考えることについて
大学時代、研究室の打ち上げコンパの二次会で、
一つ上の大好きな先輩に、何の脈絡もなく、
「お前なー、人間は、考えんといかんのぞー」
と言われたときの情景が今でも目に浮かぶ
普段は説教じみた話はしない、
寡黙で少し怖めで、実はお茶目な先輩だった。
みんな酔っぱらってて、少々無礼講状態になっていた。
当時の私は、「考える」ことを意識的に放棄していた。
考えると苦しくなるから。
私は何者で、生きる価値があるのかないのか、自分はどうしたいのか、
「人」とは何者で、世間の中での自分はどうふるまえばいいのか、
周りの人間は私をどう思っているのか、将来はどうなるのか。
必要なことも不必要なことも含めて、何かを考え始めると、落ち込んで苦しくなった。
だから、全面的に考えないことにしていた。楽しいことだけやってればいい。すごく楽だったけど、そのことにうしろめたさを感じていたんだろうと思う。
だから、何の脈絡もない不意の先輩の言葉が刺さったんだろうな。
「え、なんで知ってるの?」
と思ったけど、ホントにたまたまだったみたい(^^;
その日から少しずつ、「考える」ことを再開した。
当時は、「考え方」がよくわかってなかったんだろうな。
でもその「考え方」は、考えて考えて、自分なりに苦しんで苦しんで会得していくしかないのかもしれない。
今は、考えることがとても楽しい。
たまに直面したくないこともあるけど、今ではそれも時間をかけて向かい合う方法を知っている。考えることを再開できてよかった。
その先輩は大学卒業後、学校の先生になり、さらにその2年後、
事故で亡くなった。
あの時の先輩の声は、たぶん、ずっと聞こえ続ける。