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音楽旅行記④(ヘルシンキ Flow Festival 三日目)James Blake.PULP
2024年8月11日(Flow Festival 三日目)
3日目もホテルで朝ご飯を食べて、ヘルシンキの街中を散策した。ヘルシンキ中央駅近くのLasipalatsi Squareを歩いている時、やたらとメタルファッションのおっさんがいると思っていたが、Helsinki Metal Festivalが同じタイミングで開催されていたことがわかった。メタルが好きな人はファッションも独特なのですぐわかる。
海外旅行に行くと服を買って帰るのが恒例になっている。サイズを合わせるのが難しいので、手軽なシャツばかり買ってしまうのだが、今回もやはりシャツを買ってしまった。Makiaというフィンランドのブランドを、路面店で購入した。今も気に入って着ている。
お店で服を選んでいると、日本語のサイケミュージックが流れてきて、びっくりしてShazamで確認すると、サイケバンド"みみのこと"の「ゆりちゃん」という曲だった。ガレージサイケで強烈なギターが印象的な曲である。裸のラリーズを始めとして、日本のサイケバンドは、海外で密かに聴かれている認識はあったが、まさかヘルシンキで聴くとは思わなかった。ちなみにこの曲が始まると、店員がリズムに乗ってノリノリだったことは、伝えておきたい。(店員さんが日本人だと思ってかけてくれたのかもしれない)
この日は雨が降りがちで、街歩きしている間もときおり雨宿りした。街を歩く人を眺めていると、ヘルシンキ発祥なだけあって、Woltの配達員が多かった。北欧の他の国もそうだが、街がコンパクトなのもあり移動に自転車を使っている人が多い。ロンドンもそうだったが働いているのは白人ではない人たちだ。
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ヘルシンキは、公園に設置されたトイレは無料だったが、マーケットなどの施設内のトイレは有料だった。私はお腹が痛くなり一度有料のトイレに入った。
3日目最後の予定は以下
L'imperatrice
Alvvays
Jessie Ware
James Blake
Pulp
この日は昨日よりも少し空いていた。
前日、いかにFred Again..に集客力があったのかがわかる。
L'imperatrice
L'imperatriceは、フランスのディスコ・ファンクバンド。今年のCoachellaでも話題になっていた。2021年にリリースされたアルバムのタイトルは「タコツボ」。えっ、何それ?と思うが、失恋や最愛の人を失ってショックを受けて、胸の痛み、息切れ、不整脈などの症状が現れる「たこつぼ心筋症」なるものがあるらしく、そのことを指しているそうだ。ライヴは全然タコツボな感じではなく、ユーモアに溢れた楽しいものだった。
宇宙っぽくて、未来感のあるコスチュームを着ており、フランス出身ということもあり、ダフトパンクみたいだよなと思っていたら「Aerodynamic」をカバーしていて、観ていた人の期待に応えたみたいで思わず笑ってしまった。ディスコサウンドなので、初めて聴いても十分楽しめるし、実にフェス向きなバンドだと思う。
Alvvays
AlvvaysはBlackTentで観た。
2023年にMorrisseyを観て、Ezra Collectiveを諦めたと書いたが、実はこの日はもともとAlvvaysをZepp Shinjukuで観るためにチケットまで買っていて、Alvvaysも諦めていた。なので、flowにラインナップされたとわかった時には嬉しかった。 Alvvaysは、コロナ前までは若手の中で、インディロックを代表するバンドの一つだったし、シューゲイザーでポップな音は私が慣れ親しんだものだった。
しかし、この日のライヴは期待していたものではなかった。聴きたかった曲は全てやってくれたが、何となく疲れているのか覇気がないように感じられた。シューゲイザーバンドはポップなメロディに、フィードバックギターが鳴る展開がお決まりだが、あまりにも王道な音で退屈に感じてしまった。ただ淡々と演奏しているだけで、Alvvaysはバンドとして、新しい可能性を見出せずに行き詰まっているようにも思えた。好きなバンドなので次のステップに進んでいくことを期待したい。
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Jessie Ware
Jessie Wareはメインステージで、遠くからホットドッグとビールを食べながら観た。特に思い入れがないので、何となく観ただけだが、大きな歓声が上がっており、大変な盛り上がりだった。Jessi Wareはクィアのファンからの支持を得て人気になったアーティストで、80年代なニューウェーブサウンドが特徴的だ。私は同じタイプとしてRoisin Murphyが変わり者で好きだが、Jessie Wareもちゃんと聴いてみたいと思った。
この手のアーティストは、なかなか日本には来ないが、ヨーロッパでの人気と差がありすぎるのだろう。日本におけるクィアの受け止められ方も影響しているのかもしれないが、Jessie WareやRoisin Murphyが日本に来て、2000人クラスの会場を埋められるだろうか。たぶん難しいだろう。(こうやって書いていると、ホットドッグなぞ食べずにちゃんと観ておけば良かった...)
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物販があるお店を探して見つけたが、flowではあまり物販がなかった。日本は物販が大量にあるので意外だった。私はflowのトートバッグを買った。
James Blake
Silver AREAに移動してJames Blakeを初めて観た。James Blakeは、The Smileの代役だった。The Smileは、ジョニーグリーンウッドが病気のため2024年夏の予定をすべてキャンセルしており、急遽flowに参加することが決まった。
結論から言うと、James Blakeは最高にカッコ良かった!
硬質な音とSilver Areaの照明が相性が良いのもあったし、透明感があるのに、音が重い感じもあって、身体にずっしりと届く。しかも、James Blakeはイケメンな上に、歌もめちゃくちゃ上手い。完璧主義っぽくて近寄りがたい感じも音と合っている。部屋には塵一つ落ちてないだろう。しかし、日本にも何度も来日しているが、なぜ一度も観なかったのか…。
James Blakeの音楽は、ゴスペルやクラシック、ダブステップなどのフォーマットを変換してオリジナルの音を生み出している。色んなタイプの音楽を使い分けて演奏できる人はいるが、異なる音楽を一つにすることはなかなか出来ない。最近だとSamphaがダンスミュージック寄りで同じように新たなフォーマットを生み出しているが、こういうことができる人は限られた天才だけだ。
ちなみに、この日、James BlakeはRadioheadの「No Suprises」を讃美歌風にしてカバーした。おかげでThe Smileが来れなかった悲しみも癒えた。代役だったとはいえ、このステージで観ることができて良かった。私のflowベストアクトだった。
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James Blakeは1時間半みっちり演奏してくれたので、Pulpを観るためにメインステージに慌てて移動した。
PULP
世代柄ブリットポップバンドはどのバンドも大好きなのだが、Pulpは学生だった90年代よりも、大人になってから好きになった。「Common People」は当然大好きだったし、「Different Class」も大好きなアルバムだが、当時ジャービスはTVにも出ていて芸人みたいだったし、真面目に聴く音楽じゃなくて、コミックバンド的な存在に思えてその良さを理解できなかった。まだガキだったのだ。
イギリスにはユーモアを武器にする文化が昔からある。オスカーワイルドやディケンズがそうだし、The fallのマーク・E・スミス、XTCのアンディ・パートリッジがそうだ。ユーモアがあって、とんちが効いていることがカッコ良い。今ではブリットポップバンドの中ではPulpが一番好きかもしれない。
Pulpは、なかなか日本に来日してくれないバンドだ。最後の来日が98年だし、再結成してからも全然来てくれなかったので、flowで観れるとわかった時にはとても嬉しかった。(何とロッキングオンソニックで2025年1月に来日することを後日知ることになったのだが...。)
ジャービスは、すっかり老けていたが相変わらずカッコ良かった。二曲目で人気曲であるDisco2000が始まると、会場は大合唱になった。真後ろにいた女性も歌いまくっていた。これがイギリスだったらもっとすごいことになっていただろう。Something ChangedやSorted for E's & Wizz、Do You Remember the First Time? 、Babiesもやってくれて私は大満足だった。アンコールでCommon Peopleが始まったときには私も歌って楽しんだ。
Common Peopleでは、シェフィールドの同郷でRichard Hawleyがゲストで参加した。誰だろうと思っていたが、後で調べてみると、何と懐かしいLongpigsでギターを弾いていた人だった!Longpigsは良いバンドで、アルバム「The Sun is often out」は、今でもときどき思い出して聴いている。
Pulpの客層は、40代後半から50代という印象で、昨日までは若い子供達がたくさん集まっていたが、今日はその親世代が集まっている感じもあった。どこの国でもブリットポップを今だに聴いているのはおっさんだ。あまり再結成ライヴは好きではないが、Pulpは何よりも楽しくてフェスの最後を飾るのにぴったりだった。
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私のflowは終わりを迎えた。
総じてとても良いフェスだった。街から近く、夕方から始まるから、ホテルでゆっくり休むこともできたので疲れがあまりたまらなかった。物価が高くて、フェス飯をあまり楽しめなかったのは残念だったが、クラフトビールは日本と同じ金額感だったのでたくさん飲んだ。どのステージも照明がすごかった。何よりも若い人から年配の人まで、街全体がこのフェスを楽しんでおり、持続できる形を模索し続けた結果であることが伝わってきた。
フェスについて思うこと(フジロックの在り方とは)
フェスは、誰のためにあるのかと考えると、都市型のフェスというのはあるべき形なのではないかと思う。誰もが参加可能で、みんなで音楽を聴いて、楽しみ、踊る。終電までには家に帰る。街の人が毎年このお祭りを楽しみにする。それでもラインナップは音楽好きを意識したものになっていて、主催者のこだわりもある。
フジロックは、山の中で誰のためにフェスをやっているのだろう。円安でただでさえコストがかかっているのに、お金のある音楽好きしか行けない今の形が、本当にあるべき形なのだろうか?もちろん私にとっても苗場は思い出の場所なので、ずっとあの場所でやって欲しい思いもある。でもフジロックが大好きなので、若い人にも来て欲しいのだ。若い人が来ないと持続できなくなり、いつかは終わりがきてしまうからだ。
今年のフジロックのラインナップは決して悪くなかった。
むしろ私としてはここ数年で一番良かったとさえ思う。The killers、FontainesDC、King krule、The Last Dinner Party、Noname、RAYE、Sampha、Beth Gibbons、Kim Gordon、Turnstileがいたのだ。これだけ集められるフェスもそうはない。ラインナップは、flowよりもフジロックの方が断然良かったと思う。それでもコロナを除けばここ10年で最も集客は少なかった。
おそらくラインナップの問題だけではないだろう。開催場所もふくめて、新しいあり方を考え直す時期に来ているのではないか?外野からいうのは簡単なことだが、これからも私はずっとフジロックに行きたいと思っているので、スマッシュには頑張ってほしいと思う。
flowに参加して私はそんなことを思った。
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flowが終わるとフィンランドの地元のご飯を食べたいと思っていて、Googleマップで高評価で、夜中まで営業している「Ravintola Kolme Kruunua」というお店に入った。鱸を焼いたものとミートボールを食べて、ワインを飲んだ。アキ・カウリスマキの映画に出てきそうな、昔ながらの雰囲気のあるお店で美味しくてとてもよかった。仕事のできる年配の女性の給仕と、おどおどしたおっさんがいて、アキの映画の役者みたいだった。
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帰り道にヘルシンキ大聖堂に寄ったが、夜中だったので誰もいなかった。
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