トイレで熱中症になる女より
私は毎年、自宅のトイレで意識を失っている。
熱中症だ。
もちろんなりたくてなっているわけではない。
トイレなる空間があまりにも頑丈で、おじいちゃん曰く「地震が起きたらここへ逃げ込め」と言い聞かせるほど閉鎖的であるところに原因がある。
そのくせ1日のうちに何度も行かざるを得ぬ場所であり、かつ一度便座に腰かけてしまえばもはや私の逃げ場などどこにもなかった。
毎年恒例の流れはこう。
暑い日にトイレに入る。
ドアをぱたんと閉める。
ぬるい便座に腰かける。
個室に常備してあるうちわで己をあおぎながら時を過ごす。
気づくと視界がまっくらになっている。
まさか毎回、ドアの外にポカリを置いておくわけにもいかないし、なんかそのポカリにはほんのりケガレの精神みを感じてちょっと嫌だ。
空気の流れを調節するためか水場の問題かわからないけど、トイレって本当にありえんレベルの暑さになるし……。
全身が冷える異様な寒さと遠のいていく意識。
唯一の理性は『己を冷やし水分とミネラルを補給する』ことではなく、尊厳を守るために身を清め服を着る方向に舵を切る。
あとから考えると明らかにおかしい。
でも、当時の自分はこう考えているのである。
「もしも救急車を呼んだとして――――下半身丸出しは嫌だ」
幸いにも、熱中症で救急車のお世話になったことはない。
ありがたい。熱中症からも、なんとか紙一重で生き延びている。
コツは、
保冷剤で太い血管を冷やし、
ポカリかソルティライチを飲み、
梅干しを口に突っ込み、
冷房をガンガンに効かせた部屋で溶けかけたゴム人形のように横たわり続ける。
これに限る。
ただこれは人と同居しており、いざとなれば救急にかけてくれる人物がいる場合のおすすめ対処法だから、いない場合は黙って救急車を呼ぼう。
とはいえ呼ぶのは気が引ける……。
非常によくわかる。
私だって正直、通報なんざしたかぁねぇや。
あたりめーだ。
サイレンだって怖いし、ほかにも困っている人がいるんだし、もっと重篤な症状の人が私なんぞのドアホな「はい……トイレで熱中症になっちゃって……」とかいう通報のために見逃されることとなってしまったらどうしたってお詫びのしようがねえ。
というわけで……
多用させていただいているのが#7119でした。
クリックすると公式サイトに飛ぶんですけど、こちら、救急を呼ぶべきかどうかを判断してくれる短縮ダイヤルなので困ったらぜひこちらのご利用をおすすめします。
なんかねー……別件も含めて5回くらい使ったんですけど、受付の方も非常に冷静で優しくて、伝えた症状をそのまま救急隊の方に引き継いで搬送手続きを済ませてくださるので、むしろ話が早く済んだような気がしました。
まあ、皆様ご存じの……と言った話ではございましたが、今後の季節さらに暑くなって参ります。
熱中症には皆さまお気をつけてお過ごしください。
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