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【N/S高 政治部】 市民の力で変える地方自治へ〜20代市長と考える政治参加〜
みなさん、こんにちは。N/S高政治部5期生の おこ と申します 。
この記事では、2025年1月21日に行われたゲスト講義
「27歳の芦屋市長 髙島 崚輔さんと考える『地方自治と若者の政治参加』」
について、実際に参加して得られた学びや所感をまとめました。
ゲストの髙島市長は、アメリカのハーバード大学を卒業後、2023年4月の兵庫県芦屋市長選挙で初当選し、当時日本史上最年少市長となられた方です。
特に、公立の学校教育の質向上に力を注ぎ、ユース世代をはじめ、幅広い世代との対話を中心にしたまちづくりに取り組まれています。
講義で得られた視点
講義は、事前に政治部の生徒から集められた質問を髙島市長に提示して意見を求めるという流れで進行していきました。
その中で、ある部員から質問にあわせて「若者や市民の政治参加を促進するために、デジタル技術を活用したプラットフォームやアプリ開発を取り入れてはどうか」との提案がありました。
これに対して髙島市長は「デジタル技術を活用して政治に参加する機会を作ることは重要だが、そのような手段を利用するのは既に政治に関心がある人々に限られるのではないか」
さらに続けて「政治に対して不満を抱えながらも、その思いを内に留めている市民の意見を聞くには、市長自らが現場に足を運ぶことに尽きるのではないか」とお話しされていました。
「若者の政治参加」というテーマに取り組む上で、私自身この視点が欠けていたように感じました。若者議会や被選挙権の引き下げなど、若者の政治参加を促進するための政策は、これまで数多く提言されてきましたが、その多くは既に政治に関心のある若者向けのものが多いように感じます。そのため、政治に関心を持っていない方々へのアプローチが不足しているという指摘は、非常に考えさせられました。芦屋市では、政治に関心が薄い市民の声も市政に反映させるために、髙島市長自らが現場に足を運ぶとおっしゃっていましたが、もっと大きな枠組みの国政で、若者の政治参加を促進し、若者の声を反映させるにはどうすれば良いでしょうか。
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政治参加を促進させるには
髙島市長は、市民が政治に関心を持てない背景には「どうせ何も変わらないだろうという諦めがあるのではないか」と指摘されました。つまり社会が良くなったという成功体験がないことが要因の一つではないかとおっしゃっていました。そこで「日常的な道路交通の問題や学校の校則のことなど、不満に思うことについて意見を出し、それが少しでも改善されることで、良くなったという実感を持つことが大切だ」と強調されました。つまり、日常の些細なことでも、市民自らが問題に介入し改善を目指していく、そして実際に解決したという成功体験をいかに積み重ねていくかが重要だとお話しされました。
私は、これらの話を通じて、今後の地方行政にはより柔軟さが求められていくように感じました。国政や県政での問題は規模が大きいので多くの課題があり、成功体験を生み出すのは難しいですが、市区町村ではどれだけ市民に寄り添い、成功体験を生み出す機会を提供していけるかが重要になります。そのちょっとした積み重ねこそが「政治は変えられる」という意識につながり、政治に関心のない人々が政治に参加するきっかけになるのではないでしょうか。
私の考えと 髙島市長の回答
私は今回の講義を受け、髙島市長の「市民と一緒に街を作っていく」という姿勢に感銘を受けました。しかし、その一方で全ての自治体が芦屋市と同じような取り組みをしているのではなく、地域間の格差が生まれてしまうのではないかという疑問を抱きました。
そこで私は以下のような質問をしました。
「市民に成功体験をいかに作っていくかという視点で、市長としての政治をされているのがとても伝わってきました。一方で、芦屋市以外の自治体が、20年30年先の将来を見据えた自治体運営において恒久的に続けていくためには制度化が必要だと感じます。 髙島さんは、どのような制度が必要だとお考えでしょうか?」
この質問に対し髙島市長は、
「いきなり制度化に落とし込む必要はなく、アンケートや対話集会など、試行錯誤して上手くいったものを他の地域にも応用していく形が良いのではないか」
とご回答されました。
これを受けて私は、制度に基づく運営は一定の安定性を確保でき、他の地域にも転用しやすいというメリットがあるものの、まずは地域の特色に合わせた方法を見出していくことが重要だと感じました。芦屋市では、市民の政治参加の促進に積極的に取り組んでいますが、決まった形はまだありません。これは行政だけでなく、政治に関心を持つ私たち自身も共に考え、取り組むべき課題であると感じました。
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講義全体を通して
今回の講義を振り返ると、今までとは一味違った講義だったように思います。普段は政治部生が質問をしてゲストが答えるという流れなのですが、今回は生徒が自らの問いに対して「自分が高島市長だったらどうするか」という視点で考え、自分なりの意見を述べた上で、高島市長の考えを聞くという形式でした。また、髙島市長が生徒に逆質問をしたり、顧問の川邊健太郎さんにも質問されている場面が多くみられました。さらに配信講義が終わった後、参加者で円になってもう1時間、高島市長とのフリートークの場が設けられました。リラックスした雰囲気の中での雑談を交えた質疑応答は、まさに「市長と高校生の対話」そのものであり、市長が講義中に強調されていた「市民との対話」を実際に体験する良い機会となりました。
また、講義中に印象に残っているのは、政治部生からの質問に答える際、具体的な事例を沢山挙げられていたことです。芦屋市の事例や市長としての経験を踏まえたお話は、説得力があり、市政への熱意を感じました。
私は今回の講義を通して学んだ「対話」重視の姿勢を見習い、今後の活動に活かしていこうと思います。特に、客観的な事実に基づいた意見の発信や相手への積極的な質問を通して、意見のぶつけ合いではなく、一人一人の思いや考えを引き出すような建設的な議論を目指し、普段のグループ活動でも心がけていきたいと思います。
最後に「地方自治と若者の政治参加」というテーマで講義をしてくださった髙島市長に、この場をお借りして、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。