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全てに挫折し孤独死を待つだけの老人の日常④【超ショートショートまとめ】

優先席に座る宮山郁夫は苛立っていた。

その視線は手元の通帳に印字された侘しい年金支給額に向いていた。

歯軋りしていると、目の前に妊婦が立った。

宮山郁夫はアルバイトの疲れもあり席を譲らなかった。

他の乗客には、宮山郁夫が若い世代に負担をかける高齢者の象徴のように思われた。

架空の現代人、宮山郁夫(みややま いくお)の日常を描いた超ショートショートのまとめです。
宮山郁夫は、事業に失敗して家族に逃げられ、アルバイトで食い繋ぎながら孤独死を待つだけの日々を送る老人です。
いわゆる「老害」で、コンビニ店員に理不尽なクレームをするなどして憂さ晴らしをしています。
宮山郁夫が老害になった詳しい経緯は〈宮山郁夫のプロフィール〉にて。

解説

〈宮山郁夫のプロフィール〉


「高齢者に冷たい社会」

水面から伸びる塔がある。

塔はその中に住む人々が水から逃れるために、上へ上へと増築を重ねられた。

しかし今や塔は傾き、根元に住む人々は溺死しそうになっている。

「多過ぎる年寄りの重さで塔が傾いている」

という話を聞いた人々は、塔の根元に住む年寄り達を蹴落とそうとしている。

年寄りが『先端』に多いために傾いている塔。

なぜ人は老害になるのか。
原因は3つあると考えられています。

老害に関するメモ

【老害になる3つの原因】

①体の衰え
例)感情的になりやすくなる前頭葉の衰え、またイライラを誘発する視力や聴力などの低下

②社会的評価の低さ
例)社会のお荷物扱い、長年働き続けたのに少ない年金など

③性格的な弱点
例)過去の栄光への執着、自己顕示欲など

参考:


「あれは老害」「確かに、あれは老害」

宮山郁夫が休憩室の前に立つと、中から同僚達の声が聞こえた。

「男なら直接言え」

ドアを開けながら唾を飛ばす。

同僚達は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。

そして直ぐに「客の話です」と誤解を解いた。

(うわ、この人も老害だな)と思いつつ。


「差別(レッテル)と区別」

「奴隷」および「障害者」と呼ばれる者がいた。

時が流れ、社会的弱者を救う気運が高まると、その者は一般人と同じように扱われるようになった。

今やその者は「奴隷」とも「障害者」とも呼ばれない。

その者は足を引き摺って自由に表を歩く。

一般人と同様に誰にも助けられずに。


老害に関連する言葉に『ソフト老害』があります。

老害に関するメモ

【ソフト老害とは】

□意味
職場で上の世代と下の世代の間に入り、上の世代に配慮しつつ下の世代の意見を代弁したつもりが、下の世代からは「見当違い」と思われてしまう行動。

□例
「お前の気持ち、分かるよ(分かっていない)」

参考:


横並びで歩く老婆達が道を塞いでいる。

「薬ばっかり増えちゃって」「本当よねぇ」

背後にいた宮山郁夫は苛立ち、

(何歳になっても傷を舐め合ってばかり。
女とは進歩のない生き物だ)

と軽侮しながら追い抜いた。

が、直後に胸の苦しさを覚え歩みを止めている内に抜き返されてしまった。

1人になった後も友達とのお喋りで得た活力によって歩き続けられる老婆。

「高度経済成長期が終わった頃の父」

雄のヤドカリが背負う貝の中には雌と子供のヤドカリがいる。

まだ浜辺に大量の食べ物があった時代、雄のヤドカリは1日の大半を食べ物の調達に費やし、大量の食べ物を掲げて貝の中に帰っていた。

食べ物が採れなくなってからは、貝の中での居心地は悪い。

貝は昔より重く感じられている。


高齢者は体の衰えと共にさまざまな疾患を抱えます。

老害に関するメモ

【高齢者に多い疾患の特徴】

□特徴

  • 個人差が大きい

  • 慢性の疾患が多い

  • 症状が非定型的な事がある

  • 1人で多くの疾患を持っている

  • 薬に対する反応が成人と異なる

  • 臓器の機能の低下が潜在的に存在している

  • 防御力が低下しており、疾患が治りにくい

  • 複数の医療機関から多くの薬が処方されている

□具体的な症状

難聴、視力障害、頻尿、めまい・ふらつき、息切れ、睡眠障害、物忘れ、手足のしびれ、転倒、骨折、尿失禁、発熱、低体温、頭痛、胸痛、腹痛、浮腫(むくみ)、便秘、肥満、やせ、脱水など

□対策

  • 禁煙する

  • よく歩く

  • よく寝る

  • 健診・検診を受ける

  • 適度な飲酒を心がける

  • 家族や隣人と会話を持つ

  • 不必要な薬は飲まない

  • 生活習慣病について十分な診療を受ける

  • 多くの種類の食品をバランスよく食べる

参考:


目の前を歩く女性がナンパされている。

宮山郁夫は、女性と並んで歩きしつこく声をかける若い男に

(貴重な時間を浪費しおって)

と立腹していた。

少しして前から歩いて来た2人組の若い男が、ナンパ男をすれ違いざまに侮蔑的に見て、一言。

「恋愛とか非生産的…」

宮山郁夫はそれにも憤った。


「老い先の短さへの焦燥感から時間を持て余す若者に憤る老人」

男根の先端に命の火が灯っている。

男根は熱によって時間が経つ程に溶け、短くなっていく。

すっかり短く歪になり、今にも命の火が消えそうな男根の持ち主は、睨む。

視線の先には長い男根の持ち主。

「その内にやる」と言うが、何も照らさず、何かを燃やして楽しむことさえしない。


「超少子高齢化社会」と叫ばれて久しい日本ですが、今後の高齢者人口や全人口に占める割合はどうなっていくのでしょうか。

なんと2065年には国民の約〇人に1人が高齢者になるのです。

老害に関するメモ

【高齢者人口と高齢化率の予測】

□高齢者(65歳以上)人口の予測

増加傾向が続き、2042年に3,935万人でピークを迎え、その後は減少に転じると推計されています。

□高齢化率の予測

総人口が減少する中で65歳以上の者が増加することにより高齢化率は上昇を続け、2036年での高齢化率は33.3%(3人に1人)です。

2042年以降は65歳以上の人口が減少に転じても高齢化率は上昇を続け、2065年には38.4%に達して、国民の約2.6人に1人が65歳以上の者となる社会が到来すると推計されています。


読んでいただきありがとうございました。
老害の人が穏やかな余生を過ごせますように。

挨拶

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