
1.「やりたい.できた.ラボ」
すべての始まりは、2022年に開催された第56回日本作業療法学会の企画セミナー「デジタルファブリケーションで拓く新たな作業療法の可能性Ⅲ」への参加でした。これまでの作業療法士としての取り組みの中で、道具や環境の工夫をすることで、お子さんが「できた!」と感じられることや「楽しい」と感じられることを広げていけることを実感していたため、その可能性を広げられる手段になるのかもしれないと思い参加しました。

このセミナーを通じて、3Dプリンターを使うことでいつでもどこでもデータさえあれば色々な種類の道具が作れること、目的に合った素材を使用することで硬さや手触りなどを調整できること、私たちが考えていたよりも簡単に使用できることなどが分かり、その可能性の広がりに驚かされるとともに、同じく参加していた群馬パース大学作業療法学科の石代さんと「これを使って何か面白いことができるといいね」と話したことがきっかけでした。
その後、石代さんと一緒に、3Dプリンターをお子さんへの介入にどのように活用できるかを検証するため実際に3Dプリンターを購入。
書籍を参考に自分たちでインターネット上からダウンロードできる自助具や無料のソフトを使用した鉛筆用のグリップの試作品を作るなど、素材による違いや大きさ、密度、強度、成形の方向、など色々なパターンのデータを作成しながら試行錯誤を繰り返していました。
この取り組みをSNSに投稿したところ、それを見たSEDIE DESIGNのデザイナー・住本さんから声をかけていただきました。最初にお話をした際、「一緒に何かを始めよう!」という提案が自然と生まれたのです。

専門領域を超えたコラボレーションのはじまり
その時の話題は、地域で3Dプリンターを活用できる可能性について。
中でも、3Dプリンターを活用して、子ども達の可能性を広げることができないかということを話し合いました。
その中で話に挙がったことは、作業療法士だけでは自助具の完成度に限界があること、そしてデザイナーも医療や福祉の分野に強い関心を持っていることでした。
お互いの関心が重なったことで、互いに協力しながら何かを生み出そうという気持ちが固まりました。

これまで作業療法士として、デザイナーさんと話す機会はほとんどありませんでした。しかし、住本さんとの会話を通じて、デザインと作業療法には驚くほど多くの共通点があることに気付かされました。
(プロジェクトの内容を決めていく時の話し合いは作業療法目標を決めていく面接のようでした)
デザインと作業療法の共通点
一般的に「デザイン」というと、外見や見た目を指すことが多い印象でしたが、住本さんが話してくださったのは、目標志向的なアプローチについてでした。
デザインとは、課題を解決するための手法であり、その過程で目標を明確にしていくことが重要なのだと。
この考え方は、目標に向かってさまざまな方法を選択しながら支援を行う作業療法と非常に似ています。「なぜそれを行うのか?」「どんな未来を目指しているのか?」といった問いを軸に、私たちはプロジェクトのイメージを固めていきました。
今後の展望
デザインと作業療法が手を組むことで、自助具の可能性はさらに広がります。「やりたい.できた.ラボ」は、専門性の枠を超えた新しいアプローチで、誰もがやりたいことを実現できる未来を目指していきます。