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動機付けは、アメとムチ
皆さん、こんにちは! 共創したい監査チームの清水です。
前回(2023-06-19)は、事実と真実の違いを取り上げ、両者は似て非なる
ものであることをお伝えしましたが、その真実の背景にある要素のひとつが
「動機付け」であると考えます。
一般的に「動機付け」には、インセンティブの語が充てられ、嬉しいアメ(褒美)を浮かべますが、恐ろしいムチ(制裁)も概念的に含み、プレッ
シャーの語が当てはまります。
また、「動機付け」には、内発的動機と外発的動機があり、前者のアメは
やりがい・自己達成感、ムチは良心の呵責、後者のアメは金銭・名声、
ムチは損失・処罰が該当します。これらは、ひとりの人間を想定したもの
ですが、人の集合体である企業の営み、つまり、コーポレートガバナンス
のメカニズムにも当てはまります。
ここまで来ると、いわゆる不正のトライアングル(クレッシー)の3要素、
すなわち、機会・動機・正当化を思い出す方々も多いでしょう。これらの
要素のうち「動機」が、まさしく上記のアメとムチで、インセンティブと
プレッシャーを意味します。日本語の「動機」からは、プレッシャーを少々
想起しにくいかもしれません。
監査は、不正を見つけるためだけのものではないことは以前にもお伝えしま
した。しかし、3要素のうち、好ましくない「機会」や、行き過ぎた「動機
(付け)」が存在する場合には、監査対象の業務プロセスに携わる人たち
が「正当化」の理由を探し始める前に、私たちは対話の機会を得て、共創・
協働の観点で、可能な限り「真実」を明らかにし、改善の機会を探索したい
と考えています。
〔参照〕
ロナルド・ドーア『誰のための会社にするか』(岩波新書、2006)
宍戸善一『動機付けの仕組としての企業』(有斐閣、2006)