臨床推論 Case73
QJM. 2023 Sep 12;116(8):716-717.
PMID:37162495
【症例】
87歳 女性
【主訴】
発熱 体重減少
【現病歴/現症】
⚫︎ 2ヶ月続く発熱と体重減少の精査のため来院された
⚫︎ 造影CTを施行したところ頸部、胸部、腹部にリンパ節を認めた
⚫︎ リンパ節は境界明瞭で辺縁優位に造影されていた
⚫︎ 生検でCD20(+) MUM1(+) CD30(+) CD3(-) CD10(-) EBER(+)の大型のリンパ球を認めた
What’s your diagnosis ?
【診断】
EBV陽性びまん性大細胞型リンパ腫(非特定型)
【考察】
⚫︎ 以下はAm J Hematol. 2018 Jul;93(7):953-962.から引用
⚫︎ EBVは発癌性のあるウイルスで鼻咽頭癌やバーキットリンパ腫など多くの悪性腫瘍と関連している
⚫︎ EBVは免疫抑制と慢性抗原活性に関連し、腫瘍が形成される
⚫︎ EBV陽性DLBCL,NOSはEBVの潜在感染パターンⅢ型を呈し、このタイプは全てのEBV関連タンパク質を発現している
⚫︎ またⅢ型は免疫不全状態に関連しており、他のリンパ腫は移植後およびHIV関連リンパ腫である
⚫︎ 免疫の老化はT細胞応答の調節障害、胸腺の萎縮、新しいT細胞産生低下、アネルギー性のメモリー細胞の発生、免疫監視システムの機能低下、サイトカイン賛成低下、T細胞受容体のレパートリーの低下、などを起こす
⚫︎ これらによってEBVの慢性感染が加速するのかもしれない
⚫︎ それによってEBV陽性リンパ腫が生まれるのかもしれない
⚫︎ EBV positive DLBCL, NOSは2016年のWHO分類に採択された
⚫︎ EBV陽性DLBCLは陰性と比較して、高齢・LDH高値・節外病変を有する、のが特徴で予後が悪い
⚫︎ CD30が陽性になりやすく、陽性ならば予後が悪くなるとされている
⚫︎ 他との鑑別
⚫︎ リンパ節の造影のされ方で結核とリンパ腫はある程度鑑別できる
⚫︎ 菊池病は周囲に炎症が波及するperinodal infiltrationが特徴である(PLoS One. 2017 Jul 24;12(7):e0181169.)
⚫︎ キャッスルマン病はよく造影され、血管が入り込んでいく( Cancer Imaging (2018) 18:28 )
⚫︎ 結核 vs リンパ腫において前者は78%でリングエンハンスパターン、後者は83%で均一な増強パターンを呈した(Clinical Radiology 67 (2012) 877e883 )
・パターンの比較
⚫︎ 今回は一見結核のように見えるが、結果はEBV陽性DLBCLであった
⚫︎ EBV陽性DLBCL vs DLBCL陰性DLBCLにおいて内部壊死は66.7% vss 15.4%であった報告あり
⚫︎ これはEBV陽性DLBCLは病理で地図状壊死を呈しやすいため、それを反映しているのかもしれない