい勉強、新しい委員会、
新しいクラブ・・・
その中のひとつが新しい係だと思う。
その係をつくらないって、どういうこと?
「毎日クラスで生活していくうえで、
なくてはならない仕事を出してみて」
そう先生が言ってきたので、
私たちは昨年までの係のことを思い浮かべて、言う。
プリント配り、給食台の出し入れ、
健康観察簿届け、黒板そうじ、etc・・・
先生がそれらを黒板に書いていったあと、こう言った。
「じゃ、やりたいところに名前マグネットを貼って」
わたしたちの机の前面には、
自分の名前が書かれたマグネットがある。
これを、やりたい活動のところに貼れというのだ。
わたしたちは次々に希望の仕事にマグネットを貼っていく。
だいぶ偏りが出る。人気があるのと、そうでないのと。
これは希望の仕事に就くのは難しいかな、
なんて思っていると、
「多いのはいいんだ。分担すれば。
けど、一人もいないのは困る。
誰か、変わってもいいっていう人いる?」
そこで何人かが、じゃあそれならとマグネットを移動する。
すべての仕事の場所に、マグネットが貼られた。
それを見届けた先生が言う。
「ひとり、必ず自分の活動をする。これが゛当番゛だよ」
それから先生は、板状のマグネットを新たに渡す。
片面が白、片面が青のマグネットだ。
「青い方に名前を大きく書いて」
書き終えると、
「白い方に、自分の当番の名前を書いて」
わたしはプリント配りになったので、その名前を書く。
「いいかい。そのマグネットを、
この小黒板のところに貼っておくんだ。
ふだんは白い方を表にして。
そしてその日の当番を終えたら、
終わったしるしとして、青い方に裏返すんだ」
こうして、当番の活動をやっているかどうか、
ひと目でチェックするシステムができた。
やりたいやつが頑張ったり、
怠け者が何もしなかったり、なんてことはなくなり、
全員が必ず毎日自分の役割を果たす。
これが、新しくできた、ひとりひとつの当番だった。
でも、これだけで終わるはずがなかった。