見出し画像

さよならまで3分

1日が終わる。

開放感から、みなざわめき、ランドセルを取りに行き、
教室の中は喧騒につつまれる。

とどのつまり、何気ない時間が流れていく。

そして帰りの会へー。

というのが普通のクラスだ。


わたしのクラスは普通じゃない。

6時間目が終わる鐘が鳴ると、

みな連絡帳を机に出す。

動き回るのは、プリントを配る人たちだけだ。

先生は黒板の中央に明日の時間割を書き始める。

1、国 2、算 3、音 4、総・・・ 宿 算プリ 
というように。

みんなはそれを写し始める。


プリントが配られたら日直が出てきて一言いう。

「なにか連絡はありますか?」

係や委員会からの連絡はあるかってやつだ。

だいたいない。

「先生、お願いします。」

と日直が先生へ合図を送ると、

先生はサッと立ち上がり、黒板に書いた時間割を指さして

「明日の予定はこうだけど、質問ある?」

と、ひと言。

持ち物は何か、みたいな質問を待っているようだが、
別にない。

「じゃ、おしまい」

と先生が言うと、みんな一斉に立ち上がり、

日直があいさつの掛け声と同時に、恒例の

「さよーならっ、ジャン・ケン・ぽーんっ!」

運試しの結果の歓声とともに、みな動き出す。


3分。


6時間目が終わってから、さよならするまでの時間。


それぞれのクラスが、今日あったことの反省会や、
明日の時間割の連絡、
そして締めに長々と先生の話をしている中、

うちのクラスは学校を飛び出している。


もちろん飛び出さない子もいる。

あいさつしたあと、
ランドセルを取りに行って帰り支度をするのだけれど、
遅い子はとっても遅い。

のんびりしているタイプばかりではない。

わりと見過ごされがちなのだが、
教科書やノートをランドセルにしまいながら、
連絡帳に書き写しもして、
さらに前からプリントが回ってくるのって、
苦手な子にはトリプルな作業なので辛いのだ。

だからそういうタイプの子の机の周りは、
帰りの会の後、
竜巻が過ぎた後のように無残にも散らかっている。

ところが、この帰りの会の方法だと、
あいさつしてからが帰り支度なので、
自分のペースで出来る。

だからチャチャッとできる子はさっさと帰るし、
遅い子は誰に気兼ねすることもなく、
10分くらいかけながらゆっくり支度する。


「だってみんなさっさと遊びに行きたいだろう」

というのが先生の答えだった。



いいなと思ったら応援しよう!