見出し画像

誰も信用しない利己主義者の日常【超ショートショートまとめ】

張り切って説教をしていたバイトリーダーが、急に倒れ込んだ。

他のバイトたちが唖然とする中、俺は率先してバイトリーダーを介抱した。

バイトリーダーの被害を誰よりも受けていた俺が助けたとあって、俺の評判はうなぎ登り。

バイトリーダーからも贔屓されるようになった。

バイトリーダーの飲み物に○○を入れる作戦は、見事に成功したのである。


本記事は「利己主義者」への深い理解と問題提起のために、利己主義者の実情に関する情報を収集し、日常を想像するものです。
具体的には以下を記載します。
・「利己主義者」の属性を持つ架空のキャラクター「比嘉冷射士(ひがれいじ)」の日常を描く超ショートショート
・利己主義者や日本の社会問題に関係する資料
・利己主義者を風刺した超ショートショート
比嘉冷射士が登場する他の記事については【比嘉冷射士のプロフィール】をご覧ください。

本記事の概要

【比嘉冷射士のプロフィール】


人暮らしの高齢者宅に訪問し、孤独死していないか確認するアルバイトを始めた。

痴呆で俺を息子だと勘違いする人もおり、そういう人に息子というテイで接してやると涙を流して喜ぶ。

俺はこのアルバイトにやりがいを感じている。

なにせ、カモにできそうな高齢者のリストを作れるのだから。


Xには「裏垢女子」を名乗る、明らかな詐欺アカウントに群がるバカな男共が大勢いる。

俺はそういう男共のリストを作り、SNSで客を探している売春婦たちにリストを売り込む。

さらに男共のリストを買った売春婦たちのリストを作り、今度はそれを客に困ってそうなホストたちに売り込んでいる。


いつも以上にやかましく講釈を垂れていた女性の社員が、急に黙り込んだ。

「ちょっとトイレ……」弱々しく言って背を向ける社員のタイトスカートの中から、血が滴っている。

俺はすぐに「○○さんが怪我しました!」と騒ぎ、皆の注目を集めた。

その社員は顔を真っ赤にしていた。俺の狙い通りに。


利己主義(エゴイズム)に関する説明を記載します。

利己主義者に関するメモ

利己主義(エゴイズム)とは、 『他者の迷惑を顧みず自分の欲求を満たそうとする考え方』を指します。

夏目漱石は、従来の日本人の他者本位な考え方を批判し、皆が自己本位になった上で、他者のエゴを認めて倫理観を培うべきだと説きました。

参考:
『倫理用語集』(濱井修 監修 小寺聡 編)


利己主義には、心理的利己主義と倫理的利己主義の2種類があります。

利己主義者に関するメモ

参考:


「あ、海が見えるよっ!?」

予約していた旅館の部屋に入ると、女が窓から身を乗り出して言った。

俺は女が指差す方向ではなく、女の背中を見ていた。

ブラジャーのバックベルトが浮かび上がり、そこに贅肉が乗っている。

(ババアがはしゃいでんじゃねぇよ)

俺はママ活相手の背中を押したくて堪らなかった。


トイレの個室から伸びる列に並んでいた俺は、ドアが開いた瞬間、順番を抜かして個室に飛び込んだ。

これでいい。

連中は腹を立てているだろうが、俺が外に出たときに説教する余裕はないはずだ。

俺は悠々と用を足して個室を出た。

眼前に大柄の男。

ズボンに茶色のシミをつけ拳を振り上げている。


身の回りに必ずと言っていいほどいる「自己中」な人。
なぜ彼・彼女は自己中なのでしょうか? 自己中になる原因には次のものが挙げられます。

利己主義者に関するメモ

【自己中になる原因】

  • 自己中心性バイアス(他者の感情を自分勝手に判断すること)に陥り、他者の視点や他人の心・意図・欲求を推測する能力が不足しているから

  • 自分と違う価値観があることを理解してないから

  • 親に甘やかされて育ったから

  • 両親の協調性が低い(協調性の遺伝率は46%)

  • 反社会性パーソナリティ障害(サイコパス)だから

  • 自己愛性パーソナリティ障害(ナルシスト)だから

  • ADHDだから

  • 自閉症スペクトラム障害だから

  • 激しい競争の中にいるから

  • 自己肯定感が低いから

  • 自己抑制力が低いから

  • 人生経験が少ないから

参考:


詐欺師には次の特徴があります。

利己主義者に関するメモ

【詐欺師の特徴まとめ】

  • トーク力が高い

  • 社交的で好印象を与える

  • 容姿が整っている

  • 褒め上手である

  • 好意をアピールしてくる

  • 有名人と繋がりをアピールしてくる

  • 写真を撮られるのを嫌がる

  • 専門的な話をする

  • プライベートを明かさない

  • 個人情報を知りたがる

  • 緊急性を演出し焦らせる

参考:


電車で座っていると眼前に老人が立った。

比嘉冷射士は「譲れ」と絡まれる予感がしたので黙って立ち上がり、別の車両に移った。

老人に声をかけなかったのは「年寄り扱いするな」と言われかねないと思ったからだ。

一連の行動は見返りに感謝を求めない点において、図らずも完璧な親切だった。


「ゆっくりで大丈夫ですよ」

比嘉冷射士はスーパーで泣きながらレジを打っていた店員に声をかけた。

先程まで「お前のせいで列の進みが遅い」と怒鳴られていた店員は、嗚咽交じりに礼を言った。

比嘉冷射士の寛容さは、店員に期待していないことの表れだった。

クレーマーは期待していた。


「誰も彼もを出し抜いて金持ちになってやる」

という比嘉冷射士の志は、早くも揺らいだ。

原因は世界屈指の富豪たちが軒並み、人間の生活に必要不可欠な商品を扱う会社の経営者、またそれに協力した投資家である事実だった。

(善行をしないと金持ちになれないのか?)

比嘉冷射士は眩暈を覚えた。


利己主義者と利他主義者はどちらの方が協力的なのか?
イメージとしては利他主義者の方が協力的と考えられそうです。
しかし玉川大学脳科学研究所が行った実験では、自分の損得に関わる行動の意思決定に時間をかけると、利己主義者と利他主義者の協力性が逆転する場合があると判明しました。

利己主義者に関するメモ

□実験に関する情報

・2012年から2017年の間に複数回、20代から50代までの男女443名を対象として行われた

・実験には主に「独裁者ゲーム」が用いられた

独裁者ゲームは、被験者が2人1組になり、一方に分け手もう一方に受け手の役回りを与えられ、分け手が与えられた金銭を好きな額だけ受け手に分配できる状況を前提に行われた

被験者は「A:あなたは2,000円を得て、相手は1,000円を得る。B:あなたは1,500円を得て、相手は1,500円を得る」というように、分配の内容について二者択一の質問を何問か答えた

・測定は「協力的か非協力的か」と「回答までの時間が長いか短いか」の指標で行われた

□実験の結果

実験の結果、回答までの時間が短いと非協力的な選択肢を選んでいた人が、時間をかけると協力的な選択肢を選ぶ場合があった。

反対に、回答までの時間が短いと協力的な選択肢を選んでいた人が、時間をかけると非協力的な選択肢を選ぶ場合があった。

この結果になった理由としては回答までの時間によって、利己主義的・利他主義的な被験者の思考が下記のように変わるからと考察されます。

参考:

https://www.tamagawa.jp/research/brain/news/detail_12320.htm


俺が利己主義に目覚めたきっかけは、上京して間もない頃に入ったゲイバーで、常連客のカモにされたことだ。

勧められるまま痛飲して酩酊し、気がつけば常連客に強姦されていたとき、俺は今まで他愛心に溢れた世界にぬくぬくと暮らしていた俺自身と、未だにそこで安住する連中を心底恨んだ。


比嘉冷射士は人に傷つけられてから人を傷つけるようになった。

その最大の動機は、自分が受けた理不尽を他者にも味わわせたときの、不平等が解消される快感だった。

一方で悪事を働く度に胸が痛んだ。

現在、比嘉冷射士は自らをソシオパスだと思い込むことで良心の呵責に蓋をしている。


「ソシオパスだと偽って罪悪感を掻き消そうとする者」

雲の上に住む天使の1人が、何者かに羽を射抜かれて地面に落ちた。

「俺は狩人だ」

地上にいた弓を射た者はそう呟いた。

天使は(なぜ自分だけ)と怒り、天に向かって矢を放った。

すると、ある天使が射落とされ目の前で悶え苦しんだ。

その痛ましい姿に耐えられず、天使は呟いた。

「俺は狩人だ」


「次の駅で降りろ。動画で証拠も撮ってるから」

痴漢に凄んだ直後、俺は後悔した。

柄にもなく正義の味方ぶってしまうとは。

やるせない気持ちでいると、被害者の女がはにかみながら言った。

「そういうプレイです」

後日、動画を晒してやった。

悪人としての沽券は守られたのだ。


人間の性質には「悪」とされる下記の4つのタイプ(ダークテトラッド)があります。
・サイコパシー
・ナルシズム
・マキャベリズム
・サディズム

利己主義者に関するメモ

参考:


サイコパスとソシオパスには下記の共通点・相違点があります。

利己主義者に関するメモ


参考:


レイプのトラウマによって、比嘉冷射士はセックスとオナニーができなくなった。

この事実は性的な行為への嫌悪に留まらず、人間関係にも影響を及ぼした。

相手を欲求解消の踏み台にするオナニー的な関わり方も、相手と喜びを分かち合うセックス的な関わり方も、今の比嘉冷射士にはできない。

比嘉冷射士は他者との関わり自体を嫌悪している。

もはや他者と関わる動機のある大多数の人々を妬み、同じ地獄とはいえないまでも、同程度の苦痛を味わわせるためだけに他者と関わっている。


「性愛」

各々のパートナーと抱き合い羽ばたくことで飛ぶ、生まれつき片翼の種類の蝶たちがいる。

今は春。

パートナーを組んだ蝶たちが空を埋め尽くし笑い声を上げながら飛んでいる。

まるで色とりどりの花弁の浮く川が上空を流れているようだ。

羽が萎れたり破れたりしている蝶たちは地面を見つめながら歩く。


皺だらけの手がおひつから湯気の立つ白飯を掬い、鮮やかな橙色のイクラを包み込んだ。

白飯は宙で回転しながら三角に成形され、仕上げに海苔が巻かれた。

受け取ると、「よくこれを触っていたな」というほどに熱々。

あぁ、まさか人が素手で握るタイプのおにぎり屋だとは。

無理かもしれない。


いじめは加害者と被害者だけによって行われるものではありません。 いじめを囃し立てる「観衆」と見て見ぬフリをする「傍観者」を含めた4種類の当事者によって行われます。

利己主義者に関するメモ

【いじめの4種構造】


「屠畜場は現代のアウシュビッツだ!」

肉屋の中でプラカードを掲げている集団が叫んだ。

店主はレジの内側で縮こまっている。

俺はそれは遠巻きに目撃したが見て見ぬふりをして去った。

(俺は人でなしを自覚しているだけマシだな) そう思った。

傷ついた豚の写真と店主が重なる。


目の前を沢山のランドセルを抱えたガキが歩いていた。

事情を尋ねるとガキは「友達に渡されて」と情けなく笑った。

俺は「友達」のランドセルを奪い取って、近くの家の塀の中に投げ入れた。

慌てて塀を上ろうとするガキ。

「拾うな!」

俺は吐き捨てて、自分の影を睨みながら帰った。


青空に月が浮かんでいる。

あれには利用価値があるのだろうか。

資源が眠っているのだとしたら、利権争いに勝つ国はどこだ?

……いつからだろう。素直に自然の美しさを感じられなくなっている。

何を見ても競い奪い合うものとして捉えてしまう。

子供の頃、この世界は俺だけのものだったのに。


読んでいただきありがとうございました。
利己的な利益追求が真っ当な商売に結びつき、人々の需要に応える高品質のモノ・サービスを生み出しますように。

最後に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?