登場③
始業式が終わると、担任の先生が発表される。
わたしのクラスは6年3組、
つまり誰が先生になるかは一番最後にわかる。
というより、みんな発表された後なので、
残った人、ということになる。
「ノコリモノニハ、フクガアル」
なぜかそんな言葉が頭をよぎった。
2年生から次々に発表されていく。
学校によっては歓声や悲鳴が起きることもあるらしいけど、うちの学校はわりと淡々と進む。
わたしは特に希望はなかった。
大場先生が優しくてまあいいかな、くらいの気持ちだった。
ひとり、またひとり、
先生たちが名前を呼ばれて、そのクラスの前に歩いていく。
いよいよ6年生になった。
1組、新しく来た若い女の先生だ。
2組、昨年も6年生だったベテランの女の人だ。
いよいよ私たちの番だ。
残っている先生たちに目をやる。
大場先生が残っている。
ふつう、
前のときの担任の先生が一人は持ちあがりで残るはず。
そうか、大場先生か。
と思った瞬間。
校長先生が
「6年3組、小松田先生」
と呼ぶやいなや、
「ハイっ!!!!」
と声が響き、猛ダッシュで先生が駆けてきた。
そして先生は1組、2組の先生を追い抜き、
こともあろうか、わたしたちのクラスの前も駆け抜けて、
隣の5年生たちの前に立ったのだ。
5年生の子たちは慌てて、そっちそっちと隣を指さし、
間違いに気づいた先生は、やべっという顔をして、
ぽん!と横っ飛びしてわたしたちの前に立った。
そして軽く手を挙げ
「よっ」
と、わたしたちに挨拶した。
何なんだ、このひとは。
せっかちなのか、おっちょこちょいなのか。
よくわからないけど、
気づけばわたしたちはみんな笑っていた。
こうしてわたしたちの前に、
怪人Xは現れたのだった。