「ねえねえ 聴いてる?」
午後の電車。
早番が終わり 14時半発だから空いている
少し目をつむっていようと
電車の走る音に耳を澄ませていたら
隣の男子生徒ふたりの会話が聞こえてきた
「ねえねえ 聴いてる?」
見ると 私の隣のこは ゲームをしているのか
夢中でスマホの画面をこすったりたたいたりしている
「ん?聴いてるよ」と目はスマホに落としたまま返事をする。
「それでさあ」とその隣の男子は続ける。
よくわからないけど 聴いてるよというこは 言いながら まるで スマホから目を離さない。
「でさあ」
「うん」
「あの車両 変わるらしいんだよ」
「なにが?」
「車体のいろ・・・」
「へえ そうなの?」
「うん。。なんかさあ・・・」
「ん?でも やさしいいろになるんでしょ?」
なんかよくわからない話だけど わかるのは ひとつ。
ふたりとも 自然だということ。適当に相手に合わせているようで
ふたりとも 無理もなく 自分の世界でも 遊んでて それでいて どうも満足しているようなのだ。
時々 「聴いてる?」の男の子は ゲームの画面に手をやっては ふふと笑い それを嫌がるでもないこは そのままゲームをしてる。
しばらく 沈黙が続いた後、また 問わず語りのように話しだしゲームのこも 相槌をうつ。なにやら ぽつぽつと話している。
とりとめもない時間。
でも、なんだか ほっこりしたな。無理に 相手に合わせなくても成り立つ関係。ふたりでいても 自然で気を遣うこともない。いやいや 「ねえねえ 聴いてる?」といった男の子の気持ちは 本当はわからないけど 私には すごくいい関係に見えて ああ 今日もちっちゃなドラマみたななんて
思った。
奈良平野を見ながら 車窓の近くに緑の林が近づき いつのまにか
我が町の最寄りの駅をアナウンスが告げている