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ピアノ・レッスン

大人になって、両耳の手術を終えたとき、
聞こえのバランスが整いました。
うれしくて、ピアノを習い始めました。

どんなレッスンを受けたいですか?と聞かれ、
子どもの頃にとん挫した、バイエルをお願いしました。

え?それでよろしいの?
先生は訝し気でしたけれど。

私は、ピアノを弾くために手を動かせば、
頭が空っぽにできるのではないかと、考えていまして。
マインドフルネスといえば良いのかな。そんな感じ。

たくさん練習して、どんどん自習して先に進み、
レッスンでは、ほんの20小節の曲であっても、
音楽として成立するように、
朴訥な弾き方を修正していただきました。
私の弾き方が、あまりに無表情なので、
先生は呆れていました。

ある日、レッスンの帰りに
クリストフ・エッシェンバッハの、
バイエルのCDを買って帰りました。
聴いてみて初めて、
楽譜に書かれている、
強弱の記号の意味が、わかりました。

甘くささやくようなp(ピアノ)が美しくて、
酔いしれました。バイエルで。
いや、エッシェンバッハ様の演奏が。

次のレッスンで、
先生が「何か薬でも飲みましたか?」と笑い、
エッシェンバッハ様のCDを聴いたことで
感じるものがあったと話しました。
先生はとても喜んで下さいました。

それ以来、レッスンには、
必ずお気に入りのCDを持っていき
先生とピアノ以外の、音楽の話もするようになりました。
豊かで楽しい時間でした。

半年ほどでバイエルが終わる頃、
演奏会の話がでました。
演奏会に出るなんてと思っていたのですが、
口が勝手に
「出ます!でも一曲も弾けません!」と答えていました。
先生は、私が演奏会などと、拒むと思っていたそうで、
驚いていらっしゃいました。
実は私もそう思っていたのに.…
私は時々、こういうことをやらかすんです。
なんでだろ。

そして、数曲のおすすめの中から
ギロックのサラバンドを弾くことになりました。

練習して練習して、先生の御宅にお邪魔して、
グランドピアノの体験をさせて頂いたりもしました。
渋谷のヤマハのホールで、コンサートグランドで
切なく美しい曲を弾きました。

実に楽しい体験でした。コンサートが終わると、
東京から故郷に戻ることになっていて、
ピアノのレッスンをやめました。

お教室をいくつか当たってみましたが
先生が、素敵な先生が見つけられませんでした。



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