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ドクターヘリって結構怖い

「翼を持つER」、「攻めの救急」

某ドラマの影響ですっかりかっこいいイメージが定着しているドクターヘリ。

しかし、自分にとっては恐怖の象徴でもある。

昔から高所恐怖症なのである。

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そもそも、飛行機が怖い。
地に足がつかない感覚が恐怖以外の何ものでもない。

ただ座っているのだけでも怖いのに、飛行中に通路を歩くのはもっての外。

「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?」

などのアナウンスがないようにと体を強張らせながら祈っている。

フライトの中でも特に離陸と乱気流はまさに死を覚悟する瞬間だ。

離陸時の飛行機の浮遊感は、下手な絶叫マシンよりも恐ろしい。

離陸時にリラックスして小説を読んだり、睡眠に興じている人間。あの人たちは痩せ我慢をして周りに強い自分のアピールをしていると思っている。

『飛行機は世界一安全な乗り物で事故での死亡率は車の方が圧倒的に高い。』

そのような主張がある。

高所恐怖症の気持ちが何もわかっていない。

人生とは経験の総量であり、死ぬまでの感情の足し算で構成されている。

仮に車の事故で最後を迎える時、一瞬だろうし、自分でもある程度制御ができる。

飛行機が墜落する時はなすすべもない。高所が苦手な人間にとっては絶望の瞬間だ。最後にそんなのはまっぴらだ。

感情と確率の期待値で考えた時にマイナスの値が大きいのが飛行機なのだ。

そのような想像を常にしていると、飛行中は常に気が休まらないといった具合だ。

そもそもが散々安全性を強調してる時点でやっぱり怖い人は多いんだよ!

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世の中にはそんな飛行機の恐怖を軽々と上回る乗り物がある。

ヘリコプターである。

自分はフライトの件数が取り分け多いわけではないのだが、必要にかられればドクターヘリや防災ヘリに乗ることを余儀なくされることがある。

初フライトは地獄だった。

ヘリコプターは200km近い速度が出るので、大抵現場まではあっという間に到着する。しかしそのたった10分の飛行が永遠のように感じられた。

出動要請がかかり、支持されるがままヘリの後部座席に詰めこまれ固まる自分。

「鳥だ!」

そんな操縦士の声と共に突然機体が傾く。バードストライクを避けるためだ。体感ではヘリコプターが急に直角に傾いた気がした。(もちろん、そんなことはない)

なんとか10分間の恐怖のフライトを耐え凌ぎ、着陸する。
しかしそれも束の間。

「先生、逆です!逆!」

着陸した安堵からか、ヘリコプターから降りると、現場と全く反対方向に走り出していた。

多分世界のフライトドクター史上最も情けない。

その後も緊張で現場隊の報告などまるで耳に入らない。

そして何より、これから帰りのフライトもあると考えると気が重くなるばかりだった。

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世の中のフライトドクターには高所恐怖症はいないのだろうか。

自分もこれから、慣れていくのだろうか?
いやいや、飛行機も生まれてこの方散々乗ってきたが未だに怖いぞ。慣れることはないのではないか?

「コードブルー」は見たことないが、きっとヘリコプター内でも颯爽と処置をこなすシーンがあるのだろう。

山pまでの道のりは険しい。


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