見出し画像

初めてのおつかい、ビーグル犬が見守る

息子が5歳のころのこと

玄関に出しそびれていた葉書がありました
息子がハガキをしきりに気にしているので
「ポストに入れてきてよ」と言ってみました。

息子は嬉しそうに飛び出して行きました。

ね~はいらないよ、ポストが、たかすぎるよ~

あ゛~~~~、
あのねぇ、これから送る葉書は
赤い郵便ポストに入れるんだよ
玄関にあるのはおうちに届いた郵便がはいるんだよ

あ、そっかー

じゃぁ、ポストまで行ってきてくれる?

うん!


息子、五歳ですが
実は、はじめてのお使いなのでございます。
テレビでは信じられないような
幼いお子さまがお使いをして
涙をそそるのでありますが.....

息子は、とても気楽に気軽に楽し気に
葉書一枚を持って出て行きました。
新聞を読んでいた亭主が「本当に行ったのかっ!?」と
居間の窓に走り寄りました。

居間の窓からは小屋の屋根に乗っている
ビーグル犬キルト君の背中が見えます。

キルト君が、玄関ドアの開閉に耳をピクピクしています。
小屋の屋根の上で様子をうかがっています。

そのうち、息子が楽しそうな足取りで
坂を降りて行くのが見えました。

キルト君は息子の姿を認めると、
なんども坂の上の方を確認します。
息子が一人でどこかに行くことなどなかったのを
キルト君は知っているんですねぇ。

息子の姿が見えなくなると
キルト君が悲しそうに鳴きはじめました。

くわん、くわん、くわん...
くわん、ふお~~~~~ん
くわん、ふお~~~~~ん

終いには遠吠えまで出てきてビックリしました。
ちょっと面白いので、
私はカーテン越しにキルト君を見ていました。

ポストまでは200メートルくらいなので
息子は間もなく戻ってきます。

息子の足音がするのでしょう。
姿は見えなくても、キルト君は遠吠えをやめて
ちょっと腰を浮かしました。

頭を下げて、じ~~~~~~~~~っと道の向こうを
見つめています。真剣さが伝わる後ろ姿。

そのうち、息子の姿が見えてくると
ふりっ、ふりりっっと二三度、
慎重に振った尻尾を今度は
ヨロコビのフリフリにして

きゃっほん、きゃっほんと吠え始めました。

キルト君が息子を見て
こんなに嬉しそうにするなんて驚きました。
息子が家に中に入る音がすると
キルト君はしばらく首をかしげていましたが
また小屋の屋根の上で
くつろいだように昼寝を始めました。

戻ってくると、息子は
「ゆっくり歩いてきちゃった~」といいました。

キルト君は我が家の長男でしたが
息子が生まれて、犬であるが故に二歳年上だけれど
次男に格下げ!なんて冗談を言っていましたが、
今日の様子を見て、確かにキルト君は
我が家の長男なんだなぁと思いました。

息子の初めてのお使いは
キルト君も見守っていました。


いいなと思ったら応援しよう!