お仕事②
「係じゃなくて、゛会社゛をつくろう」
と先生が言い出した。
「やらなければいけない仕事は当番がやる。
やりたいこと、得意なこと、
好きなことを生かすのが会社。
今まで見てきた会社はね、
お笑いが好きな子が漫才をやったり、
絵が好きな子が掲示物作ったり、
本が好きな子が読み聞かせしたり」
なんか面白そう。
わたしはピアノが好きだから、音楽関係かな、
と漠然と思う。
「何人でやってもいいよ」
そうなんだ。
係だと何人まで、と決められているので、
やりたい係になれなくて残念なこともあるからうれしい。
しかも、
「同じタイプの会社がいくつあってもいいよ、
だって、たとえばジュースだって、
いろんな会社あるだろう」
そっか。それなら誰と一緒になるかで困らなくて済む。
翌日になって、また話し合いの時間になり、
まずやりたい仕事のアイデアを出す。
歌というジャンルと、読み聞かせというジャンルで、
どちらにするか悩んでいると、先生が
「あのね、2つ以上掛け持ちしてもいいですよ」
なんと。どっちやってもいいのか。
「ただし、ちゃんと仕事やらないと、
クビにされる可能性はあるからね」
な、な、なんと。クビですかー。
「ちなみに、クビにするときや、辞めるときは、
僕に報告すること。
理不尽にクビにされたり、
勝手にやめたりして他の人が困ることがないように
するためにさ」
ブラック企業がある世の中だもんなあ。
「さらに、活動が何週間もまったくないときは、
僕から倒産宣告するからね」
倒産!?
なんとシビアなことか。
とても小学校の会社とは思えない。
ちなみにこのあと宣告された会社はなかったけど、
自分たちで解散した会社はいくつも出てくることになる。
一度決めたら、
1年間ずっと同じことが当たり前の学校の中で、
こんな動きの多いのも珍しい。
さてポスター作りに移る。
まずは会社名だ。
わたしたちはみんなに歌ってもらう会社なので
「メロディ会社」にしようとすると先生が、
「あんまりさー、○○会社って、
会社をつけなくてもいいと思うよ。
コカ・コーラとかマクドナルドとか、
会社ってつけてないところもあるでしょ」
そっかあ。そっちの方が何か良さそう。
本当はコカ・コーラもマクドナルドも、
正式には○○会社というのは後で知ることになるが、
子どもにとってはこっちの方が楽しい。
というわけでわたしたちの会社は
「きらきらメロディー」とすることにした。
他にも、
「ザ・クエスチョン」「爆笑劇場」「さんさんタイムズ」「ファイヤースポーツ」などなど
いろんな会社が立ち上げられた。
「ポスターはね、CМだからね。自分たちのアピールして」
と、係の時ならメインで書くメンバー表よりも、
でかでかと活動内容を書く。
「それとね、シール貼るスペースを作って」
と言われた。
シール?先生がご褒美で貼ってくれるのかな、と思ったら、
またもや思いもよらない言葉が飛び出してきた。
「お給料に関わるからね」