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音楽旅行記②(ヘルシンキ Flow Festival一日目)IDLES. Janelle Monáe

2024/8/9 羽田空港→ヒースロー空港

いよいよ旅行当日。ロンドンにはJALで行った。一年前からマイルで予約することで航空券代は抑えることが出来たが、サーチャージが高く1人10万円くらいは払った。

ロシアが戦争を始めたので、ロンドンまでは初めてアラスカを横切るルートだった。ロシアを避けてアメリカ側を飛び、アラスカ、グリーランド、アイスランドを通り抜け、北からイギリスに上陸する。途中、グリーンランド上空を飛んでいる時に、氷河を観ることが出来たのはこの飛行のハイライトだった。シベリアの広大な土地を眺めるのも好きだったが、アラスカ経由も悪くない。ちなみに帰りは南ルートでロシアとイランを避けてトルコ、カザフスタン(たぶん)、中国を経由していたと思う。イスタンブールの夜景がとても綺麗だった。

飛行機から見た氷河

ヒースローでの入国はスムーズで全く時間がかからなかった。

ロンドンからヘルシンキの移動はフィンエア。
フィンエアは、以前イタリアに行くために使ったことがあるのだが、荷物が現地に届かなかったことがあったのであまり良いイメージがないが、今回は大丈夫だった。

2024/8/9(Flow Festival 一日目)

この日、flow festivalで観る予定だったのは以下

17:45 Nabihah Iqbal
19:30 Arooj Aftab
20:30 Raye
21:30 IDLES
22:30 KOKOKO!
00:00 Janelle Monáe

ヘルシンキに着いたは15:30くらいで、荷物を受け取って空港を出発したのは16:00すぎだった。空港から街中のホテルまでは50分程度。ホテルから会場まではトラムに乗れば40分。ホテルをすぐ出ればギリギリ間に合う。少しくらい遅れてもいい。

私が焦ると、妻といつも喧嘩になる。懲りずに毎回喧嘩する。今回も喧嘩になった。私は、ライヴには開場前に着いて整理番号が呼ばれたら入場するタイプであって、野球を観に行く時も選手が練習しているところを見て、先発メンバーの発表を楽しみにするタイプなのだ。妻はそうではない。

会場に着いたのは17:30過ぎだったと思う。
でもここから実際に入場できたのは19時すぎだった。リストバンドの引き換えに長蛇の列が出来ていて、ここで1時間以上を費やした。会場の規模と比較してリストバンド交換場所が狭くてちんまいところでやっていて、道路まで列が出来ていた。

入場に並ぶなど、フジロックに慣れている私には信じられないような出来事だった。フジロックはリストバンドを事前に送ってくれる。海外の人がリストバンドを交換する場所も大して混雑していない。入場するために並ぶなんてことはないのだ。楽しみにしていたが、Nabihah Iqbalは諦めた。

道路まで続く長蛇の列

ようやくリストバンドを引き換えると、今度は入場ゲートに人が押しかけており大混雑になっている。もはや並んですらいない。文字通りひしめき合い、押しかけていた。会場内ではアルコールの持ち込みが出来ないので、入場ゲート付近にはビール缶が大量に捨てられている。ヘルシンキでは、ビール缶を返却するとお金が一部戻って来るエコシステムがあり、それを利用したホームレスと思われる人がビール缶を拾ったり回収したりしている。もうここはパニック状態だった。

荷物検査を受けてようやく入場出来たのは19時過ぎだった。次に観る予定だったArooj Aftabは、Balloon360°というステージで入場ゲートのすぐ近くだった。一刻も早くビールを飲みたかったので並んで買おうと思ったが、店員が客と話し込んでいて一向に我々の番にならない。またしても私は焦りだし、Arooj Aftabまでも見逃すなんてあり得ないと、遂にはビールを買うのを諦めた。妻はビールで頭がいっぱいだったので、ものすごく怒った。

Balloon360°というステージはとてもユニークで変わっている。ボール型のバルーンを浮かせて、その下に円形のステージを作り、その周りを囲むように席が用意されているのだ。ここではJazzやダンス系アーティストが演奏する。とても変わっていて面白いのだが、入場できる人数が少なくて、すぐに入場制限になってしまうのが難点だ。

Balloon360° Arooj Aftab

Arooj Aftab

Arooj Aftabは、パキスタン出身のジャズシンガーで、アジア的な神秘さをまとった声が特徴的だ。今年5月にリリースされた「Nighit Reign」も傑作でとても楽しみにしていた。本当は白夜のヘルシンキではなく、夜静かに聴くことができる環境が最適だが、ヘルシンキの冷たく澄んだ空気と透明感のある声がマッチしていた。良い音楽は空気を感じることができる。この日はヘルシンキに着いた初日で疲れていたこともあってArooj Aftabの声にとても癒された。もう一度観たいので、日本にも早く来て欲しい。やはり日本ではfrueが合うと思う。

flowはロックだけではなく、Jazzやアフリカ、ブラジルなどのワールドミュージックのアーティストが多く出演するのも魅力で、2023年にはMeshell NdegeocelloやNala Sinephro、Horace Andy(!)、今年はArooj Aftab、KOKOKO!、Marcos Valleなどがラインナップされている。しかも、人気がある。

日本でもBillboard、BLUENOTE、frueなどの頑張りがあることや、サウスロンドンのJAZZシーンやKamasi Washington、Sam GendelのようなHIPHOPやインディロックとも交差するアーティストが登場したことによって、私自身もそうだが、Jazzに触れる機会が増えて来たのではないか。「Jazz The New Chapter」の功績も大きいと思う。ロック好きでも聴けるようなオルタナティヴな音楽として浸透すると良いと思う。

ビールを求めて妻は途中で離脱した。
Arooj Aftabが終わって妻と合流するとメインステージに移動した。妻はBlondredheadを観ていたようだ。2011年に O-Eastで開催された4ADナイトで観た時は大変良かった記憶がある。あれからもう10年以上時は過ぎたのだ。話は逸れるがDeerhunterはどうしているんだろう。あの時、ブラッドフォード・コックスは何をやっても名曲しか作れない天才だった。

RAYE

メインステージでRAYEの演奏が始まっていた。メインステージは、キャパ3万人くらいのステージで、この日はHALSYがトリを努める。この日はHALSYのファンと思しきゴスっぽい格好をした若い女子が多い。

RAYEは、フジロックでも中途半端にしか観られなかったが、ここFlowでもちょっとしか観られなかった。RAYEは場所がどこであっても、聴く人が誰であっても全ての人を満足させることができるのだろう。そういうアーティストが稀にいる。ヘルシンキでもRAYEは非常に盛り上がっていた。

メインステージ RAYE

Flowで2番目に大きなステージはSilver Areaというテント型のステージだ。メインステージのすぐ隣にある。1.5万人くらいは入るのではないだろうか。このステージのスクリーンは圧巻だった。テントに入った瞬間にあまりにも巨大なスクリーンで思わず「すごい!」と口に出た。フェスは舞台作りも大事で、スクリーンや照明の効果でステージを何倍も良く見せることができる。

Silver Areaの巨大なスクリーン

もう25年も前のことだが、1999年にフジロックでみたアンダーワールドのライヴは、ホワイトステージをスクリーンと照明で全く別な空間に作り変えていた。音が透明な線になって突き刺さるような感じで、コンクリートに触ったような冷たさがあって、アンダーワールドの音楽を最適な環境で聴くためにはあの空間を作り出す必要があった。

flowのSilver Areaは、あらかじめその空間を作り出していて、テントにいる感覚とは全く別な世界だった。このステージの効果を最大限発揮したのは3日目に登場するJames Blakeだった。

IDLES

私は、1日目ではIDLESを一番楽しみにしていた。冒頭に Arctic Monkeysの話をしたが、私の中でロックバンドに回帰する傾向は実際にはもっと少し前から始まっていて、2018年にShameやFontaines DC、Black Country,New Road、そしてIDLESが登場して来たことが大きい。

2018年の初来日は見逃して、2023年はフジロックに行かなかったので、IDLESを観るのは今回が初めてである。IDLESというのは怒りとユーモアが同居するパンクバンドで、例えるならディケンズの小説に出てくるようなパブで飲んだくれている市民であって、だらしなくも、ただただ精一杯生きている人間の歌だ。代表曲のDanny Nedelkoの歌詞は天才的なので、ぜひ和訳を読んで欲しい。好きにならずにいられないハズだ。

この日のIDLESは1stから最新作までの代表曲12曲を演奏した。演奏時間は1時間弱で、それでも十分満足できるものではあったが、あっという間に終わってしまい物足りなさもあった。単独のセットリストを見ると25曲も演奏しているので、フルセットが期待できる、来年1月の来日がますます楽しみになった。

IDLES待ち

IDLESが終わって外に出ると、ヘルシンキの街にもようやく夜がやってきて陽が落ちていた。ヘルシンキは夏でも夜になるとかなり冷えるので、長袖シャツが欠かせない。昼間は陽が当たっていると半袖でもいられるが、日影で風を感じると寒い。ヘルシンキにいた間はずっとシャツを着ていた。天気も変わりやすく雨も降る。

この日の夜は屋台でタコの唐揚げ(フリット)とタコスを買って食べた。北欧で、ただでさえ物価が高く、その上円安なので、全てがとんでもなく高い。ビールは地元のクラフトビールだと少し安くて1,300円くらい。タコスは大した量もないのに2,000円くらいはした。我々は日本からお菓子を持って来ていたので、それを食べながら腹を満たした。

KOKOKO!

次の予定は、コンゴのダンスアクトであるKOKOKO!だったのだが、Balloon360°ステージは入場制限となっており、入口には人だかりができており、中に入って見ることはできなかった。KOKOKO!はライヴが評判のバンドで、歓声が漏れ聞こえて来た。実に残念である。このステージは考え直した方が良いと思う。

入場制限になったBalloon360°

Janelle Monáe

気を取り直してSilver Areaに向かい、最後にJanelle Monáeを観たのだが、これがすごかった。私は、Janelle Monáeの熱心なファンではない。あえて言えばDavid Bryneが 「Amerian Utopia」で彼女が作ったプロテストソング「Say Her Name (Hell You Talmbout)」をカバーしていて、胸が熱くなったことがある程度である。

Janelle Monáeはライヴこそ真骨頂だと思う。バックが生演奏なのもいいし、ファンクで、ソウルで、レゲエもあり、また何と言ってもJanelle Monáeのエンターテイナーな踊りと歌がすごく、曲を重ねるごとに会場の熱が上がっていくのがわかった。華やかな衣装も見もの。Silver Areaのステージが合っていたのもある。この日のベストアクトだった。

こうして長い1日目が終わった。
会場からホテルまでは歩いて帰った。
40分くらいだった。

ホテルのある通り


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