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タワーマンション


医師の世界には学会というものがある。

多くの医師が一年に複数回、日本各地で開かれる学会に参加して最新の研究結果の発表を行う。

自分が都内で研修をしており、キャパシティを凌駕した勤務に忙殺されていた頃の話。

漸く取れた代休を利用し神戸まで飛行機で向かい、学会へと足を運んだ。

初めてくる神戸市は、街並みに品があり煌びやかに映った。特に三宮付近は想像以上に栄えており、あちこちにマンションが立ち並んでいた。

その中でも一際目を引くマンションがあった。

ざっとみて30階以上はあり、威圧感がある。敷地内にクリニックなどの施設も併設されているみたいだ。かっこいい。

きっと中にはジムや談話室といった共有スペースも完備されているに違いない。

タワーマンションは庶民で地方出身の自分にとっては昔から憧れの存在だった。

いつか人生で一度は住んでみたい、と漠然と思っていた。

しかし、タワーマンションは当然デメリットもある。

まずなんといっても家賃が高い。圧倒的に。ブランド料が多分に含まれているのだろう。 

また、仮に住むとなると、当然高層階に住む方がそのメリットは享受できるのだが、外出までにエレベーターの待ち時間が長くかかるというのは気になる点だ。

更に、興味深いこもにカナダ医師会「CMAJ」によると、心停止で病院に搬送された場合、高層階に住む住人ほど生存率が下がるという報告もある。

素晴らしい眺望で人気のタワーマンションだが、良いことばかりではないようだ。カナダの研究グループは、マンションの高層階に住む人は低層階に住む人に比べ、心筋梗塞などで心臓が止まった後に生き延びる割合が低いとする研究結果を、1月18日発行のカナダ医師会誌「CMAJ」(電子版)に報告した。心停止で病院に運ばれ、生きて退院できた割合は、1~2階の4.2%に対して16階以上で0.9%、25階以上ではゼロだったという。

Medical Tribune

当然と言えば当然か。救急隊の到着時間まで確実に上層の方が時間はかかる。

他にもSNS上で高層階では流産が増える説に賛否両論がなされていたのも記憶に新しい。

ただ、リスクを恐れてはロマンの大成は困難だ。

そう思い直し、ホテルに着いたらバケットリストに「タワーマンションを購入する」を書き加えようと決めた。

ホテルに戻って、そのタワーマンションを調べると高級老人ホームだった。

流石神戸市、老人施設までオシャレなのか。

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