二人だけのひみつの呼び名がある関係で。
◯◯ちゃんがお互いの主流な呼び方だが、ほかにもさまざまな呼び方を持つ私たち。
その中でも、誰にも明かしていない「秘密の呼び方」がある。
付き合いたてほやほやの頃からの、ラブラブで甘々な呼び方だ。
恥ずかしいので、一生誰にも明かさないままだろう。
__いや、嘘だ。
いちどだけ、私は友達にその呼び名のLINEを見られてしまった。
本当にたまたま、別件についてLINEの表示画面を見せた際、携帯を返されて、そのあとぼそりと言われたのだ。
「あーあれだね、やっぱラブラブな夫婦の呼び方的なのがあるんやね」
え?なにが?
どゆこと?
呼び名が書かれたLINEを見られたことに気づいていなかったわたしは、さらに詳しい説明を求めて墓穴を掘った。
友達も、あえてそれ突っ込む?みたいな顔をしつつ、「いやこれだよ〜」と画面を指差した。
おわわわわ。
内心「やべーーー!恥」と焦った。
でもなぜかそこで「やだもう!恥ずかしい」的なセリフが浮かんでこなくて。
「ああこれね、うんまあ、うちらこんなもん」
そんな平然とした風を装って、返してしまった。
おわー逆に恥ずかしい。
友達もお察しだったのか、「ふうん」と返事をして、それ以上は突っ込んでこなかった。
死んだ。
夫よ、すまない。
あなたがラブラブな感じに仕立て上げたわたしの名前と、さらに後ろに赤いハート❤️までつけたLINEの文面。
その一字一句を、他人に読ませてしまいました。
10年経った今、ここに懺悔します。
でもあなたには何一つ明かさず、この事実は墓場まで持って行きます。
でもまあ、二人だけの呼び名があるというのは、夫婦仲をよくするのだと、本で読んだことがある。
それは、二人にしかわからない互いの呼び方。
誰にも知られない二人だけの秘密だからだ。
新婚当時は、このラブラブな呼び方が定着しすぎて、何度か実母の前で言いそうになって死にかけた。
口から出たのを誤魔化す事態も連発した。
こりゃあまずい。
子どもができて、この名前で呼び合ったら、絶対「どういう意味?」と突っ込まれるぞ。
さらには、他人に言いふらされたら?
___だめだ。
この地で生きていけなくなる。
そんなことを危惧していたのだが、これまた不思議なことに、子どもの前でこの呼び名を言ってしまうことは全くなかった。
特に、わたしは。
やはりそこは、「母モード」なんだと思う。
ふだん、夫の「女」であるよりも、子どもたちの「母」になってしまったわたし。
自分のことも、「かか」と呼ぶ。
夫とふたりになれた時だけ、その秘密の呼び名が出てくるのだ。
我ながら、切り替えの潔さに感心する。
でもこわいことがある。
それは、そのまま秘密の呼び名を忘れてしまうことだ。
もっというと、その呼び名で呼び合う「関係」を忘れてしまうことだ。
わたしはつい「母」であることに必死になりすぎて、時に夫を後回しにしてしまう。
でも年老いて、ずっといっしょにいるのは夫。
隣にいるのは息子ではなく、夫だ。
だから彼のことを大事に思い、彼との関係を末長く良いものにしたい。
ラブラブな呼び名は、あらためて考えると、ものすごく恥ずかしいけど。
たまに、たまーには、呼んでみようかな。
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今回も、珈琲次郎さんの企画へ参加。
毎週楽しみにしています。
珈琲次郎さんのお題でいいなぁと思うのは、すごくピンポイントなテーマであること。
「夫婦の仲良しの秘訣」とか「良い夫婦の在り方とは」という大きなテーマも十分書きごたえがあるけれど。
この企画では「夫婦喧嘩」「スキンシップ」「呼び名」など、かなり狭いところに絞ってお題を設定しておられる。
だから、各々のエピソードがしっかり出てきて、書くのも楽しいし、他の方と比べて読むのもおもしろい。
あくまでわたし個人の感想ですが。
改めて、珈琲次郎さん。いつも素晴らしいお題、そして丁寧なレビューをありがとうございます。