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【超ショートショート】「陽キャと陰キャ」など
「陽キャと陰キャ」
各々のパートナーと抱き合い羽ばたくことで飛ぶ、生まれ付き片翼の種類の蝶達がいる。
今は春。
パートナーを組んだ蝶達が空を埋め尽くし笑い声を上げながら飛んでいる。
まるで色とりどりの花弁の浮く川が上空を流れているようだ。
羽が萎れたり破れたりしている蝶達は地面を見つめながら歩く。
「トー横キッズと社会」
雛が知らない間に危険区域に入り、たどたどしく飛んでいた。
すると上空を旋回していた成鳥が滑空して、雛の横に並んだ。
「君、1人?」 「はい」
返事をした直後、雛は衝撃を受けて落下した。
血で滲む視界の中で巨大な嘴が開かれる。
成鳥達は、「危険区域に入った雛が悪い」と言った。
「嘘松の嘘を見抜き非難する動機」
眩いオーラを放つスターがいた。
群衆は押し潰しそうな勢いで詰めかけたが、スターは偽物だった。
チョウチンアンコウが餌をおびき出そうと誘因突起を光らせていたのだった。
その事実は他のスターが傍に立ち、醜悪な本体を照らしたことで明らかになった。
他のスターも誘因突起であるが。
「高度経済成長期の終焉と父親の権威」
雄のヤドカリが背負う貝の中には雌と子供のヤドカリがいる。
まだ浜辺に大量の食べ物があった時代、雄のヤドカリは1日の大半を食べ物の調達に費やし、大量の食べ物を誇らしげに掲げて貝の中に帰っていた。
食べ物が採れなくなってからは、貝の中での居心地は悪い。
貝は昔より重く感じられている。
「成長さえできない」
人生とは死に向かって逆走するエスカレーターであり、一生涯を低賃金および無賃金の単純作業労働に費やすことは自らを纏足者にするのと同義ではないだろうか。
纏足者でなければ歩き続ける内に足が鍛えられ速く階段を上がれるようになる。
しかし纏足者は大口を開けた死に近付いてゆく。
「自己鍛錬と自己犠牲」
ブラック企業は度々、新入社員を精神的な筋トレマニアに仕立て上げる。
困難を乗り越え成長する楽しさを説き、過重労働を正当化しようとするのだ。
やがて疲弊により能力は痩せ衰える一方であることが明らかになると、今度は新入社員を新しい顔のない精神的なアンパンマンに仕立て上げる。
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読んでいただきありがとうございました。
あなたがエレベーターで親しくもない殺人鬼と二人きりになって気まずい思いをしませんように。