![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/165880197/rectangle_large_type_2_aebd6e2917327265e9686574fd189882.png?width=1200)
まだ胸の中に海が広がってるよ!
当時9歳だった息子とドライブ
家から北に向かって15分ほど車を走らせると
海の見える小高い丘があって
東屋がぽつんと建っています
道路沿いには小さな駐車場があるけれど
ほんとうにさりげないので
いつも通り過ぎるだけ
その草の斜面を登っていくと
水平線が見えるのです
海岸沿いの道路は防潮林が続いていて
広がる海が見えにくいのです
松の木の防潮林は、
度重なる津波の被害を抑えるために
先人たちが築いたものだとのこと
こんなに海の近くに住んでいるのに
息子は水平線を知りませんでした
学校がきらいで
遊ぶ友だちも少なくて
喘息アトピー持ちで
いつもストレスを溜めこんじゃう息子
あの丘に登ってみよう!
車を留めてふたりで歩き始めました
斜面を登り切る頃には
息子は わーーーーーっと叫びながら走っていました
風が強くて、海は白波が立っていて
荒れ模様でしたが
良く晴れていたので水平線が綺麗にみえました
家では不機嫌で
グズグズしていた息子だけれど
とても表情が良くなっています
ほら、叫んでごらん!
わーーーー
ぎゃーーーーー
誰にも聞こえないから
なんでも叫んじゃえ!
おとうさんのばかーーーーーーーー
もっともっと!
おとうさんのばかーーーーーーーー
しゅくだいなんかやだーーーーーーーわきゃーーーー
インフルエンザなんかやだーーーーーーーー
がっこうなんかきえちゃえーーーーーーー
おばあちゃんのおせっかーーーーーーーい
斜面をがーーーーっと走り降りたり登ったり
息子はワクワクしてきたみたい
おかあさんも叫んでよ!
叫ぶほどのことはないが
弁当作り、うんざりぢゃ!
じゃぁ、ぼくが叫んでおくよ
べんとうなんかーーーーーめんどくせーーーーーーー
さて、暗くなるのも早いから
急いで帰ろうか!
車の中で息子は何度も言いました
まだ胸の中に海が広がっているよ!
うん
ぼく、海を忘れるかも知れないから
また連れてきてね
うん
これから、スイミングやスケートに行くときは
ときどき寄ってみようね
うん、忘れないでね
お母さんはどうして叫ばなかったの?
私の胸の中に水平線があってさー
心の中でいつも叫んでるから
大きな声を出さなくてもいいのさー
へーーーーーそーなんだー
うん、そーなんだよ
なんかかっこいいね
へへへ、かっこいいだろ~
すっきりした表情の息子を見て
安堵しました